第488話 41日目 寝る前に手紙を書かなくては。(研究所の間取りとマイヤー達の部屋探し。)
武雄とアリスは武雄の話の後、フリップの部屋に行きスコープの取付方法を確認、了承してから部屋に戻ってお茶をしていた。
そしてあまり時間を置かずにフリップがやって来て工房に必要な物を書いたメモを置いて行った。
そして武雄は今、アリスとお茶をしながら研究所の間取りを考えていた。
「~♪」
武雄はエルヴィス爺さんからの資料を見ながら間取り図にメモを書いている。
「タケオ様、楽しそうですね?」
アリスは武雄に何気なく聞く。
ちなみにちびッ子達は一塊になって寝ている。
「ええ。
1階のこの部分に喫茶店を作って、隣が倉庫ですかね。
で、2階が小隊の詰め所(着替え室含む)と書庫と倉庫、3階が研究所ですね。」
「詰め所と研究用の個室が5部屋・・・タケオ様、この広い部屋はなんですか?」
「会議室ですね。」
「じゃあ、ここは?」
「小会議室です。」
「ん?・・・そうするとタケオ様とマイヤー殿の部屋がありませんよ?」
「あれ?・・・本当ですね。」
武雄は間取りを変更していく。
「・・・今度は廊下がありませんね。
タケオ様、欲しい部屋のリストを書いて送った方が良いのではないですか?」
「・・・そうですね、部屋割りは専門家に任せますか。」
武雄も頷く。
と、部屋の扉がノックされ武雄が許可を出すとマイヤー達5人が入ってくる。
「失礼いたします。
キタミザト殿、アーキンとブルックに給料等の説明をして2人とも了承しました。」
「はい、ご苦労様です。
アーキンさん、ブルックさん、よろしくお願いしますね。」
「「はい!」」
「バートさんとフォレットは王都で?」
「はい。私は王都で頑張ろうかと。」
「上を目指すのも悪くはないですね。」
武雄は楽しそうにウンウン頷く。
「そうそう、今エルヴィス伯爵宛にいろいろ書いているのですが、住む部屋はどのくらいの間取りが必要ですか?王都ではどんな部屋に?」
「王都守備隊としてなら厨房と湯浴み場が付いている物件が良いですね。
勤務も結構時間がバラバラで店が開いている時に帰れなかったりもしますので。
既婚者なら皆が集まる広い部屋と夫婦の部屋と子供の部屋が必要でしょうか。
小さい部屋は2~3部屋必要ですね。
独身者なら広い部屋1つで良いかと。」
「なるほど。」
武雄は3LDKと1Kぐらいと簡単に考える。
「家賃はどうしていましたか?」
「給料から払っていました。
私の場合は小さい部屋が3つで金貨2枚銀貨2枚でしょうか。
アーキン達はいくらくらいだ?」
「金貨1枚と銀貨2枚ぐらいでしょうか。」
アーキンの答えに若手達が頷く。
「そうですか。
地方だといくらぐらいになるのでしょうかね。」
「・・・タケオ様、ちょっと・・・」
アリスが武雄を部屋の隅に引っ張っていく。
・・
・
「タケオ様、うちだとたぶん同じ間取りでマイヤー殿の方が金貨1枚銀貨4枚程度、アーキン殿の方は銀貨6枚程度だと思います。」
「やはり王都の方が上ですね。」
「・・・格差がわかってしまって悲しいのですけど。」
「これからエルヴィス領の価値が上がれば家賃相場も上昇するでしょう。
まぁある程度は抑制させて貰いますけど。
高騰して住民が住めない街を作っても意味がないですからね。」
「それはそうですけど。
わかっていはいたつもりですが・・・はぁ、やはり王都は何でも高いのですね。」
アリスと武雄はコソコソ話をすぐに止めマイヤー達の所に戻る。
「キタミザト殿、事前に部屋の間取りを選べたら良いのですけど。
エルヴィス伯爵にお願いをしていただけますでしょうか。」
「わかりました。
時間はかかるでしょうが、紹介できる物件の間取りを取り寄せましょうか。」
「ありがとうございます。
じゃあ、我々は明日の為に就寝します。」
「はい、わかりました。」
武雄が頷くとマイヤー達が退出して行った。
そして入れ替わって鈴音とフリップがやって来る。
「失礼します。
キタミザト殿、小銃にスコープの取付が終わりました。
賛課の鐘・・・午前3時以降に使用が可能だと思います。」
フリップがそう言い、鈴音が大事そうに持っていた小銃を机にそっと置く。
「タケオ様、何だか印象が変わりますね。」
「ですね。
明らかにやる気になっている銃になりましたね。」
アリスと武雄はマジマジと小銃改1を見ながら感想を言う。
「えーっと、要望通り銃身と並行に取り付けてありますが、若干の誤差はあります。
このツマミが左右で、こっちが上下の調整になりますので、実践前に調整をしてください。」
鈴音が説明をする
「わかりました。
朝、門前辺りで調整してから行きます。」
武雄が頷く。
「はぁ・・・若いのに説明がしっかりしていますね。」
アリスが鈴音を見ながら呟く。
「・・・アリスお嬢様、一つ誤解がありますけど良いですか?」
「はい、何でしょうか?」
「鈴音はアリスお嬢様より年上ですよ?」
「え!?」
アリスは武雄の一言に驚き、鈴音は「あはは」と苦笑する。
「ほ・・・本当に?」
「はい。私は22歳です。」
「・・・3つも上なのですか・・・
大変失礼しました!」
アリスが頭を深々と下げて謝る。
「いやいや!滅相もない!歳なんて気にしませんし、雇い主の婚約者様なんですから・・・その、アリス様は気になさらないでください!」
と鈴音も頭を下げて言う。
武雄は「私は『さん』付けでアリスお嬢様は『様』付けなの?」と格差を考えていたりする。
その後もアリスと鈴音の謝りが繰り返されるのだった。
・・
・
「じゃあ、お互いに『さん』で行きましょうか。」
「本当によろしいのですか?
私からは『様』付けで良いのですけど。」
「ええ、構いません。」
アリスと鈴音の話が決着する。
「フリップさん。」
「はい、何でしょうか。」
「工房兼住居と言うのをさっき言いましたが、どう思いますか?」
「それで構いませんが・・・広さはどのくらい何でしょうか。」
「さて・・・それなりに広いとは思いますのでその辺もエルヴィス伯爵に聞いておきます。」
「はい、お願いします。
では、私達はもう休もうかと思います。」
「はい、お疲れ様でした。
明日はのんびりとしていてください。」
「はい、では失礼いたします。」
フリップと鈴音が退出して行った。
・・
・
「タケオ様、お休みになられますか?」
アリスがミア達の毛布を掛け直しに行ってから再び席に着く。
「もう少しで手紙(報告書と願い書)が出来ますから待っていてくださいね。
えーっと・・・これが研究所についてでしょ。こっちがフリップさん達の工房兼住居の話と保育所の概要・・・これがマイヤーさん達10名の部屋の間取りのお願いと。」
「あれ?タケオ様。そのマイヤー殿達の間取りの所に工房に近い所と書いてあるのですね。」
「ええ。私の中ではフリップさん達を警護する意味を持たせていますし・・・そもそも庁舎街に部屋が用意できても生活できないでしょうからね。
なら今回の引っ越しで皆が近い所にいれば良いのではと思っただけですよ。」
「タケオ様的には研究所よりも工房が大事だと?」
「まぁそうですね。
懐中時計の製造方法は守らないといけないとは思っています。
住居だけで警護出来る訳ではないですから気休めですよ。」
武雄が苦笑する。
「さて、資料も一緒に送り返しますか。」
「持ち歩かないのですか?」
「ええ。概要だけ頭にあれば良いと思いますし、重たいですからね。あとは帰ってからで良いでしょう。」
武雄は袋に入れて密封するのだった。
「さて、アリスお嬢様、寝ましょうか。」
「はい。明日は狩猟ですね。」
「・・・まぁ、どうなるかわからないですけどね。」
「私とタケオ様ならどんな脅威にも対応出来ますよ。」
アリスは楽しそうに言う。
「心強い限りですね。」
武雄達は苦笑しながらベッドに入るのだった。
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