第558話 局長達との雑談1。(挨拶と西町局長の悩み。)
武雄達は局長執務室と書かれている部屋の前で止まり、受付の女性が扉をノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
中には堂々とした出で立ちの西町局長と北町局長が起立して待っていた。
「局長、アリス様とキタミザト様をお連れいたしました。」
「はい、ご苦労様です。
アリス様、キタミザト様、ようこそお出で下さいました。」
「西町局長、突然来てすみません。」
アリスがそう言い武雄が会釈する。
「いえいえ。
さ、立ち話もなんですので、お座りになってください。
あと、お茶をお願いできますかね?」
「はい、畏まりました。」
受付の女性が退出して行く。
アリスと武雄は局長が勧めたソファに座ると局長達も座るのだった。
「まずはキタミザト様は子爵の叙爵、アリス様は騎士の叙爵、おめでとうございます。」
西町局長の言葉に北町局長も頭を下げる。
「王都に行ったらいきなりなっていましたよ。」
「ですね。」
武雄とアリスが苦笑する。
「その他にもいろいろとあったと伯爵様から通達が局長達にはされています。」
北町局長が言ってくる。
「どこまでですか?」
アリスが聞いてくる。
「王都でのイザコザが3件とキタミザト様が研究所の所長になる件、さらにはキタミザト様がカトランダ帝国に行かれて工房の方々をお連れする事や執事の事ですね。」
「なるほど、ほぼ全てですね。」
「随分濃い内容の旅だったようですね。」
「全部成り行きなんですけどね。」
武雄がため息をつく。
「どちらにしてもお爺さまに報告してから皆さんには報告がいくと思いますね。」
「わかりました。
で、その・・・キタミザト様が抱えているのは・・・ドラゴンですか?」
「ええ、この子はクゥと言います。旅の途中で出会いましてね。
今住み家を探しているのでとりあえずエルヴィス邸に来ることになりました。」
「きゅ♪」
武雄の言葉にクゥが手を上げて挨拶をする。
「はぁ・・・随分と大人しいのですね・・・ドラゴンは初めて見ました。
初めまして、クゥ殿。私はこの町の局長・・・取りまとめをしています。」
「私はこの領地の北側の町の取りまとめをしてます。」
局長2人がクゥに挨拶をする。
「きゅ。」
「よろしくだそうです。」
ミアが武雄の内ポケットから顔を出して通訳をする。
「ミア・・・殿でしたか?
よろしくお願いします。」
局長2人がミアに挨拶をする。
「こちらこそよろしくお願いします。」
ミアが挨拶をする。
「私達は帰路の途中なので西町局長に挨拶に来たのですけど。
北町局長はどうしてここに?」
武雄が不思議そうな顔をさせて聞いてくる。
「例の特産品について打ち合わせです。」
「北町の特産品は決まりましたか?」
「キタミザト様、ウォルトウィスキーは特産品なのでしょうか・・・」
「んー・・・特産品のようでもありますが・・・
ワイナリーに行っても買える訳でもないですからね。
エルヴィス領という大枠では特産品ですが、北町という枠では違うかもしれませんね。」
「やはりそうですか・・・
ですので、何か良い案がないか西町局長に相談に来たらたまたまキタミザト様方が帰って来るという事を聞きましたので、一緒に待っていました。」
「はは、すみません、いつも唐突で。」
「「いえいえ。」」
「西町では決まったのですか?」
アリスが聞いてくる。
「その・・・キタミザト様からの助言で野菜の塩漬けを作ってみたのですが。」
「はい、簡単だと思うのですが。」
「とても簡単すぎて数十種類出来そうな雰囲気があるのです。
なので、どれが良いのか全く分からなくて。」
「なるほど。
ちなみにどんな塩漬けを考えたのですか?」
「はい。まずは塩に漬ける、塩で揉む、水を入れて塩水に漬ける、風味を出す為に柑橘類を一緒に入れるの4つのやり方で、野菜をキュウリ、ナス、トマト、葉物野菜、キャベツ、大根で考えてみました。」
「この時点で24種類ですか?」
アリスが驚く。
「そうですね。
さらには塩の分量や漬ける時間によっても味が変わるでしょうから・・・実際は100くらいあってもおかしくはないですね。」
武雄が補足する。
「はい・・・考えれば考えるほど多種多様になっていくのです。」
「確かにそれは凄い量になりますね。」
西町局長の悩みを聞き皆が頷く。
「キタミザト様、どうすれば良いのでしょうか?」
「前にも言いましたが、各村で一番作っていて適度に出荷されない余剰野菜が塩漬けに適しているのです。
各村から一品ずつ瓶詰を作って貰い、町で数個まとめて箱詰めして売り出しても面白いとは言いました。
ですが、何でもかんでも作っても意味がありません。
まずは局長や文官の方々、そして町や村の方々が『これなら毎日食べられる』という塩加減を1つ決めてはいかがでしょうか?
出荷だけを見るのではなく、生活に根差した塩漬けをまずは考え、それを村の特産品として町で取りまとめていけば良いと思います。
無理に特産品祭りに合わせる必要はないでしょう。」
「はぁ・・・一応、今回来られると聞いたのでご用意はしたのですが・・・」
「「食べます!」」
武雄とアリスが即答するのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




