第594話 酒屋での話し合いとウスターソースについて。
昼食をエルヴィス家で取った武雄はミアと2人でローの酒屋に来ていた。
「おじさん、来ましたよ。」
「来ましたー。」
「キタミザト様、ミア様、いらっしゃいませ。ほほほ。」
「契約書は見ました。
私の取り分を多くして貰ったようで、すみませんでした。」
「いえいえ。
私どもからとワイナリーからの両者から取るようにした方が自覚するだろうという考えがあるのと平等に負担した方が良いからです。」
「とりあえずおじさんと社長さんが納得してくれたのなら問題ないです。」
「何も問題はないですよ、ほほほ。」
「ウォルトウィスキーの反響はどうですか?」
「上々ですね。普通の酒場や女性がいる酒場からいつ卸されるかの確認が相次いでいます。」
「順調そうで何よりです。
ちなみにですが、おじさんの中では今後の予定はどうなっていますか?」
「そうですね。
まずはこの3年でこの街で存在感を出して確実に定着させたいですね。」
「数が少ないから堅実に行くのですね。」
「はい。
それにこのウォルトウィスキーはエルヴィス伯爵領内では少ない労力で販売が出来そうです。
ですので、私共は他領への売り込み方法を今考えています。
ウォルトさんの所も他領へは卸したことがないそうで私共も他領のワイナリーは知っていますが、酒場や酒屋との面識はないのです。
なので、今は皆で意見を持ち寄っています。
こちらは時間があるのでのんびりです、ほほほ。」
「なるほど。
ちなみにエルヴィス伯爵は他国に売り込む事も考えているようですよ。」
「・・・ん~・・・」
ローが腕を組んで悩む。
「難しいですか?」
「・・・特に数量が・・・ですね。
今後の3年間は3000程度しか市場に出せません。
今の状態でもこの街で完売する見込みなのです・・・数十程度なら輸出に回せるでしょうが・・・商売として成り立つのか・・・
それに他国に卸すのも他領へ卸すのも取引の労力自体に差はほとんどないと思います。
・・・ですが、他国へだと他領よりもさらに酒屋を知らないですからね。
その辺の最初の良い取引先を見つけるのが苦労しそうです。」
「なるほど。
それはエルヴィス伯爵にも伝えておきます。」
「はい、お願いします。
で、キタミザト様、今日は何か買われますか?」
「そうですね・・・おじさんの今日の午後の時間を銀貨5枚で売ってくれますか?」
「ほほほ、この老いぼれにそれほどの価値などないでしょうに。
わかりました、他ならぬキタミザト様に買われるのであれば銀貨2枚で結構です。」
「あれ?値引いてくれましたね。
では、銀貨2枚でお願いします。」
「はい。
で、私を連れてどこに行かれるので?」
「青果屋のおやじさんに商談をしたいのですが・・・どうすればしてくれるのかわからないんですよね。」
「キタミザト様が青果屋というとベッドフォードの所でしょうね。
ふむ・・・そうですね。
ちなみにどんな物なのですかね?」
「第1皇子のクリフ殿下領で作られた新種のソースなんです。」
「ほぉ、売れそうですか?」
「ええ、確実に。」
「ウォルトウィスキーと同じくらいに言い切りますね。
ふむ・・・そのソースは国内全域に売れますか?」
「残念ながら契約上このソースは国内では魔王国に面している4貴族領のみでしか売れません。」
「んー・・・
キタミザト様の頭の中での価格設定はどのようにしていますか?」
「そうですね。
このソースは一般向けを目指した商品ですので・・・銅貨5枚でこのぐらいの瓶で売りたいです。」
と武雄はその場にあった。200ml程度が入りそうなワインを手にする。
「・・・キタミザト様が気にかけているのは何でしょうか?」
「資金面ですね。
ラルフ店長やおじさんは組織で動いてくれていましたが、青果屋のおじさんの所はどうなのか・・・
個人経営をしている青果屋が果たしてソース作りに乗り出してくれるのか。
どう説得すれば作ってくれるのかわからないのです。」
「資金面は・・・いかんとも出来ないですね。」
「一応、考えはありますが・・・確約は出来ないですね。」
「それは話してみないと反応はわからないですね。」
「やはりそうですか。」
「とりあえず話してから考えても良いのではないでしょうかね。」
「わかりました。
じゃあおじさん、行きましょうか。」
「はい。
お~い、少し出掛けるぞ~。」
ローが奥に声をかけると「わかった」と返事が返ってくる。
武雄とローは青果屋を目指すのだった。
・・・
・・
・
武雄達は青果屋に着いてベッドフォードと机を挟んで座っている。
「キタミザト様はわかる。
だが、なんで一緒にローの爺さんとラルフが居るんだ?」
「「成り行きかなぁ?」」
ラルフは武雄とローが並んで歩いているのを目撃し、声をかけるとさっきの説明をされていたので「じゃあ私も行きます」と面白そうな事がありそうなので付いてきた。
決して工場関係で疲れたから息抜きでとは思っていない。
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