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第537話 第二研究所の初顔合わせ。(黒板を体験しよう。)

オルコットを中心に総監局の男たちが小会議室の壁に1m角の紙を何枚も重ねていく。

「キタミザト殿、これでよろしいでしょうか。」

「はい、ありがとうございます。」

武雄はオルコットに礼をする。

「では、黒板という物はですね。」

武雄は絵画用の筆で大まかに紙に外形を書き始める。

「こうやって・・・移動式というよりも自立をさせてですね・・・

 ここに濃い緑色の板を配置します。」

武雄は絵を書きながら「PCに慣れていると手書きが下手だなぁ」と思いながら書いている。

「「なるほど。」」

皆が頷く。

「で、ここにさっき鈴音が言った『チョーク』を使って文字や絵を書いていきます。」

武雄が適当に線を書いてから皆の方を向くと頷いている。

「つまり、今こうやって皆に説明の為に紙に書いていますがこれを黒板にしたいのです。」

「ですが、わざわざその黒板というのにしなくても今のように大きい紙に書いても良いのではないでしょうか?」

ベテラン勢の男性が言ってくる。

「確かに、こういった皆の前で自身の考えを絵や文字にするという行為だけを見れば紙でも黒板でもどちらでも良いですね。

 ですが、黒板の最大の利点がここなんですけど・・・これがすぐに消せるとしたらどうですか?

 つまりは紙に書いた場合、次の話に移行する場合に捲ったり、切ったりする必要が出てきます。

 ですが、黒板ではただ布で拭くだけで消せるのです。」

「あ・・・なるほど。

 経費の削減になるのですね。」

オルコットが顎に掌を当てながら言ってくる。

「それもありますね。

 それに例えば、この黒板の絵の・・・脚の部分が気に食わなかったとして・・・

 ×印や塗りつぶしでしか訂正が出来ませんが、黒板ならその部分だけ一旦消すことも可能です。」

「なるほどな。常に伝えたい事(・・・・・)が書かれているという訳だな。」

アズパール王が頷く。

「キタミザト殿、ですけど、そこに書かれた物は記録に残りません。

 どうやって記録するのですか?」

アーキンが聞いてくる。

「それは書記の方が書いたり、皆さんに書き写させたりと方法はいくつかありますね。

 ですが、黒板は私側つまりは説明をしている者が記録するような物ではありません。

 黒板は早く言えば説明者の頭の中で考えたことを記述させる道具であり、こう言った会議の際には取りまとめのない事を箇条書きにする道具でもあります。

 では、取りまとめのない事とはどういう事か。

 それは次の紙に書いてみましょうか。」

と武雄は黒板の絵が書いてある紙を剥がして真っ新な状態にする。


「さてと、ではここからは少し変えていきましょう。

 折角、大きい紙を用意してくれましたからね。

 そうですね・・・アリスお嬢様、こっちに来て箇条書きの手伝いをお願いします。」

「はい。」

とアリスが席を立ち武雄の下に来る。

「では、ここから話す事は部外秘とします。

 良いですか皆さん?」

武雄が見ると皆が頷いている。

「議題は現状のエルヴィス領と魔王国ファロン子爵領の戦力比でしょうか。」

その言葉に全員が姿勢を正す。

「まぁ現状の確認だけです。

 まずエルヴィス領は領民が6万4000人前後、騎士団300名、兵士880名で戦力としては1000名を有しています。

 対してファロン子爵領が人間から狼に変身する獣人が統率者として同族が5000名・・・アリスお嬢様、すみません間違えました10000名程度で統治、騎士、事務と3系統に分かれています。

 さらに騎士団の下にオーガ500体。事務組の下にゴブリン1000体とオーク50000体がいます。

 ヴィクター、合っていますか?」

「はい、その通りです。」

ヴィクターとジーナが頷く。

「・・・ちょっと、タケオ様?これって本当ですか?」

アリスが書きながらワナワナしている。

最後の方の文字はちょっと文字が歪んでいたりする。

マイヤーとマイヤーから報告を受けているアズパール王は平然としているが、他の面々は驚愕の表情をして固まっている。

「ふむ・・・改めて箇条書きにされると戦力差が酷過ぎて呆れてくるな。

 ファロン子爵家だけで王都まで蹂躙されてもおかしくないな。」

アズパール王がため息をつく。

「はい。

 ですが、ヴィクターの話では戦場には最大でも騎士団と直属のオーガ500体までが展開するようです。

 さらに慣例の戦争の時はオーガは連れて来なかったのでしたね?」

「はい、慣例の戦争ですからね。

 それに少なくとも私の代までは戦場に足手まといなゴブリンやオークは連れて来ていません。

 ゴブリンは畑仕事専用ですし、オークは畑仕事もさせますがそもそも家畜です。

 家畜や使用魔物を戦場に出すなど獣人としての誇りが許しません。」

「という訳でアリスお嬢様、とりあえずゴブリンとオークは塗り潰してください。」

「は・・・はぁ。」

アリスは言われた通りに塗りつぶす。

「では試験小隊の戦術考察の相手ですが・・・これです。

 獣人の騎士団・・・ヴィクター、通常はどのくらい居るのですか?」

「総攻撃なら統治組、騎士組、事務組関係なく・・・6000名でしょうが・・・そもそも総攻撃なんてした事ないです。

 普通に戦争をするなら・・・騎士組の2000名でしょうか。」

「そうですか、獣人2000名とオーガ500体がエルヴィス領に進攻する事を想定することから始めないといけないですね。」

「キ・・・キタミザト殿、その数を相手にして勝つ方法を考えろと?」

「ええ。数がそもそも倍以上ですけど・・・希望的観測で戦術を考察してはいけないでしょうね。

 それに・・・これは本格侵攻を想定すらしていないのですよ?

 本格侵攻なら獣人6000名、オーガ、オーク、ゴブリンまで想定して初めて成り立ちます。

 ですが、今はあくまで獣人2000名とオーガ500体を相手にする事を考える事から始めるのが良いでしょう。」

「・・・勝てるでしょうか?」

「勝てないまでも負けない(・・・・)事が重要なのです。」

武雄達の会議は続くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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