第502話 武雄のボーっとしたい時間。
武雄は宿に戻り、一室でブランデーを片手に昼間から酒を楽しんでいた。
そう・・・楽しんでいたのだ。奴等に見つかり宴が始まる前までは。
「あはは!武雄さん!これ美味しいですよー!」
「ねぇ・・・私何すれば良いのー?
ねーねー!タケオさん!私どうしよう!?」
「あ!私のタケオ様にさわるなー!」
「タケオさん、料理の話しましょうよ!」
「うぅ・・・タケオ殿・・・すみません、私ではもう・・・」
武雄は女性陣に捕まり「この混沌を誰が収められるんだろう」と若干伏せ目をしながら思案していた。
ちなみに男性陣(ブルックとフォレットはこっちに参加)は・・・凄い勢いで飲んでいた。
職人と兵士・・・そりゃ飲むよね。それに3杯って言ったのに・・・樽投入開始。
武雄はあっちに入らないだけマシなのか?と思いながら「いろいろ思案しながらダラッとしたかったなぁ」とブランデーを水割り(薄め)にして飲んでいた。
と、武雄が席を立つ
「あー!タケオさん!どこいくの!」
エリカが絡んでくる。
「トイレですよ。」
武雄はそう言いながらグラスを片手に歩いて行く。
「また!私のタケオ様に手を出して!」
「へーんだ。まだ婚約まででしょう?」
「ぐっ・・・タケオ様は私と一緒になるんです!
エリカさんにはなびきません!」
「なびかないなら私が手を置くくらいしても良いでしょうー♪
嫉妬深いのも大概にしないと殿方に嫌われるわよぉ?」
エリカがアリスを挑発してくる。
「何を知ったかぶりして!
大体女性2人旅している人に言われたくないです!貴女は結婚の経験あるような口ぶりをして!」
「私だってお・・・貴族の端くれ結婚ぐらいしたわよ~。」
「な!だったら旦那と過ごしなさいよ!」
「それがねぇ・・・結婚式の最中に死んじゃったのよ~。」
「な!?」
「え?」
「へー。」
女性陣の会話がピタッと止まる。
「ん?平気よ~全然引きずっていないわ。
まぁ条件は最高に良かったし、親が決めた結婚なんだけどね~。
私の意思は二の次でね~・・・あまりその相手が居なくなってもなんとも感じなかったわ。
運命の人ではなかったのかもね~。」
エリカがちびちびリンゴ酒を飲む。
「じゃあ、エリカさんは恋愛をした事がないんですか?」
鈴音が聞いてくる。
「ないなぁ・・・恋愛って本とかに出てくるやつでしょう?
・・・あの結婚には何にも感情はなかったなぁ。
親が決めて私もそれが良いんだと思っていたし・・・スズネやサリタは恋愛したことあるの?」
「私はもうずいぶん昔ですね。
近くに寄れなくて遠くから見ているだけでしたけど。」
「うわぁ、スズネちゃん乙女ね。私は・・・あ、ないなぁ。
周りが皆職人達だったからストイックな人ばっかだから恋愛という感情はなかったなぁ。
それよりも兄弟子とか家族とかの感じしかないなぁ。
アズパール王国では恋愛しないとなぁ。」
「そう言えばタケオ様が面白い事を言っていましたよ。
私にプロポーズする時にタケオ様は覚悟したそうですけど。」
「「「覚悟?」」」
女性4人が食いつてくる。
「はい。
『アリスお嬢様が運命の人かどうかはわからない。
でも時には笑いあい、時には喧嘩もし色々な事を経験して10年後、20年後にアリスお嬢様こそ運命の人だったんだと言えるように過ごして行こう。』そう覚悟を決めてくれたそうです。
タケオ様の言葉は良い言葉ですよね~。」
アリスが照れながら周りの女性陣に言う。
「良いなぁ~。タケオさん、やっぱり女性の心を一気に持って行くわね。」
「そのぐらいの事を言う男性はいますかね?」
サリタがアリスに聞いてくる。
「わからないです・・・私も初めてだったし・・・でも相当嬉しかったのは確かです。
もう『あぁ!なんて良い考え方なんだろう!』と感激しちゃいましたよ。」
アリスがデレデレする。
「私はどうやって恋愛を経験すれば良いのかしら?」
エリカがため息をつく。
「そこは何とも・・・タケオ様はダメですからね!」
「はいはい、わかったわよ~。
貴女のタケオ様は取らないわよ。」
「わかれば良いんです、わかれば。」
アリスがウンウン頷く。
「うぅ・・・エリカ様~!」
「うわ!なに?どうしたのカサンドラ!?」
カサンドラがエリカに泣きながら抱きついてくる。
「すみません!エリカ様が婚期を逃してばっかで!」
「ちょっと待ちなさい!?逃してばっかとはなによ!まだまだこれからよ!」
「だって!私達配下がしっかりしてないから良い男性が名乗りを上げなかったんです!
ごめんなさい!エリカ様~!」
カサンドラが泣きながら喚く。
「違うわよ~。」
「上2人の兄君は変な死に方するし!弟君は結婚してないし!
私達が悪いんですー!」
「違うわよ!上は病死と事故でしょ!チコは父上達が選定中よ!
私の婚期とは関係ないわ!
あ!タケオさん!こっち!逃がさないわよ!」
エリカは戻ってきた武雄を捕まえて宴を楽しむのだった。
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