第602話 1本道を作ってみよう3。(重機を使えば直ぐに完了。)
「到着。」
アーキン達が裏城門に戻ってきた。
「「はぁ・・・・」」
アニータとミルコがへたり込む。
「ははは、まぁ初日はこんなもんでしょう。
歩いた感じ5kmくらいかなぁ。」
ブルックが笑いながら言う。
「疲れたぁ・・・」
ミルコがそう呟く。
アーキンとブルックが朗らかに子供達を見ていると。
ピーピーと武雄達が向かった道とは違う所で森に向かって立っているアリスの肩に乗るミアがホイッスルを鳴らしているのが聞こえてくる。
「ん?アリス殿とミア殿?・・・何を・・・はぁ!?」
ブルックが考えようとした時に森の奥から片側に木を撒き散らしながら何かが森を進んでくる。
と、見覚えのあるブラックドラゴンが森の中から歩いてやってくる。
「え?クゥ殿?
というか・・・木が吹き飛んでいるようにしか見えないんだけど・・・」
ブルックが呟く。
クゥ(ブラックドラゴン)が森を出てきた所でミアがクゥ(ブラックドラゴン)が歩いてきた道を逆走するようにホイッスルを鳴らしながら森の奥に飛んで行ってしまう。
それを追いかけるようにクゥ(ブラックドラゴン)がさらに自分の作った道の側面の木々を外側に吹き飛ばしながら森の奥に進んでいくのだった。
そしてアリスもクゥ(ブラックドラゴン)を追いかけるように森に入って行ってしまう。
「な・・・なんだったの?」
ブルックが呆気に取られながら呟く。
「平気だ・・・俺もかなり驚いている・・・」
「お姉ちゃん・・・あれキタミザト様が仕組んでいるんだよね?」
「・・・だろうね。
普通に考えてドラゴンが他者の言う事を聞くのかなぁ?初めて見たわ。
どんな魔法を使っているんだろう?」
アニータが首を傾げながら考える。
「はぁ・・・とりあえず俺達も森の奥に行ってみるか。」
「あのクゥ殿が作った道を使うの?」
ブルックが「そんな命知らずは出来ないよ?」とアーキンに聞く。
「こっちの細道をたぶん行けば行けるだろう。」
アーキンが武雄が最初に向かった細道を指さす。
「私達も下見ね。」
アーキン達が立って今度は整列しないでのんびりと森に向かうのだった。
・・
・
「おや?アーキンさん達が来ましたね。」
森の奥では武雄が一人で石を撒いていた。
「・・・なんですか・・・この広さは・・・」
ブルックが武雄の回りを見ながら呟く。
「その森の出口から入口まで約500m、さらに奥行10m、幅50mの広場を作り、端に合わせて幅20mの射撃場を作ってみました。」
よく見るとクゥやアリスがおらず、広場のさらに奥を開拓しているようでポンポンと木が舞っている。
「・・・一大施設ですか?」
「まぁ、小銃の練習場も兼務させています。」
「そうですか・・・」
アーキンが呟きながら「着々と準備が進んでいるんだ」と思っているとアリスとミア、クゥが戻ってくる。
「ク・・・クゥ殿とわかっていても身構えてしまいます・・・」
アーキンとブルックが身構える。
「タケオ様、戻りました。
指示された分の奥行きは粗方、木を薙ぎ倒しましたよ。」
「おかえりなさい。
クゥ、ミア、お疲れ様でした。」
「はい、主。」
「グルルゥ。グル?」
「主、クゥが今日は終わりか聞いていますけど。」
「ん~・・・」
武雄が悩みながらアーキンとブルックを見る。
「「!?」」
武雄と目が合った2人に衝撃のような閃きが迸る。
「ブルックさ」
「絶対に嫌です!」
「いや・・・まだ言い終わっていませんけど?」
「キタミザト殿は私達とクゥ殿で模擬戦をさせる気でしょう!?
2人でなんて相手になりません!
絶対に嫌です!」
ブルックが心底嫌がる。
「・・・クゥ、終わりです。」
武雄が残念そうに呟く。
「グルルゥ。」
と鳴くとクゥが光り始めシルエットが小さくなり物の数秒で元のずんぐりした体型に戻る。
「きゅ!」
クゥが右手を上げて健在をアピールする。
「はぁ、この姿なら安心です。」
ブルックが胸を撫で下ろす。
と、兵士長が細道からやって来るのを武雄が発見する。
「やはりキタミザト様でしたか。」
「兵士長、どうされましたか?」
「いえ・・・
ドラゴンが暴れていると門の兵士から報告が来たので様子を見に。」
「すみませんでした!」
武雄は事前に門の兵士にクゥを成獣にするのを言い忘れていた。
「まぁ・・・軍務局にはキタミザト様がドラゴンのクゥ様をお連れしていて、ちゃんと意思疏通が出来るとは総監部から通達はきていますし、キタミザト様が所管される第二研究所の試験小隊は街北側の裏城門前で訓練をするとも聞いてはいますけど、それにしても出来れば当日でも良いので簡単な計画案ぐらいはあった方が兵士達の」
兵士長の説教が始まるのだった。
・・
・
武雄はいつのまにか正座をしている。
もう説教が始まってから15分が経っていた。
「ですから、毎回のしっかりとした事前の計画案が貴族と言えど必要だと思います。」
「はい。
その通りだと思います。
次回から出来るだけ事前に計画案を作成するように最善を尽くさせて頂きます。」
「はぁ・・・まぁこの件は以上です。
で、この広場を作ってどうされるのですか?」
兵士長がため息交じりに聞いてくる。
「研究所の試験小隊の訓練場にしようかと。」
「なるほど・・・
確かに森に囲まれていれば民衆からの目からは逃れられますね。
ただ・・・できれば四方と言うか全周に岩か石の2mくらいの壁は必要かと思います。」
「はい、わかりました。
少し考えてみます。」
武雄は大人しく頷く。
「では私は戻ります。
それと第1小隊のノースが近日中に報告書を提出に伺うと言っておりました。
何を頼んだのでしょうか?」
「王都に向かう際に巡回訓練でお会いしたのですが、各町の酒場にある品書きを書き写して欲しいと依頼しておきました。」
「・・・品書き?・・・あぁ、だから新人達の報告書にその辺の経緯が書いてあったのですか。」
「新人さん達はなんと?」
「要約すると『各町の些細な違いが分かるように精進する』という感じですね。
報告書を読むと結構、ノース達教官がその違いについて熱く語ったそうです。」
「その辺の講義は聞いてみたいですね。」
「はは、それは止めてあげてください。
上司達が居る前ではやり辛いでしょうから。」
「そうですね。
と、引き留めてすみませんでした。」
「いえいえ。では私はこれにて。」
兵士長が去って行くのだった。
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