第551話 46日目 エルヴィス邸に向け王都出発。
早朝の王都城門にて。
武雄達一行は出立の最終確認をしていた。
「「お待ちしていました。」」
アーキンとブルックが旅支度でやって来る。
その後ろからアンダーセンも見送りに来ていた。
「?何でいるのですか?見送りですか?」
「いえ?一緒にエルヴィス邸がある街まで行きますよ。
アンダーセン隊長の指示です。」
アーキンが言うとアンダーセンが頷く。
「王都でゆっくりしていても良いのですけど?」
「いや・・・来年4月からの研究所の本格始動前にアニータとミルコの新人教育を終わらせておくことが決まりまして。」
アーキンが苦笑する。
「なるほど、2人が先行してくるのですか。」
「はい。あと実際に部屋の候補も見て感想を言う事になっています。
資料だけではわからないだろうという事なので。」
ブルックが付け足す。
「わかりました。
アニータ、ミルコ、今からアーキンさんとブルックさんの下に付けます。
指示に従いなさい。」
「「わかりました。」」
エルフの2人は頷く。
「とりあえず、何かあったら私達に従ってくれれば良いわ。
それに本格的な教育はエルヴィス邸がある街に行ってからになるからね。」
ブルックが2人に諭す。
「わかりました。」
アニータが言い、ミルコが頷く。
「はぁ・・・エルフは子供の時から可愛いのね~。」
ブルックがほのぼのし出す。
アーキンがそんなブルックを見ながら苦笑するのだった。
「さてと、忘れ物はないですかね?」
武雄が皆を見回す。
「アンダーセンさん、すみませんが、これをエルヴィス伯爵宛に送って頂けますか?」
アリスがアンダーセンに封筒を渡す。
「これは?」
「これから家に向かいますという連絡です。」
「なるほど、わかりました。」
アンダーセンが頷く。
「キタミザト様、準備出来ました。」
工房の面々が頷く。
「はい。じゃあ、行きましょうか。」
「出立します!」
ブルックの号令で武雄達は王都からエルヴィス領に向かうのだった。
------------------------
王都の城壁上で兵士に護衛された一団が見送っていた。
「何も言わずに行っちゃったわね。」
「一時の別れでも別れというのは辛いわね。」
「・・・アルマ殿下、レイラ殿下、何で早朝から起きれるのですか?」
エリカが眠そうにしながら言ってくる。
「エリカさんみたいに夜更かししていないからよ。」
アルマが言ってくる。
「気が付いていたのですか?」
「いや、あれだけ執務室と自室を行き来すればね。
それに普通に報告もされたわよ。」
レイラが苦笑する。
「で?ちゃんとタケオさんに会えた?」
アルマが唐突に聞く。
「昨日、会いに行ったのを知っていたのですか?」
「ええ、なんとなくね。
相談役同士話せた?」
「はい、有意義な話をしてきました。」
「そぉ。
ちゃんと精査して提案をしてくれるなら良いわ。」
「私達ではなかなか聞けないことも聞いてくれると助かるかな?」
「聞けない・・・あぁ、王都の文官達ですか?」
「わかってくれて助かるわ。
まぁ国は違えど同じような状況なのかしら?
そういうわけで今はなかなか表立って話を聞きにはいけないのよね。
それに私達は『こんなに出来ますよ』という宣伝もしないといけないし。
領地に行けばもう少し他の貴族達にも会いに行けると思うんだけどね。」
「そうですか。
とりあえず、昨日タケオさんに提案された事をまとめます。」
「タケオさんの事だから奇抜なんだろうけど・・・
修正するには皆と議論しないといけないから早々に出して貰えるかしら?」
「今日の夕方までには概要は出せるかと思います。
詳細な試算は少しかかるかと・・・」
「概要の段階で1回私達に説明して貰えるかしらね。
方向が合っているならそのまま試算に移って貰うわ。」
「はい、わかりました。
そう言えばウィリアム殿下はどうされましたか?」
「「寝てるわ。」」
「はぁ。」
「ウィリアムは領地の事だけでなく王城の仕事もあるからね。
それに昨日の夕方から新たに王城の騎士団の人事系の仕事が舞い込んだからね。
夕飯の時に眠そうだったわ。」
「舞い込んで来たのですか?」
「ええ、お義父さまからね。
『良い訓練になるだろう』と言われてね。
今膨大な量の資料に囲まれているわ。」
「あぁ、執務室のあの資料の山はそういう事ですか。
タケオさんの所から戻ってきて執務室に行ったら新たな山が出来ていました。」
「まぁ、今回の人事異動のうち半分は私達が原因だからね。
ウィリアムも断れなかったのよ。」
アルマが苦笑する。
「さてと、戻って朝食にしますか。
今日は何ですかね?」
「あ、料理長がタケオさんのレシピから早速何か作るみたいな事を昨日言っていたわ。」
「え?タケオさんのレシピに朝に合うのありましたかね?」
エリカが首を捻る。
「行ってみればわかるでしょう♪」
レイラが楽しそうに言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




