第540話 第二研究所の初顔合わせ。(武雄達が退出した後の雑談と鈴音の変調。)
武雄達とマイヤーが退出した後の小会議室。
「はぁ・・・噂は聞いていたが・・・
とんでもない発想力と許容を持っている方だな。」
「全くだ・・・一体、どんな頭の中身をしているんだか・・・トレーシー殿はあの女性・・・えーっと・・・」
「スズネさんですね。」
「あの娘をどう思う?」
「キタミザト殿が欲しがる理由がわかった気がしますね。
キタミザト殿の発想に着いて行けていますし、ちゃんと自分の意見も言えています。
大したものかと。」
「あぁ、数日間一緒に旅をしたからとあそこまで意見は言えないだろう。
魔法師専門学院の2名は終始呆気に取られていたな。
でも、あれが普通だな。
それにしても諸先輩方はまぁキタミザト殿に質問しましたね。」
アンダーセンが言うとケイとパメラがコクコクと頷く。
「聞きたい疑問はその場で聞かないといけないだろう?」
「まぁ、気持ちはわかりますが・・・
で、他に感想はありますか?」
「ある意味で陛下直属の意味があるな。
あの内容は普通だったら部局並の人員編成が必要だぞ。
それをこの人数でするようにするなんて・・・まぁ発足したてと言われたらそれまでだが・・・」
「王都からすれば様子見・・・今後の成果に依って人員が増えるのだろうな。
という事はだ、俺らの成果が研究所の今後に直結か・・・」
「俺らはまだマシだろう。キタミザト殿に聞けるからな。
問題は第一研究所だな。
アルダーソン男爵はウィリプ連合国に面している所の騎士団だったよな?」
「前に競技会に出ていたよな?」
「あぁ、だから見覚えがあったのか。
それにしても比べられる相手がキタミザト殿というのが・・・可哀想に。」
「うちらからすればアリス殿と比べられるみたいなもんだよなぁ。」
小会議室に残った面々が複雑な顔をさせるのだった。
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武雄達はマイヤーに連れられて廊下を歩いている。
「マイヤーさん、あれで良かったんですかね?」
「さて・・・まぁ、どちらにしても皆にキタミザト殿の強烈な印象は付けられたのではないでしょうか。」
「強烈でしたか?
やりたいことを言っただけなんですけど?」
「タケオ様?普通はあそこまで言わないかと思いますよ?」
「そうなんですかね~?
コラ達を使った早期警戒体制も話していないし・・・それに歓迎会の事も言ってないなぁ。」
武雄の言葉にマイヤーが「あれは本気だったのですか?」と呆れる。
「さてと・・・この後は私は研究所の所長としての講義の受講でしたか。」
「はい。ですので、私がアリス殿達を警護兵の所に連れて行くのに同行しているのです。」
「なるほど、そうでしたか。」
「鈴音さん、どうしましたか?」
アリスは最後尾を歩いている鈴音の顔色も悪いのが気になり声をかける。
鈴音はさっきから後ろを振り向いたり左右を見たりしているのだ。
「あ・・・その・・・
自分でもおかしいのはわかっているのですけど・・・その・・・声が聞こえるので・・・」
「声?」
武雄達は止まり周囲を見る。
「・・・私は聞こえませんね。」
「はい、私もです。」
武雄が呟くとマイヤーも頷き鈴音以外も頷く。
「・・・鈴音、声は何と言っていますか?」
「暇、来て。誰か声が聞こえていないの?。来て。暇、来て。誰かいないの?暇・・・
女性のような声がするのです。」
「・・・何です?その引きこもりは?
それにしても相当暇なのですね?」
アリスが呆れる。
「・・・鈴音、それはいつからですか?」
「さっき部屋を出てからです。
なぜか唐突に声が聞こえるようになって・・・
最初は小さかったのですけど、2つ前の通路との分かれ道が一番声が大きかったので・・・どうすれば・・・」
鈴音が困惑しながら武雄に言ってくる。
「・・・さて・・・どうしましょうかね。
このまま無視をするのも手ですが・・・」
武雄が思案する。
「キタミザト殿、一応陛下の耳に入れて良いでしょうか?
王城の異常ですので・・・」
「はぁ・・・後は講義を受けてさっさと宿に帰って明日の食事でも作ろうかと思っていたのに・・・
ですが、しょうがないですね。
ここで待っていますので陛下達に聞いてきてください。」
「はい、わかりました。
すぐに聞いてきます。」
とマイヤーが武雄達と別れ小走りに去って行く。
「あ~・・・どこかの部屋に入れば良かったですね。」
武雄がそう呟く。
「スズネさん?体調は平気?
その変な声で何か影響は?」
「アリスさん、その・・・得体のしれない声というだけで怖くて。」
「どんな魔物でも私が相手しますからね!」
アリスが鈴音を励ます。
「ジーナ、私達はすぐに動けるようにしましょうか。」
「はい、お父さま。」
ヴィクターとジーナは皆の両サイドに陣取り臨戦態勢を取る。
アニータとミルコは「「何が始まるの?」」とソワソワするのだった。
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