第546話 王都での夕飯中。(今後の行程と工房に缶詰の説明。)
「お肉があっさりしてますねぇ。」
「はぁ、これが幸せなのよね~。」
「明日、わしは死ぬかもしれん。」
「爺ちゃん・・・その言葉怖いから・・・
はぁ、キタミザト様の料理はホント美味しいなぁ。」
「これはアズパール王国に来て良かったと思うな。」
等々皆が満足していた。
今回のローストビーフは肉の焼き汁で玉ねぎを炒め、トマトとリンゴのすり身、赤ワイン少々とすりおろしニンニクを煮詰めながら作ったソースとリンゴジャム、そしてウスターソースを用意していた。
「タケオ様。明日はこの肉が朝から出るのですか?」
「いいえ。明日の朝はタマゴサンドと野菜のサンドイッチを予定していますが・・・野菜系は少し水っぽくなるかもしれませんね。まぁその辺はご愛敬で。
この肉は明日の移動中の昼用でしょうかね。
明日は早めに出て王都の東の町まで行きます。
さらに次の日が村、次の日が1日野宿、エルヴィス領に入って村、村、西の町、村、エルヴィス邸ですかね。」
「8日もかかるのですか・・・」
「いえ実際は王都と東の町の間に村があるのでそこで1日使うでしょうから本来は馬車では9日ですね。
馬だと・・・アリスお嬢様、標準では6日でしたか?」
「はい。私とタケオ様は5日で来ましたけどね。」
「馬車は荷物が多いと楽ですけど移動時間がかかるので大変ですよね。」
「移動手段は何も変えられないですからね~。」
ベインズが呟く。
「武雄さん、鉄道は出来るのですか?」
鈴音が聞いてくる。
「まぁ私達ならそこに行きつきますよね・・・
鉄道は線路の設置と維持が問題になりますからね・・・検討は出来ても実施するには相当時間がかかるでしょう。
なので、まずは船だと私は思いますね。
王都ではなく周辺貴族領との交易が早まる方策が欲しいと思っていますよ。」
「そうですか・・・」
「実施は出来なくてもアイデアはノートに書いておいた方が良いですね。
鈴音もしているのでしょう?」
「はい。知識は書いておいていますけど・・・かなり大雑把です。」
「それは私もですよ。
鈴音、とりあえず私達は出来る事をしていきましょう。
無理に変える必要はありません。」
「はい、わかりました。
武雄さんの指示を待ちます。」
「ええ、最初はそれで良いです。
そのうち作りたい物も出来てくるでしょうし、その際はまた話し合いましょう。」
武雄と鈴音が頷くのだった。
「で、ブラッドリーさん達は午後も王都を散策したのでしょうが、どうでしたか?」
「そうですね・・・生活水準が高いですかね?」
ブラッドリーの言葉に工房の面々が頷く。
「生活水準ですか?」
「はい。カトランダ帝国よりも確かに武具の製作技術は劣っています。
ですが、生活用品の種類の豊富さはアズパール王国の方が多いですね。
それと酒場の多さでしょうね。
肉もオーク、牛、鶏、獣、魔獣・・・その店で違いが出ています。
魚も干物系を中心に豊富に揃えられていて食文化の高さがわかります。」
「なるほど。
食の多様化は人々の幸福感を上げる物ですからね。
それだけアズパール王国が善政を敷いている証拠でしょうか。」
武雄は頷く。
「たぶん、私達はもうカトランダ帝国で生活はできないでしょうね。」
ベインズの呟きに工房の面々が苦笑する。
「そんなにですか?」
アリスが尋ねる。
「はい。
アズパール王国というかキタミザト様の料理を食べていると向こうの料理は・・・寂しい物です。」
「それはわかるわ!」
エリカも激しく同意する。
アリスはそんなエリカを見ながら「いやいや、エリカさんが同意しちゃダメでしょ?」と苦笑する。
「クリフ殿下領でウスターソースが作られ始めました。
これからさらに料理の種類が増えていくでしょう。
それに乗り遅れないためにも早々に缶詰を確立するべきでしょうかね。」
「「缶詰?」」
その場のスズネを除くカトランダ帝国出身の面々が聞き返してくる。
「まぁ・・・概要を説明しておきましょうか。」
武雄が缶詰の説明をするのだった。
・・
・
「んー・・・それの試作機を私達に作れと?
確かに缶詰が出来れば食が変わりますが・・・」
ブラッドリーが腕を組む。
「ええ。
基本は円筒形の鉄の缶に溢れるぐらいの食材・・・この場合は煮込む物を入れて鉄の板を置き、それを缶と一緒に密封して破裂しないように加熱するという工程ですね。」
「簡単そうに聞こえますが・・・まず円筒形の缶を作るのは・・・あぁ、なるほど。だから私達なのですか?」
ブラッドリーが何かを思いつき武雄に聞く。
「ええ、流用出来る技術でしょう?
なので、あとは密封ですが・・・たぶん缶と鉄蓋を2巻きか3巻きして完全密着させれれば出来そうだと思うのですよね。
なので、ブラッドリーさん達には懐中時計の職人を養成する事と缶詰の加工用機械の開発が今の所課題ですかね?
あとは缶切りの製作ですが・・・鈴音、どう思いますか?」
「んー・・・武雄さん、私はワインの栓を抜くのと一緒の物しか頭に浮かばないのですが。」
「それで良いでしょう。」
「わかりました。
黒板と一緒に考えます。」
「ええ、お願いしますね。」
武雄がそう言うと鈴音が頷き、ブラッドリー達が疲れた顔をさせるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




