第589話 拳銃とリボルバーについて(武雄と鈴音の考え。)
「簡単に言うと拳銃とは携帯に便利なサイズまで小さくした小銃になります。
小銃のこの部分のみで掌サイズに作られた物と考えれば良いでしょう。」
「タケオ様はなぜその拳銃を製作依頼しなかったのですか?
便利そうなのですが?」
アリスは「これは便利な物なのでは?」と素直に聞いてくる。
「ん~・・・
小銃は撃った際の衝撃を肩で受けますが、拳銃は手首で受けます。
小銃用の弾丸が大きいので抑えきれないと思ったのです。
それに基本的に小銃を主装備にする気は今の所ないのです。」
武雄はそう言うが「確か映画か何かで44マグナムというのはあったような?」と思うが言わない。
「?・・・ブラッドリーさん方に依頼してみるのは?」
アリスはいまいち武雄が言う肩の衝撃を手首で受けるという意味合いが分からず「衝撃のせいで銃を小さくするのが困難なのだろう」と勘違いをする。
「アリスさん、それは難しいです。
今は小銃用の弾丸や小銃を製作するのも結構大変なのです。
小型化はまだ先にして欲しいというのが工房としての本音ですね。」
鈴音が苦笑する。
「それに・・・たぶん拳銃が普及すると剣の時代が終わります。
ですので、現状では拳銃の普及は凍結します。」
「「え!?」」
鈴音以外の面々が武雄の言葉に驚く。
「武雄さんが前に説明した考えだと・・・確かに拳銃は危険ですね。」
鈴音が頷く。
「タケオ様!?それほど拳銃というのは威力があるのですか?」
「威力・・・というよりも便利過ぎるのです。」
「便利過ぎる。」
アリスが復唱する。
「動きにするとですね。
剣とは構える、剣を後ろに振り、剣を当てるの3工程ですが、拳銃は構える、引き金を引くの2工程で剣よりも早く相手に攻撃が出来てしまうのです。
敵と相対してから攻撃までの時間がこれだけ違うと同一条件では不利になります。
それに剣は近接での戦闘、銃は離れての戦闘ですから・・・
その時点で剣側の不利になるでしょう。」
「「「・・・なるほど。」」」
アリス達が想像しながら頷く。
「前にも言いましたが、私は剣と魔法の世界は好きです。
小銃が蔓延る世界へすることは避けたいというのが基本姿勢になります。
なので、弾丸を使用した拳銃の登場はもう少し後にしたいですね。」
「キタミザト殿、スズネ殿、拳銃に対抗する方法はあるのでしょうか?」
アーキンが聞いてくる。
「「・・・」」
武雄と鈴音が腕を組んで長考を始めるが・・・
「武雄さん、基本的に銃には盾ですよね?」
「ええ・・・私もそれしか思い浮かばないのですけど・・・
基本は盾で防御していくしかないでしょうね。」
「そうですか・・・」
アーキンが少しガッカリとする。
「で、テイラー店長が言った『どうやって弾丸を横に移動させるのか』の答えですが。
変に好奇心に駆られて開発をされても困りますから拳銃も含めて説明しますね。」
「はい!」
テイラーが姿勢を正す。
「テイラー店長の考えの答えは実は複数あります。
ですが、私と鈴音がテイラー店長の発想を聞いた時に同時に想像した方法は一番開発しやすいと思います。」
「テイラーさん、私と武雄さんが考えたのは回転式拳銃と言います。」
「リボルバー・・・」
テイラーが頷く。
「この弾丸を入れる所を弾倉・・・弾の倉、納める場所という言い方をするのですが、この部分に円運動をする機構を組み込み5~6発を事前に装填しておくという考え方がリボルバーになります。」
「基本的には小銃のこの引き金の部分を引くと弾倉が回転を始め、引き金を最後まで引ききると次の弾丸が発射位置に移動するとともに、この薬莢の後ろ部分を撃鉄と呼ばれる物が叩く構造になります。」
「はぁ・・・」
武雄と鈴音が説明するが、テイラーの想像が追い付かずに生返事を返してくる。
「そしてこのリボルバー型の小銃というのは私的には不可です。」
「え!?」
武雄の宣言にテイラーが驚く。
「この小銃は構えてみると・・・こうですね。」
武雄が立って小銃改1を構える。
「弾丸がある位置と顔との距離が近いのです。
万が一、相手の魔法や弾丸が弾倉に当たって暴発した場合、即死する可能性があります。
ですので、小銃においてはこのリボルバー型の連射方法は取れません。」
「さらに小銃自体は全長1200㎜、重量3.5㎏程度にはしていますが、これにリボルバーの機構を入れると重量が5~6kg程度に増えてしまう可能性もあります。
持って撃つというには少し重いと思いますし・・・」
武雄と鈴音が言ってくる。
「そうですか・・・」
テイラーが難しい顔をさせる。
「はい。ですので小銃の連射についてはリボルバー以外を考えないといけません。」
「わかりました。
弾丸が回転式で装填するのは諦めます。」
「そうですか・・・」
テイラーの呟きに鈴音が申し訳なさそうに答える。
「・・・」
武雄は腕を組んで何か考えている。
目がテイラーと鈴音を行ったり来たりさせて。
「では、ついでに小銃の改造について話しましょうか。」
「「え?」」
皆が一斉に武雄を見るのだった。
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