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第596話 エルヴィス邸に帰宅。

武雄とフレデリックが客間に入室する。

「エルヴィスさん、戻りました。」

「戻りましたー。」

「皆さま、戻りました。」

「タケオ、ミア、フレデリック、おかえり。」

「アリスお嬢様、スミス坊ちゃん、戻りました。」

「はい。タケオ様、ミアちゃん、おかえりなさい。」

「3人ともおかえりなさい。」

エルヴィス家の面々と武雄達が帰宅の挨拶を交わす。

「で、タケオ、どうであったかの?」

「とりあえずはこの街の分は作ってくれそうではありますが・・・」

「タケオ様、ありがとうございました。」

フレデリックが武雄に頭を下げる。

「いえいえ、ウォルトウィスキーもウスターソースも私が街の産業にしたいと発案した物ですからエルヴィス家にお金を貸す(・・・・)のに問題はないですよ。」

武雄は苦笑しながら言ってくる。

「タケオ、わしからも礼を言っておくの。

 タケオの王都からの貴族としての給金から金貨200枚の捻出はありがたいと思う。

 だが、本当に平気なのかの?

 さっきの説明では問題ないと言っておったが・・・」

エルヴィス爺さんが心配そうに聞いてくる。

「確か、貴族としての給金が年金貨300枚、初期の研究所の建物費用の助成が金貨200枚、研究所所長手当が金貨100枚です。

 なので、計金貨600枚の支度金があります。

 その内、研究所の建設に金貨300枚をお払いしますから、残り金貨300枚です。

 それにトレンチコートやウォルトウィスキー、懐中時計での定期収入があると思うので、問題ないと言ったのですが・・・

 それにしても私はこのウスターソースが流行るとは思うのですが、エルヴィスさんは懐疑的でしたね。」

武雄が腕を組んで悩む。

「うむ、そこまでは疑ってはおらんのじゃが。

 ウスターソースの販売価格がどうなるかで、流行るかどうかが決まると思っておるのは確かじゃの。

 それにまだわしらは食べておらんからの~。クリフ殿下方やアリスの反応を聞いて判断しておるのみだしの~。」

「ははは、そう恨めしそうに言わなくても今日の夕飯で作りますから。」

「「やった!」」

エルヴィス爺さんとスミスが満面の笑みを浮かべて喜ぶ。

「そういえば、タケオはウスターソースの販売価格を銅貨5枚と想定したとさっき言っておったの。」

「はい。そのぐらいの値段でなければ一般家庭に普及しないのではないかと思います。」

「うむ、その考え自体は間違っていないとわしも思うがの。

 だが、銅貨5枚での流通は不可能じゃ。」

「えーっと・・・瓶の価格ですか?」

武雄が少し考えて回答する。

「うむ。

 タケオとフレデリックが屋敷を出た後でアリスとスミスが街の雑貨屋で小瓶の調査をしてきたのじゃ。」

「はい。タケオ様が銅貨5枚での流通をさせたいなら・・・たぶんこの小瓶でないと出来ません。」

スミスが80mlぐらいの小瓶を取り出す。

「・・・これはおいくらでしたか?」

「銅貨5枚です。

 店での販売価格が銅貨5枚なので仕入れ値はたぶん銅貨2枚くらいだろうと予想しました。」

「んー・・・少ないですね。

 私的には・・・これくらいです。」

武雄が客間の棚にあった200ml程度の容量のブランデーボトルを手に取る。

「タケオ様、それは銅貨で10枚くらいしていましたよ?

 たぶん仕入れ値は銅貨5枚くらいではないでしょうか。」

「そうですか。

 あとは各種の野菜や香料ですか・・・原材料費がいくらになるのか。

 銅貨10枚以内にはしたいですよね。」

「ん~・・・それでは利益が出ないと思うのぉ。

 安く抑えるにはどうしたものか・・・」

「原価を下げるしかないのは明白なのですが、ベッドフォードさんがどう考えるか。

 そこも興味が湧きますね。」

「それに主、タケオ様、野菜の確保の問題もあります。

 初期のこの街分はこの街の農家で対応は出来るでしょうが、将来的には他の町から入れないといけないでしょう。」

「タケオはどう見る?」

「この街の・・・いやエルヴィス家がどういう政策を取るかで変わると思います。

 正確には1、2年後の王都との付き合い方に依るかと。」

「ふむ、隣に大きい権力が来るからの。」

「タケオ様、王都との商売的な付き合いは今まで通りではダメなのですか?」

スミスが聞いてくる。

「んー・・・」

武雄が顎に手を当てて考える。

「それについてはわしの考えを言っておこうかの。」

「お爺さまが?」

「うむ。

 そもそもうちの領内の維持をする目的での流通は王都とフレッドとロバートの所から買い付けを行っておる。

 まぁ簡単に言えば通行税をそのまま買い付けに回しているのじゃがの。

 つまり今のまま(・・・・)で収支のバランスが良いのじゃよ。

 だが、今後ウィリアム殿下が異動してくる。

 さらにはタケオの進言で物流が変わる可能性がある。

 となると、我らが選べる道は2つ。

 1つは今までと同じく王都とやり取りをしてウィリアム殿下との付き合いをしない。

 もう1つはウィリアム殿下とやり取りをして王都との付き合いをしない。

 ・・・極論から言えばそうなるの。」

「それは・・・どうすれば良いのですか?」

スミスが悩みだす。

「スミス坊ちゃん。

 実際はどちらに向けても完璧に流通を無くすというのは出来ません。

 なので、『今後の流通の比重をどうするのか?』というトップ判断をエルヴィス家はしないといけません。」

「うむ。もっとちゃんと考えれば、王都、ウィリアム殿下、フレッド、ロバートの4地域からの流通の見直しを実施しないといけないの。

 タケオはどう動くかの?」

「私は王国全土にトレンチコートとウォルトウィスキーの販売構想をしていますが、ウスターソースが4貴族領の販売になるならウィリアム殿下領を中心に考えたいとは思います。」

「そうなるの。

 であるなら、ウィリアム殿下の所に卸すウスターソースを積んで行き、帰りは穀物等を買ってくるのが望ましいの。」

「そうなりますね。

 となると、西町が王都からの流通が減る為に収益が減りそうではありますね。」

「うむ。

 今のままでは他の町の発展に後れをとりそうじゃの。

 タケオ、上手い手はないか?」

「そうですね・・・ウスターソースの原材料をこの街以外で買い付けるなら西町から買ってみるというのはどうでしょう。」

「タケオ様、極端に言えばウスターソース専用農場ですか?」

「そうなりますね。

 ウスターソースに適した野菜を作り出して貰えると良いかもしれませんが、どちらにしても4貴族分なら相当の野菜を作らないといけないかもしれませんね。」

「なるほどの。

 野菜を中心に発展するのも手なのかもしれぬの。

 そう言えば特産品祭りは西町は塩漬けだったの・・・ふむ、フレデリック。」

「はい。タケオ様が言っていた米の事と一緒に西町の野菜の生産品の増産体制が取れるのか検討を始めます。」

フレデリックが頷く。

「また文官方の仕事を増やしてしまいました・・・その内怒られますかね?」

「ふふ、タケオ様、平気です。

 これだけ発展の発案が出てくるのです。

 皆忙しいでしょうが、怒ることはないと思います。」

「そうあって欲しいです。

 政策というのはやはり人を動かしますよね・・・

 本当ならもう少し時間をおいても良いのかもしれませんが、どうも私はすぐに動きたがってしまって。」

武雄が苦笑する。

「タケオ、それで良いのじゃ。

 今考え付いたならタケオの中で今必要なこと(・・・・・・)だからなのじゃ。

 その良し悪しや実施の有無はまた別の事であって発案はすぐにするべきじゃ。」

「はい。全てを実施は出来ないかもしれません。

 ですが、主も言いましたが、タケオ様が思ったなら今行う事が必要だからでしょう。

 何も遠慮はいりません、どんどん発案してください。

 実施するかは我々が聞いてから決めさせて貰います。」

フレデリックがにこやかに言う。

「はい、わかりました。

 ではこれからもよろしくお願いします。」

武雄が頭を下げるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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