第489話 42日目 小銃改1の調整と現地での監視。
早朝の町の門前にて。
「ドンっ」と音と共に「ドガッ」と木に命中し炎が出ていた。
「当たり始めましたね。」
伏せている武雄の横でアリスが呟く。
「この距離で良く当たりますね。」
アリスの横に居るマイヤーが呆れている。
武雄は弾丸を無制限に消費出来るのを良いことにもう20発程度撃ちながらスコープの調整をしていた。
ちなみに調整距離は500mなので正確に当たっているのかは武雄にしかわからなかった。
スコープの倍率は武雄の目測で3.5程度で固定されていると感じていた。
「主、寝ていて良いですか?」
「きゅ?」
「ニャ~?」
チビッ子達がフラフラしながら武雄に聞いてくる。
「出発の時に起きないならリュックに入れますからね。」
「は~い。」
「きゅ~。」
「ニャ~。」
チビッ子達が頷き少し離れたら武雄のリュックがある近くで寝始める。
・・
・
武雄はさらに20発程度撃ち、体を起こす。
「・・・また木が倒れましたね。」
「3本目でしょうか。」
「同じ所を撃つからです。」
武雄の呟きにアリスとマイヤーも呟く。
「ついつい狙いたくなりますね。
マイヤーさん、威力的にエアロウォールを抜けられると思いますか?」
「十分かと。ただ魔物に到達した際の威力はわかりかねますね。
相手の魔法師がどのくらいの厚みにしているのかで変わるかと。」
「なるほど。
どちらにしても戦う際は試し撃ちが必要ですか・・・」
武雄は考える。
「そういえばアリスお嬢様、剣を変えたのですか?」
武雄はアリスが持っている黒い剣を見ながら言う。
「はい。王都に着いて最初に行った武器問屋さんに行ったら勧められました。
しっくりきましたので買っちゃいました♪」
アリスが楽しそうに言う。
「ほぉ、良い物が買えたのですね。」
「はい。タケオ様的にはどう思いますか?」
アリスは若干心配そうに聞いてくる。
「ん?アリスお嬢様が気に入ったならそれで結構ですよ。
自分の感覚は大事にするべきです。」
武雄が朗らかに返す。
「ほ・・・お金はタケオ様に請求なので怒られるかと思いました。」
アリスが何やら言うが武雄は「私持ち?」と少し首を傾げるのだった。
「用意が出来ました!」
アーキンと兵士が武雄に報告にくる。
「はい、ご苦労様です。
貴方が案内を?」
「はっ!監視の交代員も準備出来ています!
あと簡易な荷車も用意が出来ていますので向こうで軽食を取れるようにしています。」
「ありがとうございます。
増援が来るまでは待つつもりですが、偶発的な戦闘もあり得ます。」
「はっ!その辺は気を抜いたりしないように厳命してあります。」
「では、出立しましょうか。」
「はっ!総員騎乗!」
武雄達と兵士達が移動を開始するのだった。
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「はぁ・・・夜が明けたかぁ。
木の上に逃げて随分経ったなぁ・・・」
木の中腹で少女は朝日を見ていた。
木の下を見るとリザードドラゴンが口を開けて待っているし、少し遠くを見ると人間らしき者達が居るのもわかる。
「・・・はぁ。」
少女のため息は重い。
「ん・・・お姉ちゃん。」
隣で寝ていた少女と同じ顔の少年が目を覚ます。
「おはよう。」
「・・・夢じゃなかったんだ・・・」
目を覚ました少年は落胆する。
「・・・昼まで私が寝るわ。
ウォールをお願いね。」
「わかった。」
少女はその場で木にもたれ掛かりながらまどろみ始める。
何でこんな所に、何で私達が、なぜエアロウォールしか習わなかったのだろう。
いくつもの疑問といくつもの後悔が押し寄せるのだった。
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「キタミザト殿、着きました。
あそこに見えるのが監視隊です。」
「はい、ありがとうございます。」
案内をしてくれた兵士が武雄に言ってくる。
「私達は監視の引き継ぎと軽食を配ってきます。
向こうは休憩したら町に帰投だと思います。」
「はい、わかりました。
私達はその辺で見ています。」
「はい、では。」
兵士が離れていく。
武雄達は馬を降り始める。
「マイヤーさん、着いたそうですよ。」
「ええ、確かに森と草原の縁に居ますね。」
「見えるのですか?」
「キタミザト殿は見えないのですか?
まぁはっきりとではないですけど見えますね。」
マイヤーの言葉に他の面々が頷く。
武雄は「皆、目が良いんだね。」と思うのだった。
「さてと、目が悪いのでスコープで見ますかね。」
武雄は伏せ撃ちの体勢を取り森の縁を探すとすぐに目標を見つける。
「リザードドラゴンはこれですね・・・ワニが2足歩行しているのですか。
で、こっちがオーク・・・豚顔で2足歩行ですか。
・・・実物を見るとキツいな・・・」
武雄が魔物達を見ながら感想を言う。
さらには「出来るだけオークは食べないでおくか」と食材としてのオークは出来るだけ摂取しないでおこうと思う事にした。
「それにしてもヴィクターが言うように全く動く気配がないですね。
・・・なんでリザードドラゴンが上を見て・・・」
武雄がリザードドラゴンが見ている先を確認して言葉を無くす。
そして体を起こして考え込んでしまう。
「タケオ様?どうしました?」
アリスが心配そうに聞いてくる。
「いえ・・・アーキンさん、バートさん、すぐに監視隊の指揮官達を呼んできてください・・・」
武雄は深刻な顔をさせながら言ってくる。
「「はっ!」」
アーキンとバートが走り出す。
「キタミザト殿?」
「マイヤーさん、見てください。」
武雄は場所をマイヤーに譲る。
マイヤーがスコープを覗き込む。
「おぉ、スコープは良いですね。
これは量産して欲しいですね。」
「マイヤーさん、右端がリザードドラゴンですよね?」
「はい、そうですね。」
「そこから左に3本横の木の真ん中辺を見てください。」
「3本横の・・・え!?」
マイヤーが体を起こして武雄に驚愕の顔を向ける。
「言葉にしてはダメです。
今は他の人にも見て貰いましょう。」
「はい!」
マイヤーが緊張した面持ちで頷く。
「じゃあ、アリスお嬢様。」
「はい・・・一体何が?」
アリスは心配そうに言われた先を見るのだった。
・・
・
監視隊の指揮官・・・さっきの兵も合わせて3名にもスコープで現状を見て貰い、マイヤー達5名も再度確認した。
皆が一様に緊張しながら車座になって座っている。
「・・・あれが何に見えたか・・・一斉に言いますか・・・」
武雄の言葉に皆が頷く。
「せーの。」
「「「「子供!」」」」
全員の答えが一致する。
「はぁ・・・私の気のせいで終わらせられれば良かったのに・・・
では、あれは子供が木の上に居るという事で良いのですね。」
武雄がため息混じりに言う。
「ええ、それ以外には見えません。
少なくとも発見した時から居たとして・・・約1日程度は木の上ですか・・・」
マイヤーが悩む。
「私達の落ち度です・・・」
監視隊の兵士達がガックリとする。
「この距離からでは発見できないでしょうから監視隊に咎はないですよ。
それにこれ以上近づいて事態が急変するかもしれませんので監視が目的なら十分に仕事をしています。」
武雄がそう労いマイヤー達が頷く。
「キタミザト殿、どうしましょうか?」
マイヤーが聞いてくるのだった。
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