第582話 作業服とヘルメット。
「・・・」
武雄と職人1名が奥から戻ってくるが、2人も微妙な顔をしている。
「タケオ様、それはないですね。
さっきの方がまだ採用出来ます。」
アリスが作業服を見た率直な意見を言ってくる。
他の面々も微妙な顔をさせている。
上下緑地の作業服なのだが、靴や帽子、ヘルメット、ベルト等の備品がないのでみすぼらしかった。
「まだ製作途中ですからね。
私も今のままでは買えませんよ。」
武雄も苦笑する。
「どう改良しましょうか?」
職人が聞いてくる。
「とりあえずの要求としては・・・まずは作業服のサイズはもう1回り大きくしてください。
少しこの服はピッタリしすぎています。
それと靴や帽子を作りたいですが、ここで出来ますか?」
「そうですね・・・
うちでは作りませんが、全体を見ながらデザインを決めるのも良いかもしれません。
ですので、うちから各店に依頼しますので問題ありません。」
「はい、すみませんがよろしくお願いします。
では私からの要望を言いますね。
と、私の拙い絵を見ながら聞いてくれますか?」
「はい、すぐにご用意いたします。」
と職人はすぐに紙とペンを用意する。
「まず帽子なのですが、こんな感じで作れますか?」
武雄はおもむろにキャップと鉄の戦闘用ヘルメットを書く。
「こちらが布製、こちらが鉄製でお願いします。」
「2種類ですか・・・一つは布・・・この出ている部分は柔らかくても良いのですか?」
「そこは厚手の紙等を中に入れてしっかりと作ってください。」
「わかりました。
もう一つが鉄ですか・・・これはフルプレートの兜のように直接被る物でしょうか?」
「たぶん違いますね。
ん~・・・まずは頭から支持する頑丈な布等を使った内装と外側からの衝撃を直接防ぐ鉄の外装があり、この2つの間は隙間がある2重構造です。
これを先ほどの帽子の上から被ります。」
武雄が簡単に断面図を書く。
「それにしても隙間がある2重構造ですか・・・
フルプレートの兜との違いはなんでしょうか?」
「すみませんが、フルプレートの兜はありますか?」
「えーっと・・・はい、奥にありますから持ってきます。」
職人の男性が奥へと走っていく。
「タケオ様。」
「どうしました?アリスお嬢様。」
「帽子の上に帽子を被るのですか?」
「はい。
戦闘時以外は布製の帽子を屋外ではしていて戦闘時はヘルメットを被るのです。
戦闘だからと言って一々帽子を取り替えていたら大変でしょう?
それに屋外だと脱いだ布製の帽子をしまう所もないでしょうし。」
「?・・・キタミザト殿、それはヘルメットも同じなのでは?」
ブルックが聞いてくる。
「私的には違いますね。
布製の帽子は何種類サイズを作っても良いですが、ヘルメットは全て同じ大きさで作れば1ヶ所にまとめて置いておけると思っています。
同じ大きさならば、誰がどれを取っても問題ないでしょう?」
「??・・・布製の帽子は何種類かサイズがあるのにヘルメットは同じ大きさだとブカブカになりませんか?」
アーキンも聞いてくる。
「内装の方を調節出来るようにすれば、問題ないですよ。」
「「「なるほど。」」」
アリスとアーキンとブルックが「意外と考え込まれている」と呆れながらも感心する。
アニータとミルコは「へぇ~」と思っているし、鈴音は「言葉で説明するって大変だなぁ」と感心していた。
と、奥から先程の職人がフルプレートの兜を持ってきたが、他の店員達もやって来る。
「あれ?これは前の時と同じですか?」
武雄が苦笑する。
「はい、今回も講義をお願いします。」
店員達がさっさと店を「CLOSE」にしてしまう。
「そうですか。
すみませんが、もう少し時間がかかりそうですね。」
武雄はアリス達に言うとアリス達も「どこでも一緒ですね」と苦笑を返してくるのだった。
「さてと・・・ん?初めての方も居るのですか?」
「はい。
うちに入ってきた2軒の職人さん達です。」
「そうですか。トレンチコートや私の事は話していますか?」
「トレンチコートの仕様よりもキタミザト様の方が説明は不要かと思いますが、正式には組合長が伯爵様からお聞きして、組合長経由で各店に話が行っています。
ですので、どちらも皆わかっているはずです。」
「わかりました。
ん?」
武雄がアーキン達を見る。
「あぁ、こっちに話をしていませんでしたね。
じゃあ皆さん、少しトレンチコートの話をしましょうか。
おさらいと今回の作業服の意味も話しておきましょう。」
「「はい。」」
と皆が頷くと同時に仕立て屋の扉が開きラルフ店長が帰って来る。
「おいおい、まだ昼前なのになんで『CLOSE』になって・・・キタミザト様!?」
店内に入って来たラルフ店長が武雄をみて驚く。
「店長さん、お邪魔しています。
昨日戻りました。」
武雄の言葉に他の面々が会釈をする。
「はぁ・・・で、『CLOSE』になっているという事は・・・また何か考えたのですか?」
ラルフ店長は若干頭を押さえながら聞いてくる。
「いえいえ。
私専用の制服と作業服を作って貰ったのでその話合いです。」
「?・・・そうですか。
で、勉強会ですかね?」
ラルフ店長も「あれ?そんな話が来てたかな?」と思うが、追及はしてこない。
「まぁ軽く話す程度です。
それにまだまだ改良しないといけないでしょうし。」
武雄が苦笑を向ける。
「まぁ、キタミザト様の話は皆に有益でしょうから構いません。
ではお客様方にお茶の用意を。」
ラルフ店長の号令の下、皆が動き出すのだった。
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