第565話 エルヴィス家の報告会2。(王立学院へのジーナを派遣?)
「少し話が逸れたの。
お付の話だったかの。」
「はい。
それで王都側の条件が『ジーナが行きたいと願った場合に限る』だそうです。」
「ふむ。
ジーナ側の待遇はどうじゃ?」
「お付の待遇としては貴族の子弟の部屋近くに個室を用意され、主人の世話をする事が許可されるそうです。」
「ふむ・・・執事やメイドみたいな者じゃの?」
「はい。
そして警護者という側面もあるが、同年代くらいの子供を用意するのが普通とのことです。」
「警護者のぉ・・・」
エルヴィス爺さんが腕を組んで悩む。
「ジーナ、どうですか?入ってみたいですか?」
「入る必要性をあまり感じません・・・それにご主人様と数年も会えないのですよね?」
その言葉を武雄が聞き「ヴィクターとは会えないのは良いの?」と思う。
「いや、全くは会えない訳ではないですね。
スミス坊ちゃんが帰省する際には一緒に戻ってきますし、私も年に数回は王都にあそ・・・報告会に行きますし・・・ヴィクターはどう思いますか?」
「私としては魔王国に無い学院という学び舎の制度には興味があります。
ジーナが望み主が了承して頂けるなら行ってみるのも良いかとは思います。
ですが・・・主が言ってた前例がないという所が引っかかるかと。」
「ええ、そこは王都の幹部方が相当気にしています。」
「そういえばさっきも言っておったの。幹部とは誰じゃ?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「はい、王家と貴族会議と各局長です。
話を聞く限り全局長がジーナに関しては好意的に受け入れそうです。
そして王立学院側の受け入れ態勢が来年は良いそうです。」
「ん?どういう事じゃ?」
「なんでも最高学年に第2皇子の長女のエイミー殿下が居て、同学年にアズパール大公の孫娘のグレース殿下、さらには主家のエルヴィス家のスミス坊っちゃん、そして推薦者が私とアリスお嬢様という誰もが手を出せないであろう状況になると。」
「ふむ・・・タケオとアリスの推薦がある時点で文官達はある程度の手を打ってくるかもしれんの。」
「そうですね。」
フレデリックも頷く。
「手を打つ?」
スミスが聞いてくる。
「うむ、タケオとアリスの2人組は強烈な印象を王都側に投げているからの。
万が一、スミスとジーナに何かあればこの2人が王都に乗込んでくる。
王都の第2騎士団全隊員を相手に引かない相手じゃぞ?
文官達の子弟に指令が出されるはずじゃ。」
「はい、私もそう思います。
学院内の動向の監視や間接的ないじめ防止策が取られるはずです。」
「そうなんですね。」
「スミス、お主も覚悟するのじゃ。
万が一問題を起こしたらわしではなくタケオとアリスを送り込むからの。」
「え?」
スミスが驚く。
「あぁ、それは良いですね。」
アリスも頷く。
「・・・悪さなんてしませんよ?」
スミスが拗ねる。
「ええ、今から『悪さします』なんて言う訳ないですもんね。」
武雄が苦笑する。
「いや!タケオ様!?そういう事ではないですよ!?」
スミスが慌てる。
「ふふ、冗談ですよ。
それにジーナ、別にスミス坊ちゃんの卒業までいる必要はないですよ?
ジーナが望めば1年で帰って来ても良いですからね?」
「「え!?」」
スミスとアリスが驚く。
「ん?どうしましたか?」
「いえ、卒業させないのですか?」
アリスが聞いてくる。
「別に私はジーナを文官の勉学の為に入れさせる気はありません。
若い年代の人間の施政者側を見させたいだけですから。
1年くらい居れば大体わかるのではないですか?
それにそもそもお付なんですから毎年変わっても良いのでしょう?
お付も3年通わなくてはいけないとは言われていませんが?」
「ふむ、タケオが何か面白い事を考えているの。
それにフレデリック、これからスミスのお付の選定は出来るかの?」
「そうですね・・・少し難しいですね。
執事経験やメイド経験があるスミス様と同年代の者はおりません。
しっかりとした教育をするなら・・・そうですね、貴族の傍に置くというなら最低9か月は頂きたいです。」
「えーっと・・・申し訳ありません、私は9か月は頂かなくて良いのでしょうか?」
ジーナがフレデリックに聞いてくる。
「はい、魔王国という所で多少の習慣の違いはあるでしょうが、元貴族ですので素養が我々とは違います。
あとは気配りや立ち方、物の考え方、配膳の方法程度をお教えすれば良いと考えています。
ですので・・・スミス様が入学するまでの3か月あれば概ね教育は完了するとは思っています。」
「ふむ、我らとしてもジーナが最適なのかの・・・
それにのジーナ、わしとしてはスミスの護衛という所が気になるのじゃ。」
「伯爵様、護衛ですか?」
「うむ、獣人は人間よりも高位じゃ。
身体能力自体が違うからの。ならスミスの同年代が集まる場にいても遜色がないジーナを護衛者として入れられればわしとしては学院内ではスミスに万が一の事があっても対応できるだろうと思っておる。
それに何でわざわざ近年になってお付の制度を採用したのか・・・そこが気になるの。」
「そもそもの経緯ですね。」
武雄が聞いてくる。
「うむ。
だが、ジーナ、わしはこの手の命令はしたくないし、決めるのはタケオじゃ。
なので・・・そうじゃの・・・済まぬがタケオ達が王都に出発する前までに決めてくれるかの。」
「もし私が断ったらどうされるのですか?」
「フレデリック、どうしようかの?」
「総監部で少し考えます。」
「そうじゃの・・・」
エルヴィス爺さんとフレデリックがため息をつく。
「ジーナ、私も強制はしません。
行きたくないと思うなら諦めますし、1年程度なら行っても良いというならそれも手を打ちましょう。」
「ご主人様やお父さまは行った方が良いと思うのですよね?」
ジーナが聞いてくる。
「陛下達も言っていましたが来年はこちらも向こうも条件が良いという所もそうなのですが、ジーナにはより多くの人間の状況を見てきて欲しいですね。
いろんな人と関わりを持って、国の違いや出身地の違いでどう考えが変わっているのか。
また魔王国で育ったからこそアズパール王国を客観的に見れるし、スミス坊ちゃんの相談相手としても良いでしょう。
私やアリスお嬢様、ヴィクターではもう王立学院には入れませんから。」
「そうですね。
私も主の言葉通り、今しか経験が出来ないのであれば経験してきた方が良いと思います。
他種族なので多少のイジメは仕方ありませんが、条件が良い内に経験させたいです。」
ヴィクターも頷く。
「少し考えてみます。」
ジーナはそう言って考え始めるのだった。
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