第583話 説明終了と制服と作業服のオーダー。
武雄は皆がお茶の準備をしている間に着替え、元のスーツ姿になる。
制服も作業服もまたマネキンのような物に着せて持って来て貰っている。
鈴音は制服のスカート部分を軽く打ち合わせをしておき、採寸もして貰っていた。
そして武雄は皆にトレンチコートの概念、誕生の背景を説明し、英国式の制服の概要と作業服の概要を説明していた。
説明の間、皆が「なるほど」と言ってみたり、ウンウン頷く者も居たが話を中断させるような質問はなかった。
「とまぁ、概要としてはこんな感じですね。」
「キタミザト殿。
まとめるとトレンチコートは『移動時の体力維持の為』の物で、今回の制服と作業服は『敵から見つからない為』の物なのですね?」
アーキンが聞いてくる。
「ええ、概要としてはそうなります。
制服については私は研究所用の制服にする気ですし、作業服は戦闘時の服装と考えています。」
「んー・・・その緑の作業服は本当に見つからないのですか?」
ブルックが聞いてくる。
「絶対に見つからない物などこの世にはありませんが、見つかり辛い物は出来ますね。」
「武雄さん、迷彩柄にはしないのですか?」
「迷彩ですか・・・あれって染め物技術だと私は思うのですよね。
仕立て屋でする物ではないと思っているのでこの場では言っていませんが・・・
店長さん、こういった染め物はできるのでしょうか?」
武雄が紙に大雑把に配色を書く。
「・・・難しいのではないでしょうか?
まずは、緑色の下地に色の違う緑、茶色、黒等の色を不均等で無作為に配色する・・・
1品物の為にだと生地業者がしません。
ある程度の出荷数量が見込めればして貰えるかとは思います。」
ラルフ店長が武雄のデッサンを見て頭を捻る。
「だ、そうですよ。」
武雄が鈴音に向かって言う。
「そうなのですね。
今は難しいのですね。」
「では、話を戻しますね。
まずは制服についてはこのままで良いと思っていますが・・・鈴音、何かありますか?」
「武雄さん、帽子はどうするのですか?
警察官みたいな帽子にはしないのですか?」
「欲しいですよね。」
武雄が苦笑する。
「頼まないのは何でですか?」
「私では上手く絵に出来なかったからですよ。
鈴音、書いて貰えますか?」
「わかりました。」
と、鈴音が簡単に書き始めると皆が覗き込んでくる。
「こういった帽子は作った事ないですね。
これも布製で良いのですか?」
職人の一人が聞いてくる。
「私としては制服と同じ色の布を使って・・・武雄さん、エンブレムはどうするのですか?」
「研究所の紋章はまだ王都で審査中なので後日ですね。」
「わかりました。
紋章は決まり次第、この正面部分に金色で研究所の紋様を模った意匠を入れて欲しいですね。
で、鍔も含めて帽子の下の部分から1周に黒い皮にしてください。」
「・・・わかりました。」
職人が一生懸命メモをしながら言ってくる。
「あとは・・・ベルトは布製で良いですか?」
鈴音が武雄に聞いてくる。
「いや、制服は濃い茶色の皮ベルトにしようと思っていますよ。」
「わかりました。
あの・・・ありますか?」
「はい、既存の物がございます。」
「あとは靴ですか・・・
武雄さん、やっぱり茶色ですか?」
「ええ、濃い茶色の革靴が良いですね。」
「そちらも既存の物があると思います。
あとでキタミザト様の足型の採寸をしますのでお願いします。」
「はい。
あと、襟章と肩章は前と同様にテイラー店長の所で作ります。」
「はい、畏まりました。」
「では、制服の方はこれで良いですかね?
次は作業服ですね。」
武雄がそう言うと作業服のマネキンを職人が武雄の横に持って来る。
「先ほども言いましたが、作業服のサイズはもう1回り大きくしてください。
ベルトは布製の緑系、穴あきではない物が良いですね。
こういった挟み込む物が理想ですが・・・何か考えてください。」
武雄がまた紙に布ベルトの横から見た時の絵を書く。
「キタミザト様、ベルトの布はやはり頑丈性を出さないといけませんか?
ベルトは皮が主流であとは紐で結ぶのがありますが、布製のベルトは聞いたことがありません。」
「ええ。
作業服の下に気候によっては着こんだり、薄着になったりしますので、微調整が出来る布製のベルトが良いですね。
さらに作業、戦闘用ですから・・・丈夫さは皮並みが必要でしょうね。
その辺は考えてください。
基本的には平な布ベルトを希望します。」
「・・・少し考えます。」
「はい、お願いしますね。
あとは靴ですが・・・乗馬用の靴のこの辺。
足の脛の真ん中より下までの物が欲しいです。」
「短いですね。」
「ええ、ちょっとした水たまりに入っても怪我が無いようにしたいのです。
また、山歩きもするかもしれませんから一般の革靴よりも底が2倍くらい厚い物が欲しいですね。
さらに足の甲の部分に鉄板を入れてください。
木に挟まったりしても足の保護が出来るようにしたいので。」
「2倍!?それに鉄板!?
そ・・・それは靴屋と話してみます。」
職人は汗をかきながら一生懸命メモをしていく。
「ええ、お願いします。
基本的な所はそこですね。
鈴音、他に何かありますか?」
「えーっと・・・帽子とかベストとかですかね?
でも作業服の上下と靴はそれで良いかと思います。」
「そうですね。
では、ここからは装備品の話ですね。」
皆が頷くのだった。
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