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第6話 馬車って素晴らしい物ですね。

「お待たせいたしました。」

目の前には、豪勢ではないがシックにまとまっている馬車が1台。

荷台(客室)が全面木で覆われており、いい感じの濃紺ですな。

全天候型ってのは普通なのでしょうか?

馬車を馬2頭で引くのは普通なのでしょうか?

この道だとサスペンションはどうなっているのでしょうか?

等々、興味津々で武雄が馬車をみていると御者台から一人の男性が下りてきた。


「再度になりますが、お待たせして申し訳ありません。」

「・・・フレデリック、お主が来たのか。」

フレデリックと言われた男性は恭しく頭をさげる。

「我らが主には言いたいことが多々ございますが、今は戻るのが先決かと。」

「ふむ、わかっておるよ。」

「では。」

とフレデリックは馬車の扉を開ける。

エルヴィス老がまず中に入るが、武雄はまずフレデリックを見つめる。

それに気が付いたのか。

「何かございましたか?」

「失礼ながら、私が同乗してもよろしいのでしょうか?」

「ええ、我らが主が客人として招く旨は聞き及んでおります。

 屋敷まで少々かかりますが、ごゆるりとお寛ぎください。」

「では、よろしくお願いいたします。」

とフレデリックに軽く礼をし、馬車の後ろ側にいた兵士っぽい者にも礼をしてから乗り込む。

「兵士、御者と打ち合わせをしますので、少々お待ちください。」

とフレデリックは扉を閉める。


------------------------

馬車内にて。

「タケオはこういうのは初めてなのか?

 子供みたいに目をキラキラさせて見ておったぞ?」

「ええ、こういうのは初めてですね。

 それにしても、内外装は華美ではなくシックであっても作りが丁寧ですね。

 こういうのが良い馬車なのでしょうね。」

武雄は中を見回しながら話している。

「ふむ、わかるかの?」

「ハッキリとは分かりません、全体的にとしか言えませんね。

 簡単に言えば色使いでしょうか。

 外装は濃紺に統一されていますが、全体の色ムラはなく綺麗に仕上げていますし、

 内装の仕上げはワニスかなにかでしょうか?

 色を濃い茶で統一しているのは落ち着くからでしょうか?」

「ふむ、面白い見方じゃの。

 豪華にしている馬車が良い馬車と言われる事が多いのだが。」

「贅を凝らしている馬車は何の疑問もなく最高級馬車です。

 しかし、価格の面ではわかりませんが、施主の意向と職人の意識が同じ方向に向いて作った物は

 良い物と言ってもよろしいのではないでしょうか?」

「ふむ、なるほどの。」

とその時。

「失礼いたします。」

とフレデリックが馬車に乗り込んできた。

「おや?主がなにやら楽しそうに会話をされていますね。

 どんな話をされていたのですか?」

フレデリックが座ると、タイミングを同じくして馬車が走りだした。

「おお、フレデリック、苦労をかけたな。

 タケオがこの馬車を褒めておったのじゃ。

 ちなみにタケオ、施主の意向と職人の意識はどんな主旨だったと思うのじゃ?」

「私の想像の範囲なので、間違っていてもお叱りはなしでお願いしたいのですが・・・

 この馬車の使用者は、ある程度身分がある方が使い、同乗される方も同等もしくは上の方が乗ることを想定すること。

 使用者は華美を求めていないが、周囲にケチや貧乏と思われない様にすること。

 長時間乗ることも想定して、座席を工夫すること。

 と言うのが初期条件でしょうか?」

「ふむ、なるほどの。

 フレデリック、この主旨は合っておるかの?」

「はい、間違っておりません。

 あと、追加するならば、サスペンションには最新の技術ではなく、従来のサスペンションを改良するように依頼しました。」

「タケオは、この依頼の意味がわかるか?」

「なんとなくで構わなければ。従来の発展形を望むのは、旅先や外出先で故障した際に現地の職人に修理依頼が出来るようにでしょうか。

 多少は直すのに手間取るでしょうが、発展形なら職人であれば対応出来るはずです。

 たぶんこの馬車のどこかに設計図が入っているのではないでしょうか?」

「正解でございますね。」

「良くわかったのぉ。

 わしなんかは一目見て気に入ってしまったので、主旨はわからなかったぞ。」

「たぶん施主としては使用者が気持ち良く、そして寛げるようにしたかったのかもしれません。」

「ふふふ。」

フレデリックはにこやかに笑うのだった。


------------------------

話は少し前、エルヴィス老とタケオを馬車に入れた直後に戻る。


フレデリックは控えていた兵士に声をかける。

「どうでしたか?」

「身のこなしや気迫等、暗殺者や刺客とは思えません。

 意図してあんなに自然体を通せるような手練れだとしたら、私の手には負えないでしょう。

 今すぐ処理することはないだろうと進言します。」

「どこかの間者という線はどうですか?」

「確率は低いと考えます。

 現在の私の装備は普通ですが、胸の紋章を見てしまえば、一瞬でも態度に出てしまうと思います。

 ですが、全くありませんでしたね。」

「確かに、あなたの所属である辺境軍の紋章は威力がありますからね。」

「恐れ入ります。」

「気に入りましたか?」

「私は若輩の身ではありますが、気配りができていると感じました。

 好感が持てます。」

「あなたが若輩ではこの国の兵士は皆、最弱になってしまいますね。

 ふふ・・・

 では、処理はなしで屋敷に向かうとします。

 貴方ももう少し随伴をお願いします。」

「はっ!我らが主はエルヴィス様のお帰りを屋敷にて首を長くしてお待ちでしょう。」

「ふふ、首を長くしているのは、貴方の主だけではないですけどもね。」

「では、参りましょう。」



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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