第517話 王城内の探索。(専売局へ行ってみよう。)
武雄はヴィクター達を宿に連れて行き「今日は疲れただろうからもう解散!」と伝えていた。
そして武雄は王城に戻りまずは人事局によって皆の氏名を変更していた。
「えーっと・・・皆の氏名の変更はしたよね。
次は・・・専売局か・・・えーっと・・・どこかな?」
武雄はいろいろな部局がある区画をうろうろと移動(迷子)している。
「あれ?タケオさん?」
エイミーが武雄を見つける。
「エイミー殿下?どうしてこちらへ?」
「私は学院に行こうと・・・この道が近道なので。
タケオさんはどうしてここに?」
「専売局という部署を探しているのですが・・・迷子です。」
「タケオさん、王城内は案内がいないと行きつけませんよ?
一つの部署に行ったら一旦受付に戻った方が早いと思いますけど。」
「いえ、人事局にくるときは同行してもらったのですが・・・で用事が済んだので、ついでに専売局にも行こうと思いまして人事局で道順は聞いたのですが・・・」
「ちなみにタケオさん、専売局に何をしに行くのですか?」
「気になりますか?」
「はい、とっても!」
「今度、懐中時計の量産を始めるのですが、原材料の価格と種類を調べに行こうと思いまして。」
「原材料・・・鉄とかですか?」
「ええ。鉄もそうですが、国内で入手が出来る原材料の種類と取引価格の調査ですね。
それによって懐中時計の販売価格が変わりますので。」
「懐中時計?・・・あ!もしかして父上が何だか楽しそうに見ているあれですね!?
あれはタケオさんからの贈り物だったのですか!」
エイミーがぷくっと頬を膨らませながら可愛く怒る。
「え?どうしましたか?」
武雄は何のことだかわからず焦る。
「父上が『これは時を刻む物だぞ?良いだろう!』と見せびらかすのです!
タケオさん、父上におもちゃを与えないでください。」
「いや・・・殿下方にはお土産で渡したんですけど・・・
ふむ・・・殿下達が気に入るという事は、やはり懐中時計は売れそうですね。」
「あ、タケオさん、あれで一儲けを狙っていますね?」
「はい。国中に売る気満々です。」
「じゃ、私もいつか手に入るのですか?」
「先行予約をしますか?
4か月後ぐらいには少量ですが、量産が始まる予定なんですけど。」
「4か月ですか・・・微妙な期間ですね。」
エイミーが少し悩みながら言う。
「微妙なのですか?」
「短いようで長いですので。」
「はは。」
武雄は苦笑しながら頷く。
「じゃあ、私も専売局に行ってみますかね。」
「え?エイミー殿下は学院に向かわれるのではないのですか?」
「平気です、今すぐ行く必要はありませんので。
それにタケオさんに付いていった方が面白そうですから。」
「わかりました。
エイミー殿下、ご同伴をお願いします。」
「はい。では、受け付けに戻ってから行きましょうか。」
武雄とエイミーが移動を始めるのだった。
・・
・
「エイミー殿下、キタミザト卿、こちらです。」
「案内ご苦労様です。」
エイミーが労う。
「はっ!では私はこれにて!」
案内した兵士が深々と頭を下げて元来た道を戻って行く。
「・・・」
「ん?タケオさん、どうしましたか?」
エイミーは武雄が兵士の後ろ姿を長めに見つめているのに気が付き聞いてくる。
「いえ、初めて王城に来たときに受け付けにいたなぁと。」
「あぁ・・・」
エイミーが微妙な顔をする。
「さ、中に入りましょうか。」
武雄は扉をノックして入室をするのだった。
「失礼します。」
武雄が若干小声で入室してくる。
エイミーは「なぜ小声?」と思いながら武雄の後に入ってくる。
武雄は軽く室内を見ると一番の若手と思われる男性と目が合う。
「・・・どうされましたか?」
男性は明らかに面倒臭そうに立ち上がり武雄に声をかけてくる。
武雄は「親子連れが来たという認識なのかな?」と思う。
「お忙しい中、申し訳ありません。
私、キタミザトと言いまして、こちらで国内で流通している原材料のリストが頂けるとお聞きしまして参りました。
出来ましたら大まかな原価も教えて頂けるとありがたいのですが。」
「あ~・・・原材料のリストはお出し出来ますが、原価は紹介がないと出せませんね。」
「そうですか・・・」
武雄は「陛下や宰相の名前を出して良いのかな?」と思案する。
と、武雄達が入ってきた扉が開き50代くらいの恰幅の良い男性とこちらも50代くらいの中肉中背の男性が入ってくる、
「戻ったぞ~・・・ん?」
武雄は若い男性と話しているのでエイミーが2人を見上げていた。
「エ・・・エイミー殿下!?」
恰幅の良い男性が驚愕の表情をする。
武雄は驚きの声が聞こえたので振り返っていた。
「局長、こんにちは。」
エイミーは普通に礼をする。
「な・・・な・・・どうしてこちらに!?」
「いえ、学院に行く途中でタケオさんに会ったので私も来ました。」
「え?・・・あ、では、こちらがキタミザト卿で?」
「はい。タケオさん、こちらが王都専売局長です。」
「キタミザトです。
突然訪問して申し訳ありませんでした。」
武雄が頭を下げる。
「いえ、こちらこそ出迎えもせず申し訳ありませんでした。
今、オルコット殿に打ち合わせで呼ばれておりました。
原材料のリストと原価表でしょうか?」
「はい。オルコット宰相に専売局に行くようにと言われたので。」
「オルコット殿が言うように行動が早いですね。
リストと原価表はすぐに用意させます。
エイミー殿下、キタミザト卿、私と一緒に執務室でお待ち頂けますか?」
「私は良いのですが、エイミー殿下は大丈夫ですか?」
「はい、構いません。」
「ではこちらに。
おい!全ての原材料リストとその原価、それと国全体の流通分析をすぐに写して持ってきてくれ。」
「きょ・・・局長!?原材料全部ですか?」
若手男性が高い声を出しながら驚く。
「あぁ、全部だ。
キタミザト卿とアルダーソン卿の研究所所長の閲覧制限が王家並みになっている。
要請があった場合は開示をするように上から指示されている。」
「わ・・・わかりました。」
若手はガックリしながら頷くのだった。
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