第472話 武雄とアリスの話し合い。(鈴音と小銃の事。)
「つまりはカトランダ帝国にはタケオ様と同じ知識を持った者が居たという事ですね?」
「そうなりますね。
知識量は鈴音の方が上かもしれませんが。」
「ではあの子が小銃の開発をしたのですか?」
「んー・・・説明は難しいですが、簡単に言えば小銃と懐中時計の原型が元々ステノ工房にあったそうでそれを動かせるように皆に意見し、指導したそうです。」
「元々あった??」
アリスが訝しがりながら聞いてくる。
「何でもステノ工房を起業したステノという人物が冒険者組合の創設者から譲られたという事です。」
「・・・それって何年前なんですか?」
「少なくとも100年前らしいですよ?」
「何者でしょうか。」
「さて、私ではそこはわかりません。アリスお嬢様、初代冒険者組合長の伝記は売っていますか?」
「んー・・・実はですね。
歴代で謎が多い人物の上位に初代冒険者組合長が居るんですよ。」
「謎ですか?」
「はい。本人の遺言により初代冒険者組合長の出自や足跡・・・さらには家族構成まであらゆる資料が破棄されたと言われています。
好きな食べ物であったりは口伝で残っているようですが・・・」
「徹底的に情報統制が敷かれたのですね。
それほどまでに秘匿すると何があるのか知りたくなります。」
「はい。ですから巷に溢れている初代冒険者組合長の伝記物は誰かが現存する数少ない資料を集めたりして考察した物なんです。
そして見方に寄っては意見が正反対になっていたりします。」
「なるほど。
それはそれで読んでみたいですね。」
「確か屋敷の一室に押し込んでいますので帰ったら読んでみたらどうでしょうか?」
「はい、わかりました。
で、鈴音ですが、この世界に来て5年だそうです。」
「5年・・・あんなに小さいのに・・・」
アリスは悲しそうな顔をするが。
武雄は「まぁ来た当時が高校生なら小さいと言えるかな?」とその辺は言及しない。
「私からすれば先輩になりますね。」
「タケオ様が後輩・・・年上なのに後輩?
ふふ、何だか変です。」
アリスがクスクス笑う。
「私はまだ1か月ちょっとしかいませんからね。」
「その割りには随分といろんな事に手を出していますね。」
「まったくです。
人脈もそうですし、やらなきゃいけない事も多くありますね。
まぁ、半分以上は工房の人達や小隊にさせますけど。」
「タケオ様が全部やらないのですか?」
「私にはそんな知識はないので、出来上がった物の評価はしますが、途中の過程は専門家に頼りますよ。」
「むぅ・・・それで良いのですか?」
「良いですよ。
専門家がした方がまともな物が出来ると思います。
知らない人がしても時間ばかり取ってしまうでしょうからね。」
「そういう物ですが・・・それは楽しいのでしょうか?」
「ええ、私に取っては楽しいですね。」
「では、問題ないですね。
で、その子をどうするのですか?工房を保護して終わりですか?」
「いえ、研究所の研究員にしてみようかと思っています。」
「なるほど。間接的に国の管理下に置いてしまうのですね?」
「ええ。私と国の目がありますから・・・そうそう暴走はしないでしょう。」
「暴走って・・・まぁタケオ様の話だと小銃は使い方が難しい兵器ですけど、そこまでですか?」
「私はそう思いますね。
一村や町、領地の変革ではなく国もしくはこの世界の戦争形態も変えてしまうぐらいの兵器ですからね。
ちゃんと見ておかないといけません。」
「でもタケオ様はそんな小銃をあの工房に作らせるのでしょう?何だかちぐはぐです。」
「そうですね。
他人から見ると普及することは恐れているのに自身の部隊には装備させたいというのは変かもしれませんが、私的には当然です。
他の組織よりも自分の配下には良い武器を持たせたいでしょう?」
「それはわかりますが・・・でも自分の部隊に配備すると周辺諸国にわかってしまって同じ物が作られてしまいますよ?」
「んー・・・アリスお嬢様、そもそもこの小銃はカトランダ帝国で既にお披露目されている物なんです。
なのでもう秘匿技術ではないのです。
だとしたら既に作っている国があってもおかしくはないですね。
それに私達がその周辺諸国なのです。
相手が小銃を大量に配備したら流石にこちらも大量生産をしないとはいけないですが・・・その兆候がないのでとりあえず私の配下に装備させようというだけです。
それに試験小隊ですからね。変わり物の兵器を配備していても大して興味は示されないかもしれません。」
「私的には試験小隊が配備しているからこそ興味を持ってしまうと思いますけど。」
「ふむ・・・確かにそうかもしれないですが・・・
まぁ良いです。
そうそう真似はされないでしょう。」
「なぜですか?」
「他領に向けて出荷を今の所する気が無いので武器の流出を抑えられますから。
外見を見ただけでこの小銃が作れるとは思いません。」
「そう言われればそうですけど・・・」
アリスは腕を組んで「んー・・・」と悩む。
「まぁなるようにしかなりませんよ。」
武雄はあっけらかんと言いのける。
「タケオ様は良く考えている時と楽天的な時の差が激しいです。」
アリスはため息をつく。
「それも楽しいでしょう?」
「まぁ・・・確かに。」
「それに武器を他領に卸してから真似はされるでしょうね。
それにしたって数年後の予定ですから今から心配しても仕方ありません。」
「むぅ・・・まぁまたこの議論はする必要があると思います。」
「ええ、またいつかしましょうね。」
武雄はジト目のアリスににこやかに言うのだった。
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