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第528話 貴族会議開催中。(異種族のお試し運用。)

「父上、よろしいですか?」

「ん?クリフ、どうした?」

「少し今の話を聞いていて思ったのですが・・・

 応募してこない理由・・・そもそも人間種の組織(・・・・・)になっているからなのではないですか?」

「??」

アズパール王や他の面々が首を傾げる。

「どういう事なのでしょうか、クリフ殿下。」

オルコットが聞き返す。

「いえ・・・さっきの話を逆に考えてみたのですが・・・

 魔王国の人間種の村に私が住んで居たとして魔王国が兵士募集の要件に種族は拘らないとしていても応募するのかという自問自答をしてみたのですが。」

「ふむ、クリフだったらどうする?」

「しません。他の商いを見つけるかと。

 なんと言うか兵士の採用という所でまず不安があるのではないかと思ったのです。」

「クリフ、わからん。どういう事だ?」

「あ、なるほど。確かにクリフ兄上の言う考えなら僕も応募はしませんね。」

ウィリアムが頷く。

「ん?ウィリアムならわかるのか?」

「正確な兄上の考えかはわかりませんが・・・

 たぶん前例がないのです。」

「ふむ、だから作ろうとしているのだがな?」

「違うんですよ、父上。

 魔王国に人間種を採用したという実績があるのかがわからないから応募しないのです。

 情報が全くない状態で魔王国の採用要件を見ただけで応募はしないのではないのでしょうか。

 つまり我が国の兵士に異種族が応募してこないのは異種族が採用された実績がない為、言葉では平等を謳っていても実情はどうなのかわからないからなのではないですか?」

「ウィリアム、そのとおりだ。

 どんな待遇が待っているかわからない所には応募出来ないと思ったのです。」

「「え?」」

アズパール王達が固まる。

「つまりは・・・えーっと・・・うちの兵士になったとして将来像がわからないと言うのか?」

アズパール王がいち早くショックから抜け出し息子達に聞く。

「ええ、これは種族に関係なく言えるのではないですか?

 どんな商店や工房、文官、武官関係なくこの組織に入ったらどんな役職まで行けるのか。

 どんな仕事をするのか、給金はどのくらいが将来貰えるのか。

 私達人間種は兵士たちの暮らしぶりを見ているから応募してきますが、逆に異種族だった場合、その辺がどうなるのか全くわからないのです。

 募集要項は初任給ぐらいしか書いてないのではないですか?

 将来どのくらいの給金を貰えて、努力すればどんな役職まで登れて、どんな辛いことが待っているのか・・・具体的な事が書かれていないので応募してこないのではないでしょうか?」

「・・・軍務局長、募集要項はどうなっている?」

「ウィリアム殿下の言われる通り初任給程度の簡単な事しか書いておりません・・・」

「ウィリアムは何でわかったのだ?」

「タケオさんの部下のヴィクターとジーナ、そしてアニータとミルコを考えていました。

 タケオさんはいとも簡単に4名から採用を合意させたではないですか。

 まぁ確かに4名とも行く当てがなかったとも言えなくもないですが、ですが部下になる事に抵抗はなかったように話していました。」

「それは・・・確かにそうだな。

 すんなり4名とも受け入れていたな。」

「はい。じゃあ、タケオさんはあの4名に何を言ったのか・・・

 正確にはわかりませんが、給金ではなくあくまで『25年後の将来像』を語っていたと思います。」

「確かにそうだな。25年間タケオの下で仕事をしてお金を貯めてから好きな事をすれば良いと言っていたな。

 ということは、実績を作れば来てくれるのか?」

「ですが、陛下。異種族の採用をした事がないので、どこまで昇進出来るのか、どこまで給金があげられるのか、採用年数は最大で何年か等々それを考えるのが今の募集要項の始まりなのです。

 なので・・・それを今の段階で考えるのは難しいかと。」

軍務局長が言ってくる。

「確かにな・・・今からすべてを規定する必要はないだろう。雇用してみなければわからない事があるのは確かだ。

 だが、ウィリアムの言葉を一考すればそれがない所為で採用が出来ないと来た・・・

 これはどうするのだ?

 我はウィリアムの考えは真っ当だと思うが。」

「はい、そうです。前例がないから応募に来ない・・・応募に来ないから前例が作れない。

 打つ手がありません。」

オルコットが頭に手を当てて悩みだす。

「・・・ん?オルコット。」

「・・・はい。」

「さっきのタケオの部下の・・・えーっと・・・」

「ヴィクターとジーナ、そしてアニータとミルコです、陛下。」

オルコットが補足してくる。

「うむ。

 ヴィクターとジーナは執事での採用。

 アニータとミルコについては色んな職業をさせて適性を見るとタケオは言っていたな?」

「はい、仰っておりました。

 あ、なるほど。キタミザト殿はアニータとミルコを研究所の試験小隊にまずは入れ、常識等々を教えてからいろんな職種を経験させるとも仰っていましたね。」

「うむ。

 これは研究所の試験小隊という上位機関に異種族を配置する事が可能な能力主義的な国風という考えに一致はするが・・・

 さて、どうやって周知をさせるか・・・」

「陛下。一旦、その辺の事は貴族達や各局に持ち帰らせ、検討をさせてはいかがでしょうか?

 今日、明日で結論を出すことではないと思います。」

「うむ、それもそうか・・・

 と、そうだ。クラーク、あの獣人の親子の娘・・・ジーナだったか?

 あの娘を王立学院に入れることは可能か?」

「・・・ん~・・・」

クラークが腕を組んで悩みだす。

「我的には文官達の意識も変えないといけないと思う。

 いきなり配属させても反発があるだろう?

 なら次世代の文官達である王立学院に入れて異種族が普段から居る状況を作り出し、慣れさせるのも将来に渡って必要な事ではないのか?」

「・・・陛下の仰りようもわかります。」

「無理か?」

「可否で言えば可能です。

 可能ですが・・・生徒達がどう反応するかわかりません。」

「クラークの本心ではどう思う?」

「そうですな・・・個人的には時期尚早かと。

 ただ、最高学年にエイミー殿下が居て、同学年にグレース殿下、エルヴィス家のスミスが入り、推薦者がキタミザト殿とアリス殿。

 さらには昨日の面談の落ち着きようをみると教養もあるでしょう。

 受け入れの条件としては理想的かと。」

「クラークが悩む事はなんだ?」

「生徒間のイジメです。

 人間同士ですらあるのに種族が違えばなおのこと助長する恐れがあります。」

「教員はどう対応している?」

「基本的には中立であり相談には乗りますが、当事者で解決させるようにしています。

 それに王家、貴族、一般と区分けをしていますが、いくらキタミザト殿の推薦でも一般部屋ですし・・・」

「・・・スミスのお付きとしてならどうだ?」

「ん~・・・スミスの部屋の近くの個室が与えられますね。

 201号室から順に王家、貴族、お付という割り振りですが・・・もうこうなったら特別待遇でエイミー殿下とスミスの間に部屋が用意ができます。」

「それならイジメも緩和されるんじゃないか?」

「・・・私はまだ早いと思いますが・・・

 ちなみにキタミザト殿やそのジーナ嬢には?」

「言っていないな。」

「まずはそこからでしょう。

 キタミザト殿が認め、ジーナ嬢が入りたいと望む事が最低条件です。」

「随分低い条件だな・・・もっと高い条件が出されるかと思ったのだが。」

「いえ、異種族の雇用問題は今後も解決を図っていかないといけない問題です。

 陛下の仰るように学院時代から異種族と日常を共にする事で慣れ(・・)が発生し、今後10年、20年後に生かされるというのはわかります。

 なんの障害もなければ受け入れても良いのかもしれませんが・・・何分前例がない為、問題発生時の対応方法が・・・」

「はぁ・・・ここでも前例か。

 クリフ達はどう思う?」

「私は父上に賛成します。」

「俺も問題ないと思いますね。」

「僕もジーナが望むならという条件で賛成します。」

「ふむ、王家は賛成か。

 オルコットはどう思う?」

「まずはエルフの2名を研究所の試験小隊で試験雇用して異種族を雇用する際の問題点等の洗い出しの方を王都が率先して支援するべきと考えます。

 ですが、クラーク議長が仰った来年度の受け入れ側の条件が良い事を踏まえると王立学院にも特例として入学させて今後の異種族の子息を入れる際の問題点等を確認するのに良いかもしれないと考えます。」

「ふむ、人事局長はどう思う?」

「はっ!

 エルフ2名の試験小隊への一時的な編入と獣人の娘の王立学院の貴族のお付としての入学。

 第1弾としての異種族のふれあいとしては十分かと。

 まずはエルフの方は正規雇用ではなく試験雇用のような形であると私は思います。

 ですので、人事局(我々)としては王立研究所の試験小隊からの日報や報告をお願いしたいと思います。

 もちろん金銭面で少しばかり援助は出来る物と考えます。

 また、各地への宣伝ですが、まだしなくては良いのではないでしょうか。

 とりあえず試験小隊で過ごして貰い、上手く行くのであれば王都の軍務局と人事局(我々)と話合いを行い募集要項の記載方法を考えるのも手かと考えます。

 何分初めての雇用です。あまり壮大に宣伝してもエルヴィス家やキタミザト卿に迷惑が掛かるかと。

 また、王立学院へ貴族のお付としての入学はイジメ等が酷い場合は、エルヴィス家のスミスに前面に立って貰い獣人の娘を擁護できるのではないでしょうか。」

「エルヴィス家のスミスはまだ12歳だぞ?

 そこまで期待して良いのだろうか・・・」

「流石に王立学院の悪童も貴族であるエルヴィス家には反抗しないのではないでしょうか。」

「ふむ。クラーク、どう思う?」

「わかりかねます。

 私は所詮代理の学院長です。

 実情まではわからないのが正直な話ですが・・・普通に考えれば王家や貴族には反抗はしないでしょう。

 普通に考えれば(・・・・・・・)。」

「ふむ、普通から逸脱するから悪童と呼ばれるか・・・

 その者達は?寄宿舎の何号室だ?」

「別棟です。」

「ふむ・・・クラーク、とりあえずタケオに話を聞いてくる。

 その後に部屋割りを考えてくれ。」

「はい、畏まりました。」

クラークは若干あきらめ気味に頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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