第613話 雑貨屋に行こう!
整備局での間取り図の打ち合わせを終え、フレデリックと料理長は屋敷に戻って行った。
武雄はリバーシの材料を買いに雑貨屋を目指していた。
ちなみに別れ際に料理長が「送られてきた豆を使って早く料理を作ってくれ」と要望があったので武雄は「明日にでもしましょうか」と気軽に答えていた。
「さてと・・・どこの雑貨屋さんにありますかね。」
武雄は2軒しか知らないがどちらかには木材と塗料があるだろうと思って向かっている。
と。
「あれ?武雄さん?」
見知った顔に呼び止められる。
「ん?鈴音ですか。テイラー店長も。」
「こんにちは。
キタミザト様はどちらに?」
「木材の販売と加工をお願い出来る所を探しています。」
「あ、武雄さん、リバーシですか?
私はテイラーさんにお願いして黒板を作ってくれそうな材木店に連れて行って貰おうかと思っているのです。」
「なるほど。
テイラー店長、私も同行して良いでしょうか?」
「構いません。
では表通りの1本奥の通りに行ってみますか。
あ、それとお連れする店はちょっと癖が強くてですね、心を広く持って貰えるとありがたいですね。」
「大丈夫ですよ。私も鈴音も感受性は豊かだと思っていますから♪」
「ん?武雄さん、それだとすぐに怒ると言っているのではないですか?」
「いえいえ、言葉を間違えましたね。
許容量は浅く広いはずです!」
「キタミザト様、そんなに楽しそうに言わないでください。」
武雄と鈴音はテイラーに先導と説明をされながらお勧めの店を目指すのだった。
------------------------
「失礼します。」
テイラーが少し緊張気味に店内に入って行く。
「ん?あぁ、テイラー坊か。どうした?」
店の中で金勘定をしている女性が顔を上げ言ってくる。
「モニカさん、私は28ですよ。
『坊』と付けないでください。」
「ふふ。
店を始めて3年ならまだまだ子供だよ。
もう少し出世したら考えても良いかもね。」
女性が楽しそうにテイラーに言う。
「はぁ・・・モニカさん。
少し特殊な依頼をしたくて2人を連れてきたのですが、実はこの方はキタ」
「ほぉ、男性と若い女性か。
ふむ・・・テイラー坊がとうとう結婚を決意したのか?
挙式の出席をお願いするのにわざわざ相手の父親を連れてくることもないと思うが・・・」
モニカがテイラーそっちのけで武雄と鈴音を観察しながら言ってくる。
「・・・ん~・・・テイラーさんの説明の通りですね。
武雄さん、この場合は誰に対して失礼なのですか?」
「3人に対してですよ。
ですが、最大の標的はテイラー店長ですね。
まぁあの女性もわかっていてしているのでしょうが、面白いので放置しましょう。
鈴音もこの程度で怒っていてはやっていられませんよ。」
「はぁ、別に私は怒っていません。
武雄さんが怒るかなと思っただけです。」
「私個人に対してなら別に怒りませんよ。
対外的には鈴音の保護者はブラッドリーさんで、私は職場の上司ですかね?
どちらも監督責任はあるのでしょうか?」
「親方も武雄さんも面倒を見て貰っているのは事実なので確かにどちらも親に近いですよね。」
「なのであの女性の言い方もあながち間違っていないような気もするんですよね。」
「まぁそうですね。
結婚式かぁ。そう言えば武雄さんとアリスさんの挙式はどうするんです?」
「・・・今後の課題ですね。」
「早く決めないとダメですよ?」
「ですね。」
武雄と鈴音はコッソリと話している。
「だー!
モニカさん!私の事はどうでも良いですが、2人に対して失礼ですよ!」
テイラーが若干キレ気味で言ってくる。
「うむ、少しからかい過ぎたか。
失礼した。私はモニカ・ハワースと言います。
このハワース商会の頭取です。」
モニカが恭しく頭を下げる。
「キタミザトです。」
「タキノです。」
武雄と鈴音が礼をする。
「・・・キタミザト・・・様?」
モニカが一気に顔色を悪くさせながらテイラーに顔を向ける。
「本物ですよ。」
テイラーがため息をつく。
「申し訳ございませんでした!!」
モニカが床に頭を付けるぐらいの勢いで謝るのだった。
・・
・
店内の応接室に武雄達は通されていた。
「本当に!申し訳ありませんでした!」
モニカがさっきから平謝り状態です。
「いえ、それは良いのですよ。」
「本当にすみませんでした。」
「はぁ・・・テイラーさん、本題に入った方が良いのではないですか?」
鈴音がテイラーに救いを求める。
「そうですね。
モニカさん、キタミザト様とスズネさんが木材の加工をお願いしたいそうなのです。」
「木材の加工ですか?」
モニカが不思議そうに言ってくる。
「ええ。テイラー店長からこの店は木材を扱わせたら一級品と伺っています。」
「テイラーがそう言ったのでしょうか?」
武雄は道すがらテイラーにどんな店に行くのか聞いていた。
「ええ。『腕も材料も一級品、ただ販売に難あり』と。」
「テ・・・テイラー・・・」
モニカがゆっくりと顔をテイラーに向ける。
「いや・・・さっき店先で証明したでしょう?」
「うぅ・・・」
モニカがガックリとうな垂れる。
「別に良いじゃありませんか。
あのぐらいの雑談も出来ないような人物が上に居たら大変ですよ。」
「キタミザト様、普通は初対面の人に対して言わないですよ。」
武雄の言葉にテイラーが答える。
「そこはモニカ頭取とテイラー店長の信頼の賜物でしょう。
親しい間柄でなければそんなやりとりも出来ないでしょうからね。」
「まさかテイラーがキタミザト様を連れてくるとは思いもしませんでした。」
「ふふ。
人脈とは恐ろしい物ですよね。どこがどう繋がっているかわからないんですから。
まぁ今回は私と鈴音で良かったではないですか。
これが他の貴族や豪商だったらいろいろ面倒だったでしょう。
今後しなければ良いのですよ。」
武雄が楽しそうに言う。
「本当にすみませんでした。
今後は初回では言葉を選んで会話をします。
と、ご用をお伺いします。」
モニカが真面目な顔つきになるのだった。
「では始めますか。
いくつか試作して欲しい物があるので今回来ました。」
武雄が説明を始めるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




