第504話 43日目 ダメダメな人達。
武雄達は王都の西の町に向け移動しているのだが・・・
「痛っ・・・」
武雄とマイヤーの後ろで馬に乗っているアリスからそんな呟きが聞こえる。
が、武雄とマイヤーは気にもしないで速度も維持したままで来ている。
「・・・普通、次の日に残る程飲みますかね・・・」
武雄はため息交じりに言う。
「だって・・・エリカさんとの飲み比べで・・・」
「女同士で飲み比べをするのもどうかと思いますが・・・」
「うぅ・・・何を言ってもタケオ様に言い負かされます。
はぁ・・・頭痛い・・・」
頭が痛いと言いながら意地なのか酒で体調を落とす事が元々ないのかはわからないがアリスは速度を落とさずについてくる。
ちなみにエリカ達は二日酔いも見せずにケロッとしていて、サリタと鈴音は荷台で「頭が痛~い」と言いながら寝ていたりする。
男性陣は(ブルックとフォレットも)何事も無かったように普段と変わらずに動いていた。
「もうすぐ町ですから、着いたら寝れば良いでしょう。」
「わかりました、それまで頑張ります。」
アリスは返事をしてくる。
と、前方から速度を落として兵士が寄って来るのが見えるのだった。
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「エリカ様。」
カサンドラがこっそりとエリカに声をかける。
「何?カサンドラ。」
「お酒・・・残っていますね?」
「あ・・・わかる?」
「無表情ですので。」
「・・・アリス殿との飲み比べが悪かったわね・・・」
「なんで張り合いますかね?」
「いや・・・なんとなく?その場の雰囲気?
するんじゃなかったわ・・・」
エリカは内心ガックリとしていた。
「酒は飲み比べをする物ではないと思いますけど。」
「私も初めてだったのよ?ついついお酒が美味しくて、それにアリス殿をからかうと面白くてね。」
「はぁ・・・エリカ様はもう平民なのですよ?
平民が貴族の令嬢と飲み比べてどうするのですか?」
「頭ではわかっているんだけどね・・・
な~んかイジりたくなるのよ。」
「はぁ・・・楽しそうな事には首を突っ込むのですね。
まぁ良いです。昔からそんな方でしたのでもう諦めます。」
カサンドラがため息をつく。
「なんて言い草でしょう・・・でもその通りなのよね・・・
楽しい事が向こうから来るのよね。」
エリカは苦笑する。
「はぁ・・・エリカ様が向こうの街で何をするか・・・かなり心配なんですけど。」
「それは模索中。
まぁアズパール王国の王都で真剣に考えてみましょうかね。」
「早く見つかると良いですね。」
2人でのんびりと話しながら馬を走らせるのだった。
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「クリフ殿下、ニール殿下、お呼びと伺いましたが・・・」
武雄が隊の先頭を行く両殿下の所まで馬を進め声をかけてくる。
「おう。タケオ、来たか。」
「すまんなタケオ。
喋り方は普通で良い、雑談がしたくてな。」
ニールとクリフが声をかけてくる。
「はぁ・・・なんで両殿下が馬で走っているのですか?
馬車があるでしょう?」
「そうなんだがな・・・」
クリフが苦笑を武雄に向けてくる。
「聞いてくれよ、タケオ。
クリフ兄上が馬車の居心地が悪いと言ってな。
昼食後から騎乗移動だ。」
ニールがヤレヤレという感じを出しながら言ってくる。
「居心地が悪い?」
「あぁ。クリフ兄上曰く。
現在、第1皇子一家の馬車の中が昨日の夜の話で持ち切りだそうだ。」
「昨日の夜・・・初夜?」
「あぁ・・・昼食時にローナとセリーナが楽しそうに馬車の割り振りを変えてな・・・
クラリッサとリネットと一緒に今は馬車の中だ。」
「で、第2皇子一家の馬車が子供達用になっていて俺も追い出された。」
「・・・何やっているんですか?」
武雄は目を細めながら呟く。
「タケオ・・・その言い方だとどちらの意味だ?」
「私は3通りの取り方を想定して言いましたが・・・説明が必要ですか?」
「いや・・・すまん、追い打ちはやめてくれ。」
クリフが武雄に謝って来る。
「ほら、タケオも俺と同じような反応ではないですか。」
ニールが苦笑しながら言ってくる。
「いや・・・だってな・・・するだろう?」
クリフが苦渋の顔をさせながら言ってくる。
「まぁ・・・私も他人の事言えませんけど・・・旅の最中には・・・ねぇ?」
「あぁ・・・俺も言えないけどな・・・」
武雄もニールも困り顔をする。
「で、タケオ、ウィリアムに渡した資料を覚えているか?」
「・・・資料?」
武雄が軽く悩む。
「ほら、タケオ、王都の最終日の飲みの席での。」
ニールが言ってくる。
「あぁ、体位のヤツですか。
欲しいならウィリアム殿下にどうぞ。
そういうのは私のような部外者よりも兄弟間でした方が良いでしょう?」
「「タケオ、頼む!兄の威厳が!」」
クリフとニールが懇願してくる。
「そんな威厳は必要ありません。」
「うぅ・・・クリフ兄上・・・どうしましょう?」
「あぁ・・・当てが外れたな。」
「ウィリアム殿下なら言えばくれるでしょうに・・・」
武雄がため息をつく。
「弟に頭を下げて夜のやり方を教えて貰うっていうのは・・・恥ずかしくないか?」
「いや・・・そういう事なら部外者の私に聞くのはもっと恥ずかしいと思いますけど。」
武雄が苦笑をしながら言う。
「タケオだしな・・・恥ずかしいという所はない。」
「あぁ、私もタケオなら躊躇せずに頭も下げよう。」
ニールとクリフが真面目に返してくる。
「あの・・・そこまで高評価なのはありがたいのですが・・・
いや、やはりこの資料はウィリアム殿下に一任しましょう。」
「「ええぇぇぇ・・・・」」
2人がうな垂れる。
「だってそうでしょう?
これはそもそもウィリアム殿下に教えたのですから。
最低でもウィリアム殿下同席の下で聞いた方が良いでしょう。」
「・・・わかった。」
クリフが何か閃いたかのように武雄とニールを見る。
「クリフ兄上?」
「兄弟全員でタケオから講義を受けたいと思う!」
「はぁ?」
武雄は話の向かった先がわからずに驚きの声を上げる。
「皆でタケオの知識の講習を受けよう!
であれば均等に知識がつく!問題ない!」
「いやいや、どう講習しろっていうのですか?
アリスお嬢様を出したら血の雨が降りますよ?
かといって一時を買った女性を用意したら私が殺されます。
絶対にそんな講義はお断りします!」
「男達だけで集まったら」
「男性同士の趣味は私にはありません!」
武雄がぴしゃりと釘を刺す。
「じゃあどうしろと?」
「ウィリアム殿下にお願いしてください。」
「・・・一応聞いてみる・・・」
クリフは弱々しく返事をするのだった。
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