第555話 姉ドラゴンとの話し合い。
前回よりも少し時間がかかったが、森の上空を一旦姉ドラゴンが高速で過ぎてからレッドドラゴンがゆっくりとクゥの前に着地をする。
その姿は相変わらず西洋竜ドラゴンそのものだった。
初対面の面々は息を飲みながら緊張している。
「きゅ!」
「グルルゥ。」
「きゅ。きゅ。」
「グルゥ。」
「きゅ?」
「グルルルゥ。」
「きゅ♪」
「主、姉ドラゴンが行く事を認めました。」
「相変わらずなんですね。」
武雄がため息をつく。
「グルゥ。」
レッドドラゴンがミアに顔を向け鳴く。
「・・・姉ドラゴンが主達と話がしたいそうです。」
≪以下。武雄達とドラゴンの会話(訳:ミア、テト)≫
「話は聞きました。
クゥを王都まで連れて行ってくれてありがとう。」
「いえ、その前に先の話し合いの際に大変失礼な事をして申し訳ありませんでした。」
「いいえ。
貴方は私が約束を守るか試し、私は貴方が武力に耐えれるか試した。
それだけでしょう?」
「そう言って頂けるとありがたいです。
まぁ前回の非礼の侘びとこの国の土産という所で赤ワインを樽で1個持ってきましたので飲んでください。」
「あら?そう?
酒なんて町に潜入した時以来ですね。
ありがたく貰っておきましょう。
それでクゥから聞きましたが、今度はあのゴブリン達が突撃した街に行くそうですね?」
「はい。
それについても認めるのでしょうか?」
「ええ。
前回も言いましたが、定住の地を自ら探す為にクゥが決めましたから私はそれを追認するだけです。
また試しますか?」
「いえ、その必要はありません。
前回のやり取りのみで十分です。
それにクゥはこの旅でちゃんと私達の言葉を優先的に対処してくれました。
何かあっても暴れたりもせずにまずは我慢をしてやり過ごす事もしてくれもしました。
クゥを見てドラゴン全体を見てしまうのは早計かもしれませんが、私はドラゴンは争いを好む種族ではないのだろうと考えます。
それを踏まえて物語に出てくるドラゴンを見た場合、挑まれたから場当たり的に対処したら被害が拡大し、先住民達と和解できずに長年対立したのではないかと思います。」
「ふむ、概ね私達の感覚はそれですね。」
「ですので今回意思疎通が出来るのであれば大した問題にはならないだろうと思います。」
「そう。今回、貴方達に任せて正解だったのかもしれませんね。
・・・それで私に聞きたい事があるそうですね?」
「はい。
前回のお話でクゥは現在130歳前後で今後成獣に体格が成長すると言われていたのですが、具体的には成獣になるまでどのくらいの年月がかかる見込みでしょうか。」
「そうですね・・・私の経験則で言えば150年~190年にかけて体格が徐々に大きくなりますね。」
「失礼とは思いますが、お姉さんはおいくつで?」
「私は今310年です。そろそろ卵を産む時期なので良く飛ぶようにしています。
まぁ軽い運動をしています。この国は基本的に私へ攻撃をしてこないのでのんびりさせて貰っていますがね。」
「そうでしたか。何か必要な事はありますか?
私ではなかなか大規模な協力はできないでしょうが・・・国に掛け合うことぐらいは出来ますよ。」
「そうですね・・・今の所ないですかね。
あ、産む時にクゥを寄こして貰えますか?周辺警護をして貰いたいので。」
「きゅ。」
クゥは姉ドラゴンの要請に頷く。
「わかりました。
その際は何かしらの方法で伝えてくれればそちらに行かせます。」
「ええ、お願いします。
それとこれから行く街用のクゥへの条件は前回と同じで良いです。
クゥ、この人間達の言う事はちゃんと聞きなさいね。」
「きゅ~。」
クゥが頷く。
「ドラゴンがこういった長期的に人間社会で生活をするというのは例があるのでしょうか?」
「私が知る限りではないですね。
ある意味でクゥが先例になるかと。
それにしても同行者が多くなりましたね。
人間に魔物に精霊・・・ん?その精霊は会ったことありますかね。」
「・・・チュン?・・・」
スー助が弱々しく言う。
「あぁ、あの時のですか。
再戦します?」
「・・・チュン。」
スーがやる気無さそうに鳴く。
「そう、やらないの。
戦いは適度な運動になるのだけど。」
姉ドラゴンがつまらなそうな顔をする。
武雄はその呟きを聞いて「最強種にかかれば戦闘も軽い運動なのかぁ」と思う。
「さてと、住み家に帰ります。
貴方・・・何と言いますか?」
「タケオ・キタミザトと言います。」
「そうですか・・・覚えられていたら覚えておきましょう。
あ、そうそう。クゥ、母さんが旅を始めたからその内会いに行くと言っていましたよ?」
「きゅ?」
「ええ。人化の魔法が出来るようになったから旅という人間がする物を体験するとか言っていました。
今度、どこに居るのか伝えておきます。」
「きゅ・・・きゅ?」
「まぁ、好きに対応しなさい。
ではタケオ、いつか会いましょう。」
レッドドラゴンが飛び去ってしまう。
「まぁ、さっさと帰っていきましたね。」
武雄が姉ドラゴンが飛び去った方を見ながら呟く。
「大らかなんだか無頓着なんだか・・・」
アリスも感想を言う。
「きゅ♪」
クゥが武雄に手をかざす。
「主、クゥが今後もよろしくだそうです。」
「はい、こちらこそよろしく。
クゥ、王都よりはのんびりできますが、あまり逸脱した生活はしてはダメですからね?」
「きゅ。」
クゥが頷くのだった。
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