第600話 56日目 1本道を作ってみよう。1
武雄は朝の恒例行事であるアリスの目覚ましを体験し、ミアとスーと共に裏城門に来て森まで100mの所から森に向かって伏せ撃ちの格好で小銃改1を構えていた。
「スー助、この方角で良いのですか?」
「チュン!」
スーは北の裏城門の周辺を数周回り、武雄が望んでいる森に500mの1本道とその奥にクゥが広場を作れるぐらいの森を探してきていた。
そしてミアとスーは武雄が小銃改1を構えている横に置いてあるリュックの上にのんびりと座りながら森を見ている。
「ミア、スー、私よりも先に出てはダメですよ。」
「はい。」
「チュン。」
チビッ子2名が返事をする。
武雄が引き金をひくと「ドンっ」と音と共に「ドガッ」と森の端の木に命中し炎が出る。
武雄は約5秒間隔で次々と撃ち始める。
・・
・
スコープのおかげで命中精度が高い為、試射の時は15発で木が倒れかかっていたが今は5発程度で傾き、8発目には折れていた。
武雄は器用に折れる方向を左右に振り分けて、森の1本道の見晴らしが良くなっていっているが・・・
伏せ撃ち状態で同じ場所から撃っている為、一番手前にあった木は根元に当てていたが、奥に行くにつれ徐々に位置が高くなってきていた。
「・・・」
不意に武雄が体を起こす。
「んー・・・」
武雄が悩む。
「主、どうしましたか?」
ミアが聞いてくる。
「倒れた木が邪魔なんですよね。
小銃改1で倒していけば早くいくだろうとは思ったのですが・・・
木の根元がどんどん高くなってくるのでこれの処理をどうしますかね。」
「チュン!」
武雄の呟きにスーが胸を張って鳴いてくる。
「どうしましたか?スー。」
「チチチッ。」
「ん?スー助、あの切り株(?)をどうにかできるのですか?」
「チュン!」
スーは鳴くと武雄が折った一番手前の切り株に飛んでいき止まる。
と、切り株が一気に炎に包まれて炭に変化してしまう。
「チュン!」
スーが武雄の下に戻って来て胸を張る。
「す・・・凄いですね。
流石スーですね。朱雀はやはり神獣で一番有名なだけのことはありますね!」
「チュン♪」
武雄が褒めるとスーが嬉しそうに鳴く。
と武雄がその場を立つ。
「じゃあスー、すみませんが今倒した木を燃やしに行きますか。
で屋敷に戻って朝食を取りましょう。」
「チュン♪」
「わかりました、主。」
武雄とミアとスーが森に向かうのだった。
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「ただいま戻りました。」
武雄とミアが玄関を入って来るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、タケオ様、ミア様、スー様。」
「フレデリックさん、お疲れ様です、戻りました。」
「ただいまですー。」
「チュン。」
「朝食の準備が出来ます。
丁度、今から主達を呼びに行くところでした。」
「そうでしたか。
では先に私達は食堂に移動します。」
「はい、畏まりました。」
武雄達はフレデリックと別れて食堂を目指すのだった。
・・
・
朝食を終え、客間で皆でティータイム。
「さて、今日は皆、何をするのじゃ?」
「僕は勉強ですね。」
エルヴィス爺さんの質問にスミスが答える。
「うむ。
タケオはどうするのじゃ?」
「朝の時点で作業服の試験場所を作れそうな森があったので作業を始めようかと。
それとクゥを森の中で成獣状態にしようかと思います。」
「・・・タケオ、街に被害を出さないでくれるかの?」
エルヴィス爺さんが目を逸らしながら呟く。
「だからこそ森の中でと言ったのですけど・・・
まぁ森に入って500mですから平気だと思います。」
「うむ、気を付けてくるのじゃぞ?」
「はい。
と、フレデリックさん、午後は研究所の間取りの確認をしに庁舎に行きたいのですが、平気でしょうか?」
「昨日、タケオ様が各局に出向かれていますからタケオ様が戻って来ている事は皆承知しています。
一応、事前にいつ来ても良いように整備局には言っておりますので問題はないかと思います。
まぁ建方の親方が来るかどうかは別としても現状での部屋割りは確認できると思います。」
「わかりました。
では今日の午後見に行ってみようと思います。」
「はい、畏まりました。
整備局には伝えておきましょう。」
「よろしくお願いします。」
「あとタケオ様。
鍛冶屋組合とブラッドリー様方との話し合いの場は3日後の昼過ぎでお願いします。
場所は庁舎の会議室になると思います。
ブラッドリー様には今日の昼に通達されるようになっています。」
「わかりました。」
武雄が頷くのだった。
「お爺さま、鍛冶屋組合とはどんな組合なのですか?」
スミスが聞いてくる。
「ん?鍛冶屋達じゃが?」
「いえ、そうではなくてですね。
資料を前に見たのですが、鍛冶屋の範囲が広いように思うのです。
武具、鍋や包丁の調理具、建物の意匠に小箱のような小物入れなんかもあるみたいなのですけど?」
「ん~・・・確かにの。
小物入れなんかは家具の一種だからの、鍛冶屋とは言えないかもしれぬが・・・」
「主、スミス様、それは大元が・・・発祥が鍛冶屋だからですね。
元々武具等を作っていたのが、小物入れに特化したと考えるのが良いでしょう。」
フレデリックが補足する。
「そうなんですね。」
スミスが頷く。
「仕立て屋組合の中に防具を扱う所もあったりします。
なので、違う組合でも重複している職種は少なからずあります。」
「わかりました。」
スミスが頷く。武雄は「へぇ~」と思うのだった。
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