第515話 王城での面談6(皇女へのネタばらし1。)
武雄はヴィクター達を連れて小広間を後にしてフリップ達が居る控室に向かっていた。
「あの・・・主?その・・・本当にあの方がアズパール王国の国王陛下なのですか?」
ヴィクターが歩きながら聞いてくる。
「はい。
第34代アズパール国王、アラン・ジョン・アズパール陛下になります。
そして窓際に居たのは第3皇子のウィリアム殿下、正室のアルマ殿下、側室のレイラ殿下です。
ちなみにレイラ殿下はアリスお嬢様の姉です。」
「・・・主、相当高い人脈があったのですか・・・それを知って婚約を?」
「いや・・・知っていて婚約したわけではなくて、婚約したら教えてくれました。
でも私の時も今回のように陛下は身分を言わずに会いに来ていろいろ聞かれましたけどね。」
「まさかそれが・・・先の戦いの時だと?」
「ええ。陛下だと知っていれば違う対応もしたでしょうけどね~。
なのであの陛下はそもそもそういう事が好きな方なのです。」
「なるほど・・・というより・・・主は知っていたのですか?」
「何がです?」
「この面談では陛下は身分は隠すという事をです。」
「知っていましたよ。
正確にはアリスお嬢様が合流してきた時に伝言を受け取っていましたので、その辺は皆に何も伝えなかったと思いますが。
そうそうフリップさん達には言ってはいけませんよ?
たぶんあの方たちは今後、陛下とは会う機会はないでしょうが・・・あまり表だっていう事でもないと思いますので。」
「わかりました。」
ヴィクターが頷くと他の3名も頷くのだった。
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小広間には第3皇子一家とアリス、そしてエリカ達が残されていた。
「さてと、ネタばらしをしないとね。
アリス、席替えよ!」
「はい、わかりました。」
レイラとアリスがエリカ達の対面に席を移動させる。
アルマは人数分のお茶の用意をウィリアムは窓際にて資料を軽く読んでいる。
・・
・
「ウィリアム、準備出来たわ。」
アルマがウィリアムを呼ぶとエリカ達の前にウィリアム達とアリスが座る。
「はい、皆、面談ご苦労様でした。
さてと何から話さないといけないですかね?
んー・・・まずは僕達から言った方が良いですかね。
僕はアズパール王国第3皇子のウィリアム・アラン・アズパールと言います。」
「私が第3皇子妃で正室のアルマ・エリス・テンプル。」
「私が第3皇子妃で側室のレイラ・ヘンリー・エルヴィスと言います。」
「エ・・・エルヴィス?」
エリカが状況を飲み込めない中、何とかレイラの苗字に食いつく。
「はい。私はエルヴィス伯爵の孫娘であり、アリスの姉です。」
レイラが朗らかに言う。
「「!」」
エリカとカサンドラが一瞬顔を見合わせるが、エリカはすぐに顔から表情を消し対応を始める。
「それにしても人が悪いです。
身分を隠して面談をされるなど・・・」
エリカが小さめの声で反論してくる。
「ふふ、それはお互い様ではないですか?
エリカ・キロス殿・・・いや、カトランダ帝国 第3皇女 エリカ・クレト・カトランダ殿と言った方がよろしいですか?」
レイラが朗らかに言う。
「な!?なぜそれを!?」
カサンドラが一瞬手を腰に移そうとしたが、受付で剣を預けている為に腰に剣がなかった。
代りにアリスが腰の剣の柄に手を添えていた。
「カサンドラ、止めなさい!
それにそもそも私達を亡き者にするのにわざわざ面談なんていう面倒な事はしません。」
エリカが気を持ち直してカサンドラを制する。
「・・・私は正式には亡くなっている為、その名を口にする事は憚れます。
その辺はカトランダ帝国の事情ではありますが、私事で貴国との間で波風を起こしたくはありませんので、この場のみでお願いします。」
エリカが深々と頭を下げる。
「わかりました。
私どももカトランダ帝国と一戦交える気はありません。
先ほども言いましたが、私達は魔王国側の領地に異動しますので、カトランダ帝国の件についてはあまり関心がありませんし、何か対策が出来る訳でもありません。
では以後、エリカ・キロス殿と言わせて頂きます。」
「私の事は名前で結構です殿下方。」
「そうですか。
では、私達の事も名前の方でお願いします。
エルヴィス姓が2人いますからね。」
「はい、わかりました。」
「さて、自己紹介もしたし、事の経緯をまず言っておきますか。」
アルマがそう切り出す。
「そうだね。
そもそもは関を越えた時にタケオさんからアリスを寄こしてくれとの依頼があった際に兵士が2名王都に来ました。
それはご存じで?」
ウィリアムが説明を始める。
「はい。アリス殿と合流する為の護衛と言っていましたが?」
「その通りです。
タケオさんの連れていた5名の兵士・・・カサンドラさん、あなたはエリカさんの護衛ですね?貴女の目から見てあの5名はどう見えましたか?」
「はい・・・騎士クラスかと。」
「なるほど・・・護衛の任務だからある程度はわかってしまうのはしょうがないのでしょうが・・・
彼らは王都守備隊員です。」
「お・・・王都守備隊!?」
カサンドラが驚く。
「カサンドラ、王都守備隊とはなに?」
「えーっと・・・エリカ様、王都守備隊とはカトランダ帝国でいう帝都護衛軍です。」
「・・・超エリートね。」
エリカが淡々と答える。
「タケオさんがカトランダ帝国に行くので王家から護衛を兼ねて王都守備隊を付けたんです。」
「それほどまでにタケオさんを評価するのですか?」
「ええ。私達王家はタケオさんは我が国の将来に欠かせない人物と見ています。
不思議に思いませんか?
タケオさんが決めてきたことに王家の誰一人反対はしていないのですよ?」
ウィリアムが苦笑する。
「それは・・・確かに。」
エリカが頷く。
「まぁ、今はそこではなくて経緯の話でしたね。
まずはそこを話しましょうか。」
ウィリアムが話を進めるのだった。
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