第601話 1本道を作ってみよう2。とアニータとミルコの教育開始。
朝食後、タケオとアリス、チビッ子達は旅の時の格好をしてお茶の用意もバスケットに入れ準備万端で裏城門に来たのだが・・・
「あ、キタミザト様だ。」
ミルコに見つかる。
「皆さん、おはようございます。」
武雄が挨拶をする。
「「「「おはようございます」」」」
アーキン達が挨拶を返してくる。
アリス達も各々で挨拶をしている。
「で、アーキンさん達はどうしたのですか?」
「はい。
部屋確認はあまり時間がかからなさそうなのを昨日確認しました。
ですので、午前中はアニータとミルコに簡単な兵士の訓練をしようかと。
それに初歩の魔法を使えるようにしないと・・・昨日から2人ともウズウズしていますので。」
ブルックが言ってくる。
「なるほど。」
「キタミザト殿はどうしてこちらに?」
「作業服の試験場所を作る為ですよ。」
と武雄が朝作っていた道を指差す。
「・・・結構出来ていますね。」
アーキンが目を細めて見ている。
「朝に少し作ったのでこれから本格的にやろうかと。」
「・・・お一人で?」
「私とスーですね。
あ、アーキンさん達の邪魔はたぶんしないのでお構いなく。」
「・・・たぶん・・・なのですか?」
「はい、たぶんです。」
ブルックが恐る恐る聞き返してくるが武雄は普通に返す。
「では私達は森の方に行きますか。」
武雄達がアーキン達を残して森の方に行く。
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「とりあえず、こっちはこっちで始めましょうか。」
ブルックが気を取り直して3人に言う。
「「はい。」」
アニータとミルコが返事をする。
「まずは歩く練習ですね。」
「「歩く?」」
「そうだな。
行軍が基本だな。」
「僕たち普通に歩けますけど?」
ミルコが不思議そうに言ってくる。
「そうね、1人で自由に歩くのはそれで良いのだけど。
軍においては皆で歩く速度を合わせるのが普通なのよ。」
「「へぇ~」」
2人が感心する。
「大体1kmをこの砂時計が終わる時(15分)で歩くように訓練されているわ。」
「どうして歩く速度を合わせるのですか?」
アニータが聞いてくる。
「皆が同じ速度で移動すれば全体の動きが読めてくるからね。
例えば・・・国境まで40kmあったとして8小隊、160人が3日後の昼に集合と言われた場合に到着時間を逆に考えて、出発する日時、持って行く食料を考えるのよ。
そうすることによって過分な物を用意しないで良いという物ね。
それとこれは追々するけど駆足というのもあるのよ。
これはこの砂時計が2回終わる時(30分)で4kmを走る事を言うの。」
「4km?・・・割と楽そうですね。」
「そうでもないわよ。
フル装備でやる事がほとんどなの。」
「・・・フル装備?」
「王都守備隊だとフルプレートを着込んでさらに両手剣を持ってするわよ。」
「うわぁ・・・」
ミルコが嫌な顔をさせる。
「まぁほら、俺達はフルプレートは着ないようだからね。
でも普通に片手剣を腰に差した状態で出来るようにはするかね?」
アーキンが優しく言う(内容は優しくないが)。
「じゃあ今日から毎日朝の日課で行軍の訓練をするからね。」
「「毎日ですか!?」」
「うん、これは体に覚えさせないといけないからね。
基本的に行軍訓練の時は魔法による補助は禁止。
終わったらして良いわ。
じゃあ始めましょうか。
アーキンが先頭でアニータ、ミルコ、私で並んでいきましょう。
まぁ軽い散歩よ。」
ブルックが笑みを浮かべるのだった。
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武雄達は朝の射撃位置よりも50mくらい森に近づいた所に来ていた。
「さて、始めますか。
朝の段階で・・・ん、20mは行きましたか。
じゃあ今日は途中で休憩を挟みますが出来るだけ進めましょう。」
「チュン!」
スーがやる気になる。
「ちなみにですけど。
タケオ様、さっきここに来る道すがら聞きましたが、倒した木の根元をスーちゃんが焼いていたのですよね。」
「そうですね。」
「ちゃんと消火はしたのですか?」
「・・・」
「タケオ様?」
アリスが目を細めながら聞いてくる。
「消火をしたというか・・・スー、あれは消えましたよね?」
「チュン。」
スーが武雄の問いかけに頷く。
「アリス様、スーも消えたと言っていますよ。」
「タケオ様、何をしたのですか?」
「えーっと・・・スーに頼んで木の根元まで炭にして、あ、根は残してありますからね。
で、上の部分はグズグズになっていたので蹴って折って、高さが根元から大体20㎝くらいになった所でフロストウォールで凍らせました。」
「根元をですか?」
「・・・根本と炭になった物を全部凍らせておきました・・・
いや・・・正確には氷を敷き詰めて、その上にストーンで拳大の岩を撒いて簡易的な歩道を作りました。」
「とりあえず歩けるのですね?」
「ええ。それに幅は1m程度ですし。」
「・・・タケオ様、せめて2mにしましょう。
歩き辛いです。」
「・・・じゃあ2mにしましょうか。」
武雄は少し考えて結論を出す。
「えーっと・・・スー、朝の要領で行きますよ。」
「チュン!」
「じゃあやりますか。」
武雄がその場に伏せ撃ちの体勢をとり、小銃改1を構える。
引き金をひくと「ドンっ」と音と共に「ドガッ」と森の端の木に命中し炎が出る。
武雄は約5秒間隔で次々と打ち始めるのだった。
ミアとクゥがリュックの上に座りながらボーっと作業を見ているのだった。
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アニータとミルコが心の中で後悔をしていた。
行軍訓練・・・結構厳しい物だった。
「お、城壁の端に来たか。
じゃあ、さっきの位置に戻ろうか。」
そんな2人を他所にアーキンがそう呟く。
「アーキン、とりあえず休憩しない?
初日から連続は辛いと思うわよ?」
ブルックが苦笑しながらアーキンに言う。
ちなみにアーキンもブルックも全く疲れておらず疲れているのはアニータとミルコの2人だった。
自分のペースでない方法で歩くと意外と疲れるというのを2人は痛感していた。
「ふむ・・・まぁ、そうだな。
じゃあ少し休むか。」
とアーキン達はその場に座る。アニータとミルコは座るというよりへたり込む。
「流石に地方都市だな。
確か資料は5km四方の街だったな。」
「大きいわよね。
まぁ隣のゴドウィン伯爵の街の方が大きいのだろうけどね。
でも城壁がどこも崩れていないし、しっかりと管理が行き届いているわね。」
「そうだな。
流石はエルヴィス家なのだろうか?」
「どうだろう。皆真面目なんだろうね。
不正が横行していたらもっと隅っこが荒れるとは思うかなぁ?」
「まぁ、良い貴族の所にお世話になるのは確かか。
アニータ、ミルコ、もういけそうか?」
「「もう少し~・・・」」
アニータとミルコが弱々しく返事をしてくる。
「じゃあもう少ししたら出発だな。」
アーキンとブルックがボーっとするのだった。
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