第576話 54日目 さてと。寝ますか。
アリス達が武雄達が歓談しているエルヴィス爺さんの書斎に移動してきていた。
そしてミアが「意思伝達方法を考えました」とチビッ子達の踊・・・挨拶を披露していた。
「ふむ、これが意思疎通方法かの。
可愛らしいのぉ。」
エルヴィス爺さんの呟きに皆が頷く。
「では、明日中に全員に通達しておきます。」
「「え!?」」
ヴィクターとジーナは予想を上回る速度で通達することをフレデリックが即決したのを驚く。
「うむ、フレデリック、すまんが頼むの。
ミア、良くやったの。」
「ありがとうございます、伯爵様。」
ミアが嬉しそうに頷く。
「良かったですね、ミア。
さ、疲れたでしょう?お菓子ですよ~。」
「はい♪」
「きゅ♪」
「チュン♪」
「ニャ♪」
チビッ子達は武雄からお菓子を貰い頬張り始める。
「うむ、うむ。
アリス達が来たという事はこの宴も終わりかの?」
「ええ、そろそろかと。
まぁそれとですね、さっきスミスから面白い事を聞きました。」
アリスが嬉しそうに言ってくる。
「ん?タケオ達が居ない間に起こったことはさっき説明したがの?」
「いえ、さっきスミスが私達が居ない間にいろいろ自分なりに考えたと言っていたのです。
ねぇ?スミス。」
「はい。特に突拍子もない事でもないのですが、お姉様達が出立してからタケオ様の行動力には誰かしら・・・タケオ様専用の文官を用意した方が良いのではないかと思っていた所にヴィクター殿とジーナさんが来てくれて良かったと話していたのです。
まぁ陛下がそもそも貴族にすると言っていたので後で話せば良いと思っていました。」
「あれ?私にはアリスお嬢様が居ますが?」
「ねぇ?タケオ様。
スミスったら少し離れている内に毒舌になっていたのです。
私だけではタケオ様の面倒はみれないと思ったみたいですね。」
アリスはクスクス笑いながら武雄に報告してくる。
「なるほど。」
「え!?違いますよ!?
お姉様は本当に面倒をみる方ですし、話の相談にはお爺さまもフレデリックもいますけど、実際に文官達との話合いをする者が必要かなと思ったのです!」
「うむ、そうじゃの。
だが、帰って来てみればその辺の人員はタケオが王都で見繕ってきたの。」
「はい、その通りです、主。
ヴィクター元伯爵様にジーナ様、そして試験小隊の方々・・・もしかしたらどの貴族よりも人材を集めたかもしれません。」
「成り行きなんですよね~。」
武雄が苦笑する。
「ですので、僕は何も言わなかったのです。」
「さっきジーナちゃんとのお茶会でスミスがジーナちゃんに『来てくれてありがとう』と言っていたのでそんな話になりました。」
「うむ。
良い人材が増える事は良い事じゃの。」
「それにスミスったらジーナちゃんと目が合うと赤くなって。」
アリスがクスクス笑う。
「んん?スミス!?」
エルヴィス爺さんは嬉しそうに前のめりになる。
「ちょ!違いますよ!?ジーナさんは綺麗ですけど、そういった感情はありませんよ?」
「はは、スミス坊ちゃんもそんなお年なんですね。」
大人たちはスミスの順調な成長に嬉しそうに話を盛り上げていくのだった。
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「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんのいつもの言葉と共に皆が書斎を出ていき、各々の寝室に戻った。
アリスとチビッ子達は先に風呂に入り、武雄は待っている間に少し厨房に行っていたが、すぐに戻って来てアリス達が上がるのを書斎で待っていて、アリスが上がるとアリスの髪を乾かすのと自身の風呂を終え、ミア達チビッ子を武雄の書斎に寝かしつけたりと割と忙しく過ごしていた。
そして今は武雄とアリスはベッドでゴロゴロしながらマッタリしている。
「長旅でしたね~。
アリスお嬢様、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。
タケオ様、明日からまた忙しい日々が始まりそうですね。」
「そうですね。
ウスターソースも作って貰わないといけないし、カレーも料理長に作り方を教えないといけないでしょうね。」
「カレーかぁ。
またあの美味しいのを食べれる日がくるのですね?」
「ええ、近日中には・・・もしかしたら明日になるかもしれませんね。」
武雄は苦笑しながら言う。
「はぁ・・・タケオ様が来る前では考えられない程、食事が楽しみになっています。」
「そうなのですか?」
「はい。ここまでいろいろな料理はなかったですし、ほとんどはトマトを使った料理ばかりでしたので。」
「なるほど。
もっと違った味が欲しいのですね?」
「んー・・・そういう訳ではないですけど・・・
とにかくタケオ様の作り出す料理は味が新鮮なんですよ。
もっと作ってください。」
アリスがホクホク顔を武雄に向けてくる。
「そうですね。
小豆が届きましたしね。」
「そう言えば王都で買ったのでしたか?
どんな料理なのですか?」
「煮込んで煮込んで砂糖を入れてさらに煮込む『あんこ』というお菓子なんですけどね。」
「ん~・・・?
よくわからないですね。
美味しいのですか?」
「私は好きですよ。
ですが、好き好きは個人差がありますからね・・・一度、実際に食べてから考えてみても良いですね。」
武雄は朗らかに言う。
「んー・・・王都に行く前に作れますか?」
「努力はしましょう。」
「楽しみです♪」
武雄とアリスは朗らかに寝る前の歓談をするのだった。
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ヴィクターとジーナは次期当主夫妻用の部屋でのんびりとしていた。
「・・・何だかこの部屋は違いますね?」
ジーナが部屋内を見回しながら言ってくる。
「そうだな・・・屋敷の大きさからそこまで部屋数がないと考えられるが、それでもこの大きさだからな・・・
もしかしたらアリス様のご両親の部屋かもしれないな。」
「えーっと・・・確かアリス様のご両親はお亡くなりになっていたかと思います。」
「うむ、次期当主の部屋なのだろう。」
「・・・普通ならスミス様の部屋なのでは?」
「んー・・・まだ成人前だから部屋が違うのかもしれないな。
確か主とアリス様の部屋は屋敷の反対側だったな。」
「そうですね。
という事は・・・やはり将来はスミス様の部屋なのですね?」
「だな。
今しか泊ることが出来ないだろう。
それに・・・ジーナ、この柔らかさのベッドは当分は味わえないと思うぞ?」
「堪能します♪」
「ふふ、そうだな。
ジーナ、ゆっくり休みなさい。」
「はい、お父さま。」
ヴィクター達も束の間の休息を楽しむのだった。
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