第483話 現状の報告会
「では報告いたします。
一報として魔物達は報告の通り森の端におり、移動をする事は今のところないと考えられます。
また同種の増援も周囲にはないだろうと考えられます。」
「そうですか。」
タケオは返事をし、他の面々は安堵する。
「ですが、少々問題があります。」
「何かありましたか?」
「森の端に集結しているのはハイオーク2体、オーク10体、リザードドラゴン1体と報告がありましたが、リザードドラゴンに違和感があり、風下であった森の方からの接近をしました。」
「どのくらいまで行きましたか?」
「200m程度まで。」
「なっ!」
同席していた兵士が驚きの声をあげる。
「監視隊の距離は?」
ニールが兵士に聞く。
「そ・・・草原の方から300mです。」
兵士が呟く。
「相手に発見は?」
「コラ殿、モモ殿が連携して動き、モモ殿が我らと違う方250mより遠吠え等で注意を引き、我々はジリジリと近づきました。
200mへの接近は発覚していないと考えられます。」
「そうですか・・・マイヤーさん。」
「はい、なんでしょうか。」
「ハイオークとオークそしてリザードドラゴンの詳細をお願いします。」
「わかりました。
文官殿、確か各町には魔物の挿絵が載っている資料がありましたね。
持って来ていますか?」
「はい、こちらに持って来ています。」
と文官がマイヤーに少し薄い本を渡す。
「えーっと・・・これと・・・これですね。」
マイヤーが中をペラペラ捲りながらその辺の紙を差し込む。
「キタミザト殿、この項目が今回の敵ですね。」
「はい、ありがとうございます。
じゃあ、説明をお願いします。」
武雄は言われたページを見ながらマイヤーに説明を促す。
「・・・じゃあ、これを見ながらしましょうか。」
マイヤーが武雄から本を取り上げる。
「さて、今回の敵は大別すればオークとリザードマンとなります。
ハイオークはオークの上位種、リザードドラゴンはリザードマンの上位種となります。
まずオークは体長1.5m~2mほどで2足歩行をします。
武器はこん棒か素手で、アズパール王国では害獣指定で駆除対象になっています。
ハイオークについては体長についてはオークと同じで若干肌が黒いはずです。
こちらは武器を持っていることがあります。
王国内での発見ではショートソードが多かったようです。
知恵についてはオークよりハイオークの方があり、厄介と言われています。
リザードマンは体長3m~4mほどで2足歩行をします。
長い口と硬度の高い皮膚を有しています。
武器は使わず基本的には素手や尻尾、口での攻撃をします。
リザードドラゴンはリザードマンの上位種で体長は一緒になります。
リザードマンとの違いは口の裂けが深くなる事と歯が大きくなる事、皮膚が剣での攻撃がほぼ効かないくらい固くなるという所にあり、攻撃は鈍器か魔法で行うのが一般的です。
たぶん巡回小隊では魔法が出来る者が少ないのでリザードドラゴンへの対処は時間がかかる物と思われます。」
「わかりました。
ヴィクター、補足と観察の結果をお願いします。」
「はい。
ハイオーク、オーク、リザードドラゴンの概要としては間違っておりません。
魔物の格としてはリザードドラゴン→ハイオーク→オークとなります。
どの魔物も雑食ではありますが、どちらかと言えば肉を好みます。
そして上位のリザードマンは下位のオークが居た場合は食事をすると考えられます。
ちなみに文官殿、発見からどれくらい経っていますでしょうか。」
「発見から大体・・・鐘2つかと思われます。」
「ありがとうございます。
では、リザードドラゴンは空腹になっていると考えられます。
なのにオークの数が初期の発見数より減っていない事に違和感があります。」
「なるほど・・・確かに言われると不思議に思うな。」
クリフが頷く。
「またリザードマンとリザードドラゴンはアズパール王国だと南東、魔王国では西南の森の中の湿地帯が主な生息地です。
基本的に奴らは湿地帯が生息域なのであのような森の端に居る事は違和感があります。
あとリザードマン系の種族は5、6体で1家族を形成し集団で移動しているはずです。
なので1体しかいないというのも不思議ではあります。」
「なるほどな。ヴィクターと言ったな。
他に何かあったか?」
ニールが聞いてくる。
「はい。
近づいて何となくわかったのですが・・・
個々の魔物にエアロウォールがされているようなのです。
魔物の周囲に揺らぎが若干あります。
なのでエアロウォールの影響によりリザードドラゴンがオーク達を襲っていないと推測します。」
「「なっ!?」」
武雄とアリス、チビッ子達以外の皆が驚く。
「エアロウォール?」
武雄がマイヤーを見る。
「風の中位魔法です。
風で壁を作り外と内で隔離させ、接触等をさせない魔法です。
使用方法としては弓矢を防御する方法として使っています。
また剣での突破は出来ますが、威力がかなり落ちると思います。
それにしてもこの長時間かけ続けるとは・・・大規模な兵団がいるのでしょうか・・・」
マイヤーが眉間に皺を寄せながら言う。
「いえ、マイヤー殿、あの森の周囲に大規模な集団はおりません。
密集して居るのは監視隊とあの魔物達のみで他の人間種や魔物はコラ殿も感じていないです。
魔物達周囲300m付近には何も他者が存在していません。」
「不可解ですね。」
リネットが腕を組んで考える。
「何かしらの魔法師が居るのだろうが、そのエアロウォールがいつまで持つのか・・・が我々への時間的な制限だろうな。
王都への増援は間に合いそうか?」
「早くて明日の昼前だろうと推測します。」
文官が苦渋の顔をさせる。
「ふむ・・・タケオ、どう思う?」
クリフが武雄に聞いてくる。
「現状では何とも・・・
それにもうすぐ日が暮れます。
夜間戦闘は私はしない方が良いと考えます。」
「そうだな。俺もタケオの言い分はわかる。
クリフ兄上、むやみに事態を動かす場面ではないと思います。
それよりも監視の継続と周辺の村の強化をし、攻撃は明日の朝・・・時間が許すなら昼まで待つべきです。」
ニールがクリフに言う。
「タケオ様、文官の方に依頼をして貰って私達で対処しますか?」
聞いていたアリスが武雄に聞いてくる。
「んー・・・先ほど文官殿から説明されたんですけどね。
私もアリスお嬢様も一応貴族枠なので文官殿からの要請で戦闘するのは憚れるそうです。」
「・・・ではこのまま見ているだけですか?
その魔法師・・・普通の兵士達で対応できるのでしょうかね?
マイヤー殿達なら何なく対処すると思いますけど。」
「アリス殿、私達5名でならその程度の対処はできますけど・・・王都守備隊ですし、名目上キタミザト殿の配下となっています。
今、私達が動くとキタミザト子爵の命令で強行したと王都で判断するかもしれないので・・・文官殿は私達にも要請が出来ないのです。」
マイヤーが難しい顔をしながら言う。
「そうですか・・・タケオ様。」
「はいはい、行きたいのでしょう?」
「ええ、皆が困っていますので。」
アリスが武雄に聞いてくる。
「じゃあ、抜け道を探しますか。」
武雄が楽しそうに言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




