第623話 57日目 大豆と小豆と小麦。1
「あ゛ぁっ」
武雄は背中への強烈な刺激で目覚める。
今日の朝は武雄にしては珍しく仰向けではなくアリスを背にして寝ていたようで武雄の背中に膝蹴りがかまされていた。
当のアリスはそのまま武雄の背にピタッとくっ付きスヤスヤ寝ている。
武雄は「アリスお嬢様に背を向けるのは危険なんだね」とケアをかけながら思うのだった。
・・・
・・
・
アリスが身じろぎを始め。
「・・・おはよう・・ございます。」
と挨拶をしてくる。
「はい。アリスお嬢様、おはようございます。」
武雄は体の向きをアリスの方に向けて挨拶をしてくる。
「・・・ん・・・眠いです。」
とアリスが再び夢の中に行ってしまう。
武雄は「じゃあ、しょうがないですね。」とアリスの太ももを太腿でながらボーっとする。
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朝の散策(石撒き)時にアーキン達に会えたので昨日作った図面は渡す事が出来た。
そして今は朝食も終え、客間で皆でティータイム。
「さてと、今日は特に何もなかったかの?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「僕はハロルドの所に行ってきます。
午後はタケオ様とお姉様との王都への旅支度です。」
スミスが答える。
「うむ。
旅支度はまだ早いのではないかの?
それよりも・・・タケオに王都の寄宿舎の間取りを教えて貰って家具を見て来たらどうかの?」
「お爺さま、それも早いのではないですか?」
エルヴィス爺さんの言葉にアリスが呆れる。
「いや・・・しかしの。スミスが気に入った家具が無かったら作らないといけないじゃろ?」
「僕はあまり家具にこだわりはないのですけど・・・」
スミスが苦笑する。
「スミス坊ちゃん、どんな家具にするつもりですか?」
「んー・・・わからないです。
あぁだから一回見てどんな物があるのか確認しないといけないのですね。
わかりました。午後は家具屋を見てきます。」
「うむ。
タケオ、あとで寄宿舎の間取りをスミスに教えてくれるかの?」
「わかりました。
昼までに書いておきます。」
「うむ。
で、タケオは今日はどうするのじゃ?」
「大豆と小豆の料理をしようかと。」
「なぬ!?とうとう始まるのじゃの!」
エルヴィス爺さんが席を立って喜ぶ。
「えーっと・・・何がどう『とうとう始まる』のかは疑問ですが・・・
とりあえず作ってみようかと。」
武雄が苦笑しながら言う。
「タケオ様、ジョージ達料理人が厨房で準備を済ませています。」
「行動が早いですね。
とりあえず、いくつか作りますが・・・
アリスお嬢様、お菓子が出来るのがたぶん夕方になりますからミア達のソファを買ってきて貰えますか?」
「はい。じゃあスミスと家具屋に行ってソファを買ってきます。
タケオ様、他に買うのもはありますかね?」
「んー・・・ソファで皆で寝る為でしょうから・・・
毛布とクッションと・・・あ、一応テーブルも買ってあげた方が良いでしょう。」
「なるほど。
あ、じゃあミアちゃん達も連れて行って買ってきます。」
「はい、お願いします。
エルヴィスさん、とりあえず私は今日は屋敷内に居る予定です。」
「うむ、期待しておるぞ!
皆、気を付けるのじゃぞ?」
「「「はい。」」」
各々が返事をするのだった。
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タケオは客間を後にして厨房にやってきた。
「皆さん、お邪魔します。」
「お、タケオ、来たな。」
タケオがそう言って入ると料理長と各担当が近寄ってくる。
「とりあえず、用意できる器材は用意したぞ。
で、どんな料理を作るんだ?」
「はい、ではとりあえずこの小豆を使ってお菓子を作っていきましょうか。
どのくらい届きましたか?」
「とりあえず1㎏置いて貰ったが・・・足りるか?」
「まずは小豆を200g使って試作しましょうか。
作りたいのは『つぶ餡』と言います。
実はですね、このお菓子の製造方法私は1回しかちゃんと見たことがないのです。」
と武雄はこれまで書き込んで来たノートを見ながら言う。
武雄自身も相当イメージトレーニングをして矛盾点を消してきていた。
「ふむ・・・タケオでも1回のみの料理か。
で、大まかにはどうやるのだ?」
「では『つぶ餡』の調理方法を思い出しながら言っていきますね。
準備としては200gの小豆と砂糖を200g用意します。
鍋に1.5L程度でお湯を沸かします。
そこに小豆を入れ強火で30分・・・長い針が半分回った所ですね。」
武雄が懐中時計を出して言う。
「ここで1回小豆をざるに上げます。
そして新たに水を1L入れて茹でた小豆を入れて強火で沸騰させます。
沸騰したら10分茹でた後に弱火にして1時間茹でます。」
「1時間??」
「これは時間がかかるのですよ。
1時間経ったら小豆を見て割れていたか潰したか・・・とりあえずグズグズになっているのを確認します。
全ての小豆がグズグズになったのを確認したら、えーっと・・・水を少しずつ加え熱を取ります。
そして冷えて来たらざるに上げて水を切ります。」
「水が大まかに切れたら小豆を鍋に入れ砂糖をまぶしながら全体に行きわたるように入れます。」
「タケオ、この時火はかけておくのか?」
料理長が聞いてくる。
「確か・・・途中から火にかけていたかと。火加減は中火ですね。
そして水気がなくなるまで煮込み、水気がなくなったら豆を潰しながら混ぜるという物なのです。」
「ふむ・・・要約すると小豆の砂糖煮なのだな。」
「はい。
ですが、小豆は殻が固いのです。
なので長時間煮こむ事によって殻をふやかし美味しく食べようという物になります。
作った後は鉄のトレイにでも一旦乗せてパンケーキにでも挟めば美味しいですよ。」
「ふむ・・・とりあえず今のをもう一度皆で確認してから作ってみるか。」
「「はい。」」
皆が頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
 




