第580話 さて。まずは・・・文官達に挨拶に行こう。
朝食を終えた武雄達は9時少し前に屋敷の玄関を出てきた。
ミアは武雄の肩に、スーはアリスの肩にクゥはアリスに抱かれタマはトコトコ後ろを付いて来ていた。
「あ、武雄さん。
時間通りですね。」
門の所に鈴音とアーキン達4名が待っていた。
「待たせてしまいましたか?」
「いえ、問題ありません。
と、紙袋を多く持っていますがどうしたのですか?」
ブルックが聞いてくる。
武雄は小銃改1も持っていたが、大き目の袋を何個か持って来ていた。
「はは。すみませんが、皆さんちょっと寄り道をさせてください。
すぐに済みますから。」
「それは構いませんが、どちらに向かわれるのですか?」
「すぐ近くですよ。」
「「?」」
アーキン達は武雄が何をしに行くのかあまりわからないが付いていく。
・・・
・・
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庁舎から出てきた時には10時になっていた。
「はぁ、皆さんすみませんでしたね。」
「いえ、問題はありません。
最初に各局に挨拶に向かうと言ってくれれば良いのに・・・いきなり庁舎の中に入って行って驚きました。」
ブルックがため息混じりに言う。
「まぁ、今後の為でもありますからね。
最初に挨拶しないと時期を逃しそうでしょう?」
「それはそうですけど・・・
本当にいきなりだったんですね。
普通は事前に連絡を入れるかと思いますけど?」
「一応総監部のトップであるフレデリックさんには言いましたよ。朝食後に。」
「唐突で驚かれていたのでは?」
「『まぁ文官達も常に気を抜かない姿勢が大切だという良い教訓になるでしょう』と苦笑してくれましたね。
・・・それに今日したかったのもありますし。」
「なぜ今日にしたのですか?」
「ヴィクターとジーナが今日から総監部での研修なのです。
本当は一緒に行ってあげたかったのですが、それはそれで邪魔なような気もしましたから。
うちの部下がお世話になるんです。
ちゃんと事前に挨拶しておきたいでしょう?」
「まぁ、気持ちはわかりますけど・・・どの部署も驚いていましたよね。」
鈴音が思い出しながら言う。
武雄が行く先々で武雄とアリスを見つけた局長が走り寄って挨拶をしてきて、武雄が「研究所が出来ますので初期の人員を連れてきました。今後何かとお世話になりますのでよろしくお願いします。」と深々と頭を下げ、尚且つ料理長に作っておいて貰ったキャラメルを置いて来ていた。
総監部では「今日から部下がお世話になります。」とも伝えこちらも深々と頭を皆に下げていた。
キャラメルは所属人数よりも多目に渡しており各文官は「丁寧な方だなぁ」と武雄を評価していたりする。
ちなみに余ったキャラメルは局内で争奪戦が繰り広げられていた。
「さてと、では仕立て屋から行きますか。
あ、そうそうアーキンさん達の物件探索ですが、一緒に行く執事に屋敷の門前に昼過ぎに集合と伝えてありますので遅れないでくださいね。」
「はい、畏まりました。」
アーキン達が頷くと武雄を先頭に移動を開始するのだった。
・・
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「おや?キタミザト様にアリスお嬢様。
おはようございます。ほほほ。」
酒屋のローが店の準備をしている所を武雄達が通りかかり声をかけられる。
「「おはようございます。」」
武雄とアリスが返事をする。
「王都からいつお戻りに?」
「昨日帰ってきました。
おじさん、午後に寄りますからその時に話しましょう。
いろいろ話さないといけないでしょうから。」
「わかりました。
後ろの方はキタミザト様の部下の方々でしょうか?
それにエルフと小鳥・・・ドラゴンですか。」
ローは驚き顔をさせるが声には出さない。
ローの呟きにチビッ子達は右手を上げる。
「はい、研究所の人員です。
部下共々よろしくお願いします。」
武雄が言うとアーキン達も会釈する。
「出来ましたらご贔屓にして頂ければありがたいですね。」
「ではおじさん、またあとで。」
「はい。では。」
武雄達はローの店を後にするのだった。
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「キタミザト様、アリス様、いらっしゃいませ。」
武雄達はラルフの仕立て屋に着いて入店してきた所を女性店員が声をかけてくる。
「お邪魔します。」
「随分と人数がいらっしゃいますね。
こちらの方々はどういった方々で?」
「研究所の人員です。
部下共々、今後お世話になるかと。
よろしくお願いします。」
武雄がそう言うと皆が会釈する。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。
本日はどういったご用で?
今は店長達が工場の方に行っておりまして不在なのです。」
「店長達も順調そうですね。
実は皆にトレンチコートを売って欲しくてですね。」
「採寸ですと5日、量販はすぐにお納めできますが、どちらに致しましょうか。」
「えーっと。
どうしますか?」
武雄が皆の方を向いて聞く。
「私は量販用で平気です。」
鈴音が答える。
「じゃあ、私達もとりあえず量販にします。
落ち着いたら採寸用も検討します。」
ブルックが答えるとアーキン、アニータ、ミルコも頷く。
「畏まりました。
では、各サイズをお持ちしますのでご試着願います。」
「はい、わかりました。」
女性店員が奥に向かう。
・・
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女性店員が奥に入ったのを見ていたのか男性の2名が奥からこそこそやって来る。
うち1人は王都で会った職人だった。
「「キタミザト様、いらっしゃいませ。」」
「はい、お邪魔しています。
で、どうされましたか?
あ、王都の交渉は上手くいったらしいですね。」
「はい、お口添えありがとうございました。」
「いえ、私は何もしていませんよ。
ウィリアム殿下がやる気になってくれただけです。
と、それで・・・職人の貴方が出てくるとは?」
「キタミザト様、王都で書かれた試験小隊の制服を覚えておりますでしょうか?」
「ええ、皆に地味と言われたヤツですね。」
「出来てます!」
職人が意気揚々と言ってくる。
武雄は「あれ?試作依頼したかな?」と不思議がるがとりあえず見てみるかと思う。
「では、見ますか。」
「「はい!」」
職人2人が小走りに奥に行くのだった。
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