第495話 ヴィクターの考察。コラットル王国とは?
武雄とアリスとマイヤーはヴィクターに連れられて皆から少し離れた場所に来ている。
「どうしましたか?」
「はい。
先ほど、あの2人は『コラットル王国』と言いました。」
「ええ、言っていましたね。」
「少し話は逸れますが、実は魔王国というのは建国が550年前になります。」
「建国が550年?」
武雄が聞き返す。
「はい。
マイヤー殿、アズパール王国ではなんと教えているのでしょうか?」
「・・・魔王国の建国については何とも・・・
アズパール王国の建国が約600年前ですが・・・それと関係がありますか?」
「アズパール王国が600年前になるという事は・・・なるほど、そういう事ですか・・・
私も文献のみでしか知りませんが、魔王国建国の当時、西側から人間の攻撃が頻繁になっていたそうです。
各々の種族が国を形成していて別々に戦っていたのですが・・・どんどん国が消滅していくなかで、統括的な国を作ろうと立ち上がった数国があり・・・それが魔王国の建国に繋がります。」
「なるほどね。
いろんな種族を統合運用する為に皆の上に判断する者を置いたのですね。」
「はい。
そして現在までに消滅した国の中にコラットル王国があります。
今の魔王国でいう西南にある森妖精の国の原型です。
今は違う国名を言っているはずですが・・・えーっと・・・何だったか・・・私達とは交易も友好も無かったので名前がすぐに出てきません。」
「ヴィクター、ちなみに西南はエルフの国なんですね?」
「・・・気が付きましたか。
西南のエルフは国で、東のエルフは魔王国の一領主となります。
魔王国に組み込まれるのを嫌った分家が西南に国を興した形になります。
その際にコラットル王国の元住民を取り込んでいるはずです。」
「・・・キタミザト殿、ヴィクター殿の話ではこれは結構複雑です。魔王国は関係がないとなってしまいます。
あの子供達を帰還や返還をする為には西南のエルフの国と直接の外交が必要でしょう。
ですが・・・魔王国が使節団を通らせてくれるとは考えられません。」
マイヤーが助言してくる。
「マイヤーさんの言う通りかもしれませんね。
わざわざ敵対している国の使節を通す謂れは魔王国にはないでしょう。
それにヴィクターの以前の話では、テンプル伯爵領と森を挟んだ反対側にあってその森はかなり危険なのでしたね?」
「はい。
蟲とスライムの群生地帯ですので容易には通れないかと。」
「・・・タケオ様、どうしましょうか?」
アリスが聞いてくる。
「今の国名とは別の亡国の国名を言っているとなると・・・私と同じ異邦人かもしれないですね。」
「キタミザト殿は異世界・・・あの子たちは過去から来たと?」
マイヤーが聞いてくる。
「可能性の話です。
普通に考えて現在の国名があるのにわざわざ500年くらい前の国名を出すとは思えません。」
「ですが、今でも教えている可能性はあります。」
ヴィクターが言ってくる。
「確かにそれは言えますね。
確認が必要ですが・・・ヴィクター、さっきの国の話はどうあの子達に聞いてみますか?」
「何とも言えません。
過去からの異邦人だったとして・・・自分の国が無くなっているというのは認められるのか・・・」
「タケオ様、子供に現実を教えるのですか?」
アリスが心配そうに言ってくる。
「ふむ・・・難しい判断ではありますが・・・
ヴィクター、エルフの寿命はどのくらいと言われていますか?」
「さて・・・長寿ではあります。
たぶんドラゴンと同じ1000年程度だとは思います。」
「なるほど。
あの容姿ではそこまでの年齢ではないでしょう。
それに言葉を濁してもすぐにわかることです。
・・・アリスお嬢様、時と場合に依りますが、私は子供に対して嘘を言う必要は基本的にないと考えています。
子供は確かに知識面では大人より劣っているかもしれません。
ですが、子供は子供なりに大人の言い分をちゃんと聞いています。
ちゃんと真実を言いそして自らに考えさせる必要があるでしょう。
結果的に退廃的な行動を取るかもしれません。
ですが、それはあの子達が選んだ結果であり、そこに導いてしまった大人の責任です。
そうならないように手助けをするのが私達大人の役割です。」
「タケオ様、何とかなりますか?」
「幼子が・・・いえ違いますね。
人間や人間とほぼ同一の形をして意思疎通出来る者が路頭に迷う事を良しとは考えていません。
あとは良い方向に行くように皆で考える必要があるでしょう。」
「「「はい。」」」
その場の全員が頷く。
「じゃあ、戻りますか。
あまり打ち合わせをしていると不審がられます。」
武雄達は皆が居る席に戻るのだった。
・・
・
「おかえりなさい。」
フォレットが朗らかに武雄達を迎える。
「あの・・・僕達の事で幹部の方々が話し合っていたのですよね?」
ミルコが恐る恐る聞いてくる。
「幹部・・・まぁ、間違いではないですね。」
武雄は苦笑する。
「あの!・・・助けて頂いて感謝はしています!
ですが!何卒、奴隷だけは勘弁してください!!」
「ください!」
アニータとミルコが頭深々と下げて懇願してくる。
「あれ?何だか話が変な方向に行っています?」
武雄がマイヤーを見る。
「えーっと・・・奴隷の話はさっき断っていましたよね?」
マイヤーはアリスを見る。
「はい。
確かにヴィクターとジーナは現状は奴隷という身分ではあります。
ですがエルヴィス家の者です。私達エルヴィス家は使用人は皆、家族だと思っています。
家族を冷遇する必要も無下にする必要もありません。」
アリスがきっぱりと言う。
「アリス様。」
ジーナが感謝の念をアリスに向ける。
「とりあえず、私達が話していたことをアナタ達2人にも聞いて貰います。」
武雄は2人に対して話し始めるのだった。
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