第469話 アリスと武雄が合流。
目的の町の門前に着いたのだが・・・数名の兵士が慌ただしく行き来していたりする。
と、クリフ付きの護衛兵が武雄に寄って来る。
「キタミザト殿、失礼します。」
「はい、どうしましたか?」
「私も詳細はまだですが、殿下より宿に一旦全員入り、キタミザト殿とマイヤー殿は夕食前にクリフ殿下達が泊まる宿まで来るようにとのとこです。
先に第2皇子一家が宿に入っている模様です。
何やら少々問題事が発生したとの事です。」
「わかりました。
私達の宿はどこでしょうか。」
「はっ!もうすぐ町の者が・・・あ、来ました。
あの者が誘導しますので宿に入ってください。」
「わかりました。」
武雄が頷くと護衛兵がクリフ隊に戻るのだった。
「マイヤーさん、問題事らしいですよ。」
「ですね。
何でしょうか・・・そこまでの緊急事態ではなさそうですね。」
マイヤーが周囲を見ながら言う。
「あ・・・あの!宿まで先導いたします!」
「はい、よろしくお願いします。」
町の者の先導を受けながら武雄達一行は宿を目指すのだった。
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「クゥちゃん・・・タケオ様、遅いですね。」
「きゅ。」
アリスはクゥを抱きながら宿のロビーで待ち構えていた。
と、宿の扉が開き武雄達が入ってくる。
「タケオ様!」
アリスが武雄に駆け寄る。
「アリスお嬢様、お疲れ様です。」
「はい!タケオ様もご無事で何よりです!
きゃ!」
武雄はアリスを軽く抱擁する。
アリスは「えへへ♪」と笑みを漏らす。
「きゅ~・・・」
アリスと武雄に挟まれる形のクゥは苦しんでいたりする。
「クゥも王都でのお留守番お疲れ様。」
「きゅ。」
「クゥ、大丈夫でしたか?」
ミアが武雄の内ポケットから顔を出して聞いてくる。
「きゅ。きゅ。」
「王都のご飯が不味かったとはなんです?
ちゃんとプリンが出たのでしょう?」
「きゅ!」
「なるほど、街中に行ったのですか。
大して美味しくなかったのですね。」
「きゅ?」
「私の方ですか?
主が新作を作りましたよ。」
「え!?」
「きゅ!?」
アリスとクゥが同時に武雄を見る。
「ええ、アリスお嬢様とクゥにも今度食べてもらいますよ。」
「きゅ♪」
クゥが頷く。
「・・・」
アリスは微妙な顔をさせる。
「と、そうそう。
皆さん集合!」
武雄の言葉に工房の面々とエリカ達が集まって来る。
「何でしょうか、キタミザト様。」
フリップが皆を代表して聞いてくる。
「ええ、こちらが私の婚約者で。」
「皆さま、初めまして。
アリス・ヘンリー・エルヴィスと申します。」
軽くスカートの両端を持ち、
片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま綺麗に挨拶をする。
「・・・アリス?・・・エルヴィス?・・・き・・・キタミザト様!本当に?」
サリタが顔を引きつらせながら武雄に問いかける。
他の面々は目を見張っている。
「良くわからないですが・・・嘘も何もこの方が私の婚約者ですよ。」
武雄は苦笑しか返せない。
「アズパール王国のエルヴィス家のアリス・・・鮮紅ではないのですか!?」
「ええ、そうですよ。」
サリタの言葉に武雄は頷く。
「え?・・・なんで?・・・相当な有名人なのでしょう?」
「本になっていましたね。」
「うちにも売っていました!
だから知っているのです!」
「サリタさん、とりあえず落ち着きましょうね。
まぁ、さっきも言いましたが、アリスお嬢様が私の婚約者ですね。」
「・・・アリスお嬢様??・・・その言い方からするとタケオさんはエルヴィス家の文官なの?」
エリカが聞いてくる。
「文官・・・まぁ文官なんでしょうね?」
武雄がアリスに顔を向ける。
「正確にはエルヴィス家当主の補佐兼相談役ですね。
タケオ様は文官、武官の組織に組み込まれていませんし・・・エルヴィス家の直属でしょうか?」
アリスが悩みながら言う。
「なんでしょうね?」
武雄も悩む。
「キタミザト殿、とりあえず皆と挨拶をさせないと・・・」
マイヤーが進言してくる。
「そうですね。
アリスお嬢様、執事を雇いました。」
「アリス・ヘンリー・エルヴィス様。
私はヴィクターと言います。
今度、キタミザト様の下で家令兼執事をさせていただきます。
この度は」
ヴィクター達々がアリスに挨拶をしていく。
・・
・
「今後ともよろしくお願いします!」
鈴音が深々と頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
アリスはにこやかに対応をする。
「じゃあ、次はエリカさん達ですね。」
武雄がエリカに向かって言う。
アリスはピクッとする。
「はいはい。
私はエリカ・キロスと言います。
よろしくお願いしますね、鮮紅殿。
まさか噂に聞くアズパール王国が誇る英雄と挨拶が出来るとはねぇ。」
「はい、アリスです。
こちらこそよろしくお願いします。」
アリスは伏目がちに答える。
「ん~・・・」
エリカが少し考え・・・唐突に武雄に軽く抱き着き、自らの腕を武雄の腕に絡ませてみる。
「な!?」
アリスは驚愕の表情をして一瞬固まるがすぐに思い直し睨みながら魔眼を発動する。
「「「「はぁ!?」」」」
工房の人達は一斉にその場から退避しロビーの端まで行く。
ヴィクター達は武雄の後ろに移動している。
「ふふん。鮮紅殿、冗談よ。
まだまだねぇ。」
エリカが苦笑しながら武雄から身を離す。
「あ、こっちが私の従者で。」
「カサンドラ・ラバルと言います。
アリス殿、大変失礼しました。ですが、旅の最中は何もなかったのでご安心ください。」
カサンドラがアリスに礼をする。
「うぅ・・・!よろしくお願いします!」
アリスはそう言ってから体を反対方向に向けてプルプル震えている。
「あぁ・・・エリカさん、やり過ぎですよ。」
武雄はため息をつく。
「だって・・・明らかに私に何か思っている感じなんだもの。
イジりたいでしょう?」
「まぁ、アリスお嬢様をイジって楽しいのは確かですが。」
「タケオ様!?そのオン・・・エリカさんの肩を持つのですか!?」
アリスは武雄にキッと睨む。
「あぁ・・・矛先がこっちに・・・
はぁ、久々だししょうがないかぁ。」
「きゃ!」
武雄はため息を漏らし、アリスをお姫様抱っこする。
「マイヤーさん、2時間後にここに集合で。
私はアリスお嬢様と話し合ってきます。」
「はい、わかりました。」
マイヤーが頷く。
「ミア、クゥ、タマ。マイヤーさんと居なさい。」
「はい、主。」
「きゅ。」
「ニャ。」
チビッ子達が頷く。
ミアとクゥは床まで降りてマイヤーの下に行く。
タマはぴょんと武雄のリュックから飛び降りていた。
「ちょ!・・・タケオ様!まだ私も言いたい事が!」
アリスは抱えられながら抗議をするが。
「はいはい、部屋で聞きますからね。
と、アリスお嬢様、私達の部屋はどこですか?」
「あっちの一番奥です!」
アリスが腕を伸ばして答え武雄がさっさと向かう。
・・
・
「皆さん、そういう訳で受付後は、とりあえず部屋でのんびりとしてください。」
マイヤーが武雄を見送ってから皆に向かい言う。
「わかりました。」
フリップが頷く。
「マイヤー殿、私達はどうしましょうか。」
ヴィクターとジーナが聞いてくる。
「お2人とも2時間後に集合で構いません。
あと、皆さんにも言っておきますが、キタミザト殿の部屋には近づかない方が良いでしょう。
男女の痴話喧嘩なんて聞いていても面白くはないでしょう。」
「そこはわかっているわよ。」
エリカが苦笑を返し皆も頷く。
「では、解散で。」
マイヤーの号令で各々が受付を済ませるのだった。
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