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第598話 エルヴィス伯爵の米の入手方法を教えて貰おう。

しばらくしてエルヴィス爺さんが客間に戻って来る。

「すまんの、少し探してしまったわ。」

「いえ。」

ヴィクターが返事をする。

「で、エルヴィスさん、何があるのですか?」

「うむ、これなのだがの?」

エルヴィス爺さんが武雄に魔王国の商人からの報告書を渡す。

「えーっと・・・王都で拝見した物ですね。」

「うむ。

 実はの、30年くらい前は魔王国の物を集めるのが趣味だったのじゃがな。

 その商店とは、その頃から知り合いじゃ。

 諜報とか策謀の為ではなくの、ただ相手の街での噂が知りたかったので報告書の提出を依頼したら毎月の定例行事化してしまったのじゃ。」

「なるほど、文通ですね。」

「・・・こんな殺伐とした文通というのはしたくないの・・・

 もっとワクワクする物が良いの。」

エルヴィス爺さんが難しい顔をさせて呟く。

「主、この報告書をどうするのですか?」

フレデリックが聞いてくる。

「うむ。

 ここの商店を通じて魔王国のエルフ領からタケオの言う米が買えぬかの?

 それをヴィクターに聞きたくての。」

「「なるほど。」」

武雄とフレデリックが頷く。

「ちなみに2人はどう考えていたのかの?」

「私は年明けに王都に行くので陛下経由で魔王国から情報が得られないかと。

 あとは栽培をどうしようかと思っていました。」

「私の場合は、タケオ様の米をどこで栽培しようかと。

 協力農家を探す方法を模索していました。」

「うむ、現物の入手という所ではわしが一番可能性はありそうじゃ。」

エルヴィス爺さんがうんうん頷く。

「タケオ、ヴィクターに見せてくれるかの?」

エルヴィス爺さんに促され武雄がヴィクターに報告書を渡す。

「失礼しま・・・」

中を数枚捲りながら返事を始めたヴィクターが全てを言い終わる前に額に手を当てガックリとする。

「んん?どうしたのじゃ?」

「・・・」

「あの・・・お父さま?

 え・・・!?」

ジーナが横から覗くと言葉をなくす。

「どうしましたか?」

「あの・・・伯爵様、これは30年前からなのですか?」

「う・・・うむ。

 だが、内情が知りたいとかではなくての。

 街の雰囲気とか最近は長雨だとか世間話なのじゃが・・・」

エルヴィス爺さんは「問題がある箇所はないのだが?」と不思議がる。

エルヴィス爺さんの言葉に武雄とアリスは「文通だね」と思う。

「お父さま、これ・・・叔母様ですよね?」

「あぁ・・・アイツは何をしているんだ・・・」

ヴィクターは顔を上げないまま呟く。

「ん?ジーナ、この商店は知り合いなのですか?」

武雄がジーナに聞いてくる。

「はい・・・この商店は父の妹がやっている店なんです。」

「・・・ヴィクター。

 戦争時とか緊急時の兵士の人員とか政策の話とかはしておらん。あくまで日常の噂程度を聞いておるだけじゃ・・・やましい事はしておらんからの?」

エルヴィス爺さんも複雑そうな顔をさせる。

「いえ・・・

 内容を読むと別に我らの事を書いている訳でもないようですので・・・良いのでしょうが・・・」

「伯爵様、これはどのようにやり取りをしているのですか?」

「うむ、商隊を通じてやり取りをしておるの。

 向こうからは報告書をこちらからは特産品を贈っておる。」

「あれ?・・・お父さま、それって・・・」

「あぁ、たまにうちに『お裾分け』と言って持って来ていた物かもしれないな・・・」

「とりあえず信用はありそうな商店ですね。」

武雄がヴィクター達を見ながら言う。

「はい。

 魔王国全土との取引もここなら出来るでしょう。

 主、前に我が領の大まかな編成を申しましたが覚えていらっしゃいますか?」

「えーっと・・・確か、伯爵家を中心とした統治組と騎士組、そして事務組でしたか?」

「はい。

 この国で言う所の商業、農業、工業を統括するのが事務組なのですが、私の妹がしている店は上位の店になります。」

「なるほど。

 ちなみにですが・・・どのくらいまで権力があるのですか?」

「そうですね・・・魔王国の王城がある街でも顔が利くという所でしょうか。」

「なるほど。

 エルヴィスさん、ここを頼っても良いでしょうか?」

「わしは構わぬよ。

 ヴィクター、ジーナ、ここを通じて米を購入するのに問題な事はあるかの?」

「真っ当な商売であるなら何も問題はないかと。

 ただ、エルフの国自体が閉鎖的なので・・・入手には少し時間がかかるかと思います。」

「ふむ・・・

 もう少し手を打って確実に手に入れたいの。」

「・・・ジーナ。

 その叔母さんに向けて手紙を書きなさい。」

武雄が唐突にジーナに言ってくる。

「え!?ご主人様、よろしいのですか?」

「ふむ・・・正確な情報を与えるのじゃな?」

ジーナが驚く一方でエルヴィス爺さんが「それもまた良い手かもしれぬの」と頷く。

「はい。

 今までの経緯をジーナに書いて貰います。

 気が付いたらウィリプ連合国行きの奴隷船に居てカトランダ帝国で奴隷として売られていた事。

 私に買われて現状ではアズパール王国のエルヴィス伯爵邸で執事をする事になった事。

 25年勤めれば晴れて自由になる事。

 ヴィクターとジーナが生きている事がわかると不要な戦争が起きそうなので秘密にして欲しい事。

 3年後にはウォルトウィスキーを少数ながら魔王国に卸したい旨の説明を書いてください。

 そしてエルフの国か領地から米という穀物を入手したいと。」

「・・・ご主人様、本当に包み隠さずに書いて良いのですか?」

「出来れば給金の不満だけは書かないで欲しいですね。」

武雄が苦笑する。

「平気です!今のままでも十分に満足しています!」

ジーナが慌てながら返事をしてくる。

「であるならば伯爵様、主、シモーナを使って魔王国の中枢部にウォルトウィスキーを見せても良いかもしれません。」

ヴィクターが提案をしてくる。

「シモーナ?」

「ご主人様、叔母の名前です。」

「ヴィクター、中枢とはなんじゃの?」

「端的に言えば魔王国ヴァレーリ陛下に見せれば良いかと。

 あの方はお酒が好きですので、新種の酒(・・・・)には興味を示すかと思います。

 戦争の抑止にはなる可能性があります。」

「ふむ・・・なるほどの・・・使えそうじゃの。

 ならば商店の方にはわしから正式に依頼をしてみようかの。」

「主、どういう風に書きますか?」

フレデリックが聞いてくる。

「うむ、我が領地で新たに製作した酒を貴国で少数だが流通させて良い物か確認をして欲しいとな。

 もちろん、ジーナの方には陛下に飲んで欲しいと書いておいてくれるとありがたいの。」

「わかりました、伯爵様。」

「うむ。

 ジーナ、すまぬが明日の夕刻までに文面を用意してくれるかの?

 こういうことは早々に済ませてしまうのが一番じゃからの。」

「はい、父に内容を確認して貰い提出いたします。」

「うむ、すまぬがよろしくの。」

エルヴィス爺さんが朗らかに言うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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