第569話 エルヴィス家の報告会6。(精霊&幻想種。)
「精霊なのじゃが・・・
テイラー、スズネ、そしてアリスか・・・一気にこの街に3人も精霊魔法師が居ることになったの。」
「異例ですね。」
「私も魔法師扱いなのですか?」
アリスが聞いてくる。
「一般的には精霊を使役し、魔法を使う者を指すからの。
まぁ、アリスは鮮紅だから誰も違和感は持たないだろうし、テイラーに至ってはニオを表には出していないしの。
あのスズネとテトはどうなのかの?」
「さて・・・どうでしょうか?」
エルヴィス爺さんとフレデリックが悩む。
「そもそもの話を聞かせて欲しいのですが。
精霊は隠さないといけないのでしょうか?」
「ふむ・・・そうじゃの・・・
人目から隠さないといけないという法があるわけではないが、精霊を連れていると希少性や力を求めて不埒な輩が近寄ってくると考えると防犯上隠すのが一般的じゃの。
タケオもその点はわかっているじゃろ?」
「はい。
ですが、ニオやテト、スーは精霊だから隠れられますがミアやクゥは隠せません。
ミアについては危ないと感じれば胸ポケットに避難させられますがクゥは・・・」
「タケオ、どのように説明したのかの?」
「ミアと一緒です。
基本は私達の目の届く範囲に居る事。万が一の際は上空に逃げ、私達に報告する事。
そして勝手な行動は慎み、何かを感じたら報告する事とは教えてはいますが。
実際はどうなることやら・・・精霊もドラゴンも人の手に余るのでしょうね。」
武雄がため息を漏らす。
「きゅ♪」
「チュン♪」
「主、2人とも『ちゃんと言う事は聞くよ~』との事です。」
「ええ、聞いて貰わないと人間社会では生活が出来ませんからね。
貴方達が悪さをすればその責は貴方達と私達施政者側が取らされます。
私達は放逐される可能性すらありますからね?
そうならない為にはちゃんとした良識を元に行動しないといけません。」
「きゅ!」
「チュン!」
2人は頷く。
「あの、タケオ様、クゥはわかるのですが、スーはどんな精霊なのですか?」
スミスが聞いてくる。
「ん?スミス坊ちゃん、気になりますか?」
「はい。」
スミスは頷く。
「私も宗教家ではないので詳しくは知りません。
まぁ朱雀というのは私が居た所では街の南・・・あれ東でしたか?」
「チュン。」
「主、南だそうです。」
「南の守護神として祀られていました。
テトは会った際に神と言っていましたが・・・スー、もしかして精霊とは神話の登場物なのですか?」
「・・・チュチュン?」
「主、ほとんどそうらしいです。」
「スミス坊ちゃん、朱雀とは私が知っているだけで鳳凰、不死鳥、フェニックスと多少の能力が違いますが、いろいろな呼び名で語られる神獣です。」
「シンジュウ?」
「そうですね・・・物語上の登場物です。ニオもテトも各々の物語では人々を救うもしくは守る為に壮大な魔法を使うとされています。
精霊契約というのは概ねこの物語の人物や物を具現化し、使役する行為なのでしょう。
そして朱雀やフェニックス等は火の化身という共通項がありますね。
スー、大まかには合っていますか?」
「チュン。」
スーが頷く。
「火の化身・・・凄そうですね。」
「チュン!」
スーが胸を張る。
「スーは基本的には火の鳥になれるのですか?」
「チュン。」
スーが頷く。
「スー、変身するならアリスお嬢様の指示で成りなさい?
周りが火事になったら大変ですからね?」
「チュン。」
スーが頷く。
「タケオ様、テトはどういった精霊なのですか?」
スミスが再び聞いてくる。
「んー・・・テトの出身の物語を知らないのですよね。
確か本から出てきた時に『星と慈雨の神』と言っていましたね。」
「えーっと・・・雨を降らせる事が主に出来て水系の魔法が使えると言っていましたよね?」
アリスも思い出しながら言ってくる。
「王都の反応はどうであった?」
「特には・・・確か慈雨という言葉で脅威はないとしていましたね。」
アリスが言う。
「そうですね。慈雨は慈悲の雨、恵みの雨という意味でしょうが・・・」
「ふむ・・・慈悲の雨かの・・・」
「少し嫌な響きですね。」
武雄とエルヴィス爺さんとフレデリックが難しい顔をさせて悩む。
「え?何が問題なのですか?
恵みの雨なら脅威はなさそうですが。」
スミスが聞いてくる。
「慈悲という事は人々がそもそも困っているという事じゃの。」
「その苦しみを取る為の雨という事は・・・タケオ様。」
「はい。まともじゃないでしょうね。」
「つまり?」
スミスが「どういう事?」と聞いてくる。
「雨が降ることで人々の苦しみが取れる。
私的には干ばつか元々雨季と乾期が分かれていたかだと思いますが、まぁ、テトが居た場所はどちらにしても雨が少ない所や水量が少ない川周辺と考えられるでしょう。
そんな所で人々が救われるぐらいの雨となると・・・使い方次第では街を破壊出来ると考えます。」
「え!?」
スミスが驚く。
「うむ、まさに精霊魔法特有の大規模な災害じゃの。」
「エルヴィスさん、知っているのですか?」
「ん?昔の、王立学院の生徒の時に一度、精霊魔法師の実力を見たことがあるの。
あの時は何が原因だったかのぉ・・・精霊魔法師の印象しか覚えておらん。
とりあえず凄まじかったのを覚えておるの。」
「なるほど。
ですが、話をしてみるとニオもテトもスーも基本自分からは仕掛けなさそうですので、あまり気にしなくても良いかもしれません。」
「それだけ街中が平穏無事でいてくれたら良いのぉ。」
「そうですね。」
「とりあえず精霊たちやクゥについては現状観察じゃの。」
「はい、畏まりました。」
エルヴィス爺さんの言葉に皆が頷くのだった。
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