第5話 ツマミは美味い
北見里 武雄は声が耳に入っていない状態継続中。
あぁ失敗したかも手打ちにされるのかと悲しみに浸っていた。
エルヴィスおじいさん(様)は、近寄ってきた兵士っぽい者と会話をしているが、
なんだかいろいろ詰め寄られている感がありますが?
「はぁ・・・で、この者はどなたでしょうか?」
兵士っぽい者が唐突にこちらを向きエルヴィスに聞いた。
何気に片手を帯剣に伸ばさないでください。
怖いです。
「うむ、この者はタケオという。わしを救ってくれたのじゃ。
客人として家に招くのでそのつもりでおれ。」
「はっ!承知いたしました。」
剣を抜くのをやめてくれました。
ありがたい。
「ちなみに、わしは足をやってしまってのぉ。」
「そちらも承知いたしました。おい!屋敷に行き馬車を用立ててこい!
もう一人お連れする旨も伝えてこい!」
その命令を聞き、もう一人の兵士っぽい者が颯爽と馬で走っていく。
「ふむ、わしらは馬車が来るまでここで待っておれば良いのじゃな?」
「はっ!馬車を用立てますので大体、晩課の鐘の前には乗り込んでいただき、鐘が鳴るころに屋敷に戻れると思われます。」
「タケオ、聞いての通りじゃ。もちろんお主も来るじゃろ?」
「ええ、目的は送り届けることですので、それは平気ですが。」
「が?」
「今更ですが、突然訪問しても良いものなのですか?」
「わしが言うとるから問題ないじゃろ。」
「エルヴィス様は」
「なんじゃ、タケオ。いきなり『様』付けしおって。さっきまでの『さん』で良い。」
そんな事を言われたって、隣に様付けで呼んでいる剣を持った人がいるのにできるわけないでしょ。
ちらっと兵士っぽい人を見ると目が合う。
「公の場では問題ですが、今はエルヴィス様が良いと仰っていますので問題はないかと。」
と武雄の心の声が聞こえたのか、苦笑しつつ答えてくれる。
その答えに、目礼をして答える。
「では失礼を承知で聞きますが、エルヴィスさんはどのくらい偉い方なのですか?」
「ふむ、その答えは今は言いたくないのぉ。
屋敷に帰ってお茶でも飲みながら語りたいことじゃな。」
「わかりました。今はその答えで十分です。」
「ふむ。ちなみにまだまだ時間はかかりそうだが、タケオ、なにか食べ物あるかの?」
そう言われバッグを確認する。
確かツマミが結構あったような・・・そのなかで柿●ーを取り出し。
「こんな物しかありませんが?食べます?」
「ふむ、見たことがないが頂こう。」
軽く袋を開けて手渡し、興味津々という感じで食べ始める。
「美味いっ!!タケオ、もっとくれ!」
「ダメです。食べ過ぎると鼻血がでるかもしれませんのであげません。」
「なぜじゃ?食べ物ごときで鼻血が出るわけなかろう?」
「いや、エルヴィスさん、今顔が温かくなっていませんか?」
「割と温かいが、それがなんじゃ?」
「それを食べたので体の血がよく回り始めていて、食べ過ぎると鼻血がでることがあるのです。
外で鼻血を出している人と馬車を待ちたくはありませんよ。」
「・・・それは恥ずかしいのぉ。」
諦めたようだ。すっごい残念な顔をしていますけど・・・
しょうがない、一言付け加えるか。
「まだありますから、屋敷に帰ってからお渡しします」
「なに!?ホントか!?まだ馬車は来ないか!!!?早く帰るぞ!」
まぁ楽しみにしてくれていて何よりだ。
「実際のところ、どうなのですか?」
兵士っぽい者がこっそりと私に尋ねてくる。
「何十袋とか過剰に食べるとなるかもしれませんが、3、4袋食べたって何にも問題ありませんよ。」
苦笑しつつ答える。
兵士っぽい者も苦笑を返してきた。
「馬車はまだかのぉ。」と何か子供みたいなことをつぶやいているおじいさんを見ながらマッタリするのだった。
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