第508話 43日目 王都の西の町の例の宿。(工房の面々とエリカ達ののんびりタイム。)
工房組が一室に集まり雑談をしていた。
「はぁ・・・わしはもう死んでも良いのぉ。」
シントロンがお茶を飲みながらシミジミと言う。
「いや・・・爺ちゃん、真面目に怖いこと言わないで・・・洒落になってないわ。」
サリタが額に手を当てて言う。
「でも、シントロンさんのいう事もわかりますね。
キタミザト様のあの料理は今まで私達が食べてきたどの料理よりも上を行っていましたし。」
「父ちゃん、キタミザト様に付いて来て正解だったね。」
ビセンテに向かってバキトがそう呟く。
「スズネはあの料理は知っていたか?」
「はい、親方。トンカツとカツカレーですね。
まさか武雄さんが両方を作り出すとは思いも寄りませんでした。」
フリップの問いかけに鈴音が満面の笑顔で答える。
「そうか・・・あの食事が毎日食べれるだけでもアズパール王国に来た甲斐があったな。」
「もうわしらはカトランダ帝国では食事が出来なさそうじゃ。
キタミザト様だけではなくて町中の食材の豊富さは凄い物じゃな。」
「はは、全くですね。」
皆がシントロンの言葉に苦笑をしながら頷く。
「でだ、例のキタミザト様からの工房の件はどうする?」
「今までのやり方では到底、要求生産量は賄えんよ。」
「なので、分業制にする事に前回決めましたよね?」
フリップの問いかけにシントロンとビセンテが答える。
「あぁ。最初から最後まで1人で行うのではなく、仕入、製造、組み立て、仕上げの4部署とするんだが・・・良く考えたらさらにキタミザト様から武具の試作も頼まれている。
という事はだ。その4工程以外に試作を最初から最後までする部署も必要となる。」
「5部署体制ですか・・・いや経理関係もあるから6部署・・・」
「仕入れの所が経理関係も兼ねられるだろう。
仕入時の検査と支払い、そして金銭回収が主な仕事だな。」
「5部署・・・小娘が居ないのでこの5人が上に立つしかないのかの?」
「でも、部品製造は爺ちゃんで組み立てはバキトさん、仕上げはフリップさん、開発はビセンテさん?
という事は仕入れは私かな?」
サリタが悩みながら言ってくる。
「それにそれぞれで欲しい人数も能力も違う・・・ここの見分けが必要だな。」
フリップが悩む。
「基本的にわしらに雇われても良いと思う工房を面接して必要な人員を考えるしかないじゃろう。」
「そうだな・・・何て説明すれば工房の主人達を説得できるのだろうか・・・」
「そこはまだ時間もあるから皆で考えるしかないでしょう。」
ビセンテの言葉に皆が頷くのだった。
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エリカ達の部屋にて。
「あぁ・・・美味しかったぁ。」
「エリカ様、寝るなら着替えて寝てください。」
カサンドラがため息をつく。
「はいはい。
はぁ・・・それにしてもアズパール王国の食品の多さにはビックリね。」
エリカが寝間着に着替えながら言ってくる。
「これでは戦争には勝てません。」
「そうよね・・・肉も野菜も穀物も豊富・・・
アズパール王国も凄いけどウィリプ連合国もこんな感じなんだろうなぁ。
チコ達勝てるかな?」
「さて・・・でも勝つための布石はいろいろしているのでしょう?
それに非公式でもアズパール王国からカトランダ帝国に向けて輸入をして貰っても良いかもしれませんね。」
「それねぇ・・・私が居た時に1度考えられたんだけど・・・将軍達がね。」
「何で軍部上層部はアズパール王国との交易も否定するのでしょうか?」
「わからないわね・・・正直に言えば皇族は戦争もしたくないし交易がしっかりと出来れば良いという考えなのよ。
でもここに来て友好国のはずのウィリプ連合国からの輸入量減の方針が見えてきたからウィリプ連合国への農地拡大の為の戦争を決意しているわけだけど・・・
将軍達は一部を除き賛成、商工組合も賛成、魔法師組合も賛成。」
「・・・将軍の一部って・・・第3軍ですか?」
「違うわ。対アズパール方面軍である第2軍の将校がねぇ・・・逆にウィリプ連合国方面軍である第3軍はかなりのやる気。
東町の再開発事業は第3軍の発案よ。それに商工組合と魔法師組合が賛同しているわ。」
「第2軍・・・暴走はしないでしょうか?」
「さてね・・・私ではもうどうにもできないわ。
それに私が国を出た辺りで中央の第1軍が動くような気配だったし・・・」
「動く?」
「大人事異動になるらしいわ。
その混乱を民に教えない為に私が死去したとされているはず・・・だったなぁ。」
「皇女が死亡したことによる国内の反戦派の一掃と見せかけた第2軍の粛清?」
「粛清はしないらしいわよ。
でも第2軍のアズパール王国戦争開戦派の将校達は降格するらしいわ。
それに父上から反戦派の将校は戦後に活躍の場があるから大事にしないといけないという言葉を貰っているわ。
父上は何だかんだ言っても戦後を見ているのよ。
始めるのは簡単で終わらせるのは大変だと感じているのね。」
「皇帝陛下がそのような事を・・・」
カサンドラが考えながら呟く。
「それにチコがね・・・あの子軍略下手なのよね・・・」
エリカがため息をつく。
「そうなのですか?そう言えば商才に恵まれていると聞いていますが・・・」
「元々チコは皇位的には継げないという事から商売関係を徹底的に教えたのよ。
街の運用から新しい産業の起こし方、職人を大事にする姿勢。
そして魔法師組合を後援組織としてより魔法師が活躍する方法の模索。
これがチコに与えられた任務ね。」
「ちなみにエリカ様は何をしていたのですか?」
「私?・・・特にないかなぁ。
どうせ嫁ぐのなら万遍なくやれって・・・政治、軍の運用、街の運用は東町で実践済みだし、商売と魔法師はわからないかなぁ。」
「ある意味エリカ様が一番何でも出来るのですか?」
「政治も軍もただ聞いていただけだしね~。
実際は町の運用しかした事ないなぁ・・・そして今はやりたい事がわからないわ!」
「あぁ、ダメっ子を演出ですか。」
「いや・・・そうじゃなくてね?」
「まぁ・・・とりあえずやりたい事を探してください。」
カサンドラがため息交じりに言うのだった。
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