第474話 エリカ達の考えと工房の面々の認識。
エリカとカサンドラは宿の一室でお茶をしてのんびりとしている。
「まさかタケオさんの婚約者が名高い鮮紅だとはねぇ~。」
「エリカ様、アリス殿に喧嘩を売るのはやめてください。
あの威圧・・・洒落になりません。」
「まったくよ・・・何あの威圧は?化け物じゃない。」
「エリカ様は平気そうだったのですが?」
カサンドラが驚きながら聞く。
「からかう気持ちが萎えたわ。
それに威圧だけで体が震えるとかはしないわよ。
威圧を受けたぐらいで体が震えるなら皇族なんてやってられないわよ。
いかなる状況でも堂々とするのが皇族ですからね。
でも正直、怖かったわ・・・」
エリカがガックリとする。
「・・・タケオ殿は良く鮮紅を娶ろうと考えましたね。」
「まったくね・・・あの威圧を受けても平然としているしね。」
エリカとカサンドラはため息をつく。
「少なくともタケオ殿は英雄の旦那だとわかりましたね。」
「どちらにしても今夜説明があるのでしょう。
何だか問題事が発生しているみたいだけど。」
「そうですね。
ですが、マイヤー殿や他の護衛が動じてないのでそこまでは大事ではないのでしょう。
門前の兵士も集合とかはしていませんでしたし。」
「なるほどね。
まぁどちらにしても私達は戦闘に巻き込まれないでしょうね。」
「旅人に要請するなら相当な時でしょう。
ところでエリカ様はタケオ殿の事をどう思っているのですか?」
「どうとは?」
「単刀直入に聞きます。結婚したいですか?」
「ん~・・・」
エリカが腕を組んで悩みだす。
「この間も随分と突っ掛かっていましたが・・・違ったのですか?
恋をしたとまで言いませんが気になるのでしょう?」
「う~ん・・・カサンドラ・・・その・・・馬鹿にしないで聞いてね。」
「何でしょうか?」
「恋ってどんな感じなの?」
「・・・そこからですか?」
カサンドラは呆れながら言う。
「恋というのは甘酸っぱくて、この人の為なら何でもしてあげようとか、四六時中その人の事を思ったりするのでしょう?
本で読んで知ってはいるのだけど・・・私は今まで一度も経験がなくて・・・」
「結婚したではないですか。」
「・・・親が決めたし、条件は良かったわよ。
それに小さい時から皇族の女子は良い条件の男性と結婚して子供を生んで育てる事が使命と教わっていたし、私もそうだなぁと受け入れていたし・・・
まさか自由の身になるとは考えもしなかったわ!」
「それも帝王学の一環なのでしょうが・・・
そうですか、エリカ様は恋自体を知らないのですか。」
「よく本とかに『この男性は素敵』とか『この男性はカッコいい』とか・・・全くわからないのよ。」
エリカがため息をつく。
「・・・こればっかりは私でも対処できませんね。
エリカ様が『この男性と一生を添い遂げたい』と思うまでいろんな男性と会うしかないでしょうが・・・」
「私再婚出来るかな?」
エリカが心配そうな顔をしてカサンドラに聞く。
「・・・今のままでは難しいのではないでしょうか。
それにもしかしたら会った瞬間に『この男性!』となるかもしれませんし・・・
まぁとりあえず今はどこに定住するかも決めていないのですからどこかに少し住んでみてからゆっくりと考えても良いかもしれませんね。」
カサンドラは苦笑いしながら答えるのだった。
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工房の6名は一室に集まっていた。
「はぁ・・・キタミザト様の婚約者が鮮紅のアリスだとは思わなかったですね。」
ビセンテが呟く。
「随分と大物がキタミザト様の隣にいるの。」
シントロンも頷く。
「あの鮮紅でしょう?本を見た兵士達にアズパール王国の宣伝だとか何とか言われていたよね?」
サリタが考えながら言う。
「あまりにも出来過ぎていたしなぁ。
それにしてももっとゴツイ女性かと思っていた・・・良いとこの令嬢じゃん。」
バキトが呟く。
「あの体格で鮮紅だと言われても信じられなかったが・・・あの威圧は凄まじいな。
キタミザト様とエリカさんは流石に動揺もしていなかったが・・・」
フリップがガックリしながら言う。
「あんな細いのにあの武勇伝が出来るのなら凄い事ですよね。
まぁ多少の誇張はあるんだろうとは思いますけど。
それにしても武雄さんとエリカさん、威圧に何ともなく接していて怖くはなかったんですかね?
私達は部屋の隅まで逃げましたけど。」
鈴音が苦笑しながら言う。
「スズネ、あの威圧を受ければ逃げるのが普通の民よ。
2人が異常なのよ。」
サリタがため息をつく。
・・
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皆は武雄とアリスについての話でワイワイ盛り上がっていく。
基本的な認識として『キタミザト様は意外と凄いバックが付いているのではないか?』、『婚約者のアリス殿に敵対するわけにはいかないので大人しくしていよう。(ただし無理難題は断るしかない。)』という物だ。
そして今の小銃と懐中時計の原価と必要な素材をリストにした物を皆で見ながら不足がないか確認をするのだった。
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