第560話 52日目 武雄とアリスの就寝前の雑談と陛下の考え。
局長達と話し終わった武雄とアリスとチビッ子達は宿に戻って来ていた。
夕飯も簡単にお肉とスープを皆で取り明日も早いからと早々に解散になっていた。
明日の朝の用意はサリタがしており武雄は昼用にシイタケの出汁の準備と一緒に入れる野菜の確認と昼用のパンを確認するだけに終わっていた。
今はチビッ子達も寝てしまった為、アリスとのんびりとお茶をしている。
「参加できて良かったですね、タケオ様。」
「はい、ジャガイモですね。」
「何を作りますか?コロッケですか?」
「なるほど、コロッケという選択肢もありますね。」
「あれは皆に喜ばれると思いますが。」
「そうですね。
私的には前に言ったフライドポテトを作るのが早くて簡単で低価格で提供出来ると思うんですよね。
それに味はトマトとマヨネーズを合わせた物を上からかければ目新しさもあるでしょう。
紙の袋に入れてあげれば好きな場所で食べれるから持ち運びも便利そうですし。」
「それも良いですね♪」
「何を作るかはエルヴィスさん達と話ながら決めた方が良いかもしれませんね。」
「はい!美味しいものを作ってくださいね♪」
「ええ。」
武雄はそう朗らかに返事をしながら「たぶんアリスお嬢様は売り子さんかなぁ」と思うのだった。
「それにしても皆さん怪我も病気もなくて助かりますね。」
「ん?怪我も病気もケアで治せるのでしょう?」
「はい、早い段階ではそうですね。
1日以上経ったものは完全には治癒は出来ませんから早めの治療がお勧めです。」
「なるほど。」
「それに普通の旅では魔法師が同行するのは珍しいので早期の治療は難しいのです。」
「そうなのですね。
では明日は朝から皆にケアをかけますかね。」
「それはタケオ様だから気軽に出来る事ですけどね。
体調管理も上司の役目でしょうか?」
「部下全員には出来ないでしょうね。
数が増えていけばケアだけで1日が終わってしまいますから。
今回の旅の人数くらいが精一杯でしょう。」
「それもそうですね。
あとは規則正しい生活をするしかないですよね。」
「ええ。じゃあ、私達も寝ますか。」
「はい。」
武雄も就寝するのだった。
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魔王国のとある寝室にて。
パッと見はどちらも人間に見える2名が話していた。
一方が座ってのんびりとした体勢をとり、もう一方は直立不動で立っていた。
「陛下、どうなさるので?」
「お前はいつも我の寝る前の飲酒を邪魔するな。
で?」
「次期王の選定方法です。」
「先日幹部連中の前で言ったが?忘れたのか?」
「本気だったのですか。
では、来年1月から9月末までに魔王国に貢献した度合いを観察し、他者から推薦された中で上位3名を10月と11月の2回王軍幹部と各領主が投票し最多得票数の者を次期国王とするのですね?」
「そうだ。」
「何も基準が在りませんが?」
「だな。我からすればだからこそなんだがな。
ドラゴンを退治出来る武力か?他国へ進攻し領土拡張する統率力か?領内の経済力を上げ納税額を増加させる政治力か?他者を押し退ける知略か?
何も基準は用意しない・・・成りたい者が自らの実績を声高々に報告し、皆を納得させろ。
それが本来の魔王国の姿だろう?」
「・・・幹部達にはそう伝えます。
それと先ほど報告が上がってきたのですが。」
「ん。」
「ウィリプ連合国は順調に推移していると。」
「・・・」
ヴァレーリが目を細める。
「陛下、どういたしましょうか。」
「・・・報告だけだろう?カトランダ帝国にそれとなく伝えておけ。
どうせどちらも走り出しているのだ。もう止められないだろう。」
「はっ!
・・・陛下はやはり復讐を取りますか。」
「お前は知っているだろう?我はあの国出身の奴隷だ。
ヴァンパイアに買われ改造され今に至っているが・・・これを恨まずにはおけんだろう。
逆恨みなのはわかるが・・・こればっかりは自制が利きそうにない。」
「陛下は強大な力を手に入れております。」
「ふん、なりたくてなったわけではない。
それに一緒に買われた19人は改造に耐えきれずに死んださ。
我が唯一の成功例・・・史上最強のヴァンパイアなんだと。
まったく・・・ごてごて体に入れられたからな。
半年は痙攣、嘔吐、発汗、激しい頭痛、体の内側で何者かが這っている感覚、幻聴、幻覚それが毎日だ。
さらに半年は魔力の急激増大で体の膨張感、感覚の喪失、幻聴・・・良く耐えたものだ・・・」
「相変わらず美味しそうな心をされておりますね。」
「お前、それは隠しておけよ?・・・まぁ今は2人だけだし、我の側近なのだから良いが。
そんなこんなでウィリプ連合国には舞台の最前列から退場して貰おう。」
「陛下自らされないので?」
「我が乗り込んだら国を丸々壊滅させてしまうからな。
残念ながら我は国を滅ぼしたいのではない・・・それに国としてみれば大事な商売相手だ。
だが、いささか国が大きいので小さくなって貰いたいだけなのだよ。
苦渋と恥辱と無力さにまみれてだがな。」
「陛下、私が言うのもなんですが、性格がひん曲がっていますね。」
「だからお前と契約できたんだがな?」
「ええ、まさか書物を読んで呼ばれるのが普通なのに書物を体内に入れて呼ぶ馬鹿が居るとは・・・」
「我を作った馬鹿に言ってくれ。」
「まぁ事の顛末は知っていますけど。
ヴァンパイアは馬鹿なのですか?」
「あぁ、馬鹿だな。
最強の者を自ら作り、その者に殺される事を望むような馬鹿だ。」
ヴァレーリはため息をつく。
「では陛下、ウィリプ連合国とカトランダ帝国への支援は今まで通りと。」
「あぁ、それで良い。
・・・アズパール王国には傍迷惑な話なんだがな。
こればっかりはすまないと思うが・・・」
「まぁ、そこは致し方ないでしょう。
アズパール王国と本気の戦闘は陛下は望まれていませんが・・・どう推移するかはしてみないとわからないでしょう。」
「そうだな。
それにその頃は我は流浪の旅の真っ最中か・・・
ウィリプ連合国には行かないでおくか。遠くから観戦するかな。
タローマティ、我は寝るぞ。」
「はい、おやすみなさい。
我が主。」
魔王国のとある寝室の灯が消えるのだった。
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