第466話 画策する者達。
アズパール王国のアリス達が居る町から直線で7km程度の森の縁。
「!」
ローブを被った男性が声も出さずに絶命する。
外傷は小さいナイフが心臓付近に正面と背後から刺さっていた。
と、ローブを深く被った3名が別々の方向から絶命している男性に近寄ってくる。
この話の中では甲乙丙としよう。
「・・・ふぅ。
間に合ったか?」
甲が呟く。
「・・・どこが?・・・折角作った魔力溜まり・・・魔法陣・・・起動してる。」
「げっ!」
「間に合ってないじゃん。」
乙の呟きに甲が面倒くさそうな顔をし丙がため息をつく。
「ウィリプ連合国での休暇を切り上げたのに・・・失敗かよ。」
「・・・報酬減・・・」
「俺だって表向きの仕事でカトランダ帝国から帰ってすぐにこっちだよ?
どうすんの?報酬減なんて嫌だよ!」
各々が報酬の減額に頭を悩ませる。
ちなみに甲乙はエルヴィス領を襲撃を目論んだ2人組、丙はルイ・セイジョウだ。
「・・・それよりもアズパール王国には当分なにもしない方針だっただろう?」
甲が丙に問いかける。
「そうだよ!上からは『準備期間に突入だ』と言われてたさ。
こっちだって数年後に向けて動いているし・・・そしたら下っ端が暴走で後始末だよ!」
「そもそも『収拾』の狩場を何で『潜在』が知っているんだよ。」
「さぁ・・・上層部は同じでも収拾は魔物の襲撃組、うちら潜在は政権かく乱組だから知らないはずなんだけど・・・」
「何で今回はこれがわかったんだ?」
甲は動かない男性を一瞥する。
「何だか数日前からそっちの事を調べ始めていたらしい。」
「上層部の情報を見たのか・・・馬鹿だな、バレるに決まっている。」
「全くだね。
それに下っ端には教えられていないけど、うちら組織の人員は全員居場所把握されているしね。
どこに誰がいつ居たかなんてすぐにわかっちゃうんだよね。」
「まぁな。うちの組織は入ったら最後、死ぬまで関わり続けるしかないんだよなぁ。」
「辞めたい?」
「まさか。辞める時は死ぬ時以外認められてない。
ここで『はい』とでも言えばお前に殺される。」
「まぁそれは俺もだけどね。」
「じゃあ、聞くな。
それにこの仕事もそれなりにやりがいはある。」
「収集は攫う事が仕事でしょう?」
「攫う事は直前でしかしないんだよ。こういった溜まりを準備している事がほとんどだ。」
「それを同時に起動させて周辺の魔物をわんさか呼び込むと?」
「・・・溜まりは儀式魔法なんだがな。」
「なにそれ?」
「どこかの魔境の魔物を呼ぶための魔法陣を指すんだが・・・まぁ使えるのはうちらだけだろうな・・・」
「魔境・・・なんか凄い物っぽいけど流行っていないの?」
「あぁ、全くな。
そして国家の最重要機密になっているか・・・いや、表向き破棄されているはずだな。」
「破棄・・・面白そうなのに・・・」
「もしかしたら魔王国にはあるかもしれないが人間種の国にはないぞ。
それにこの魔法陣は魔物しか呼べないんだわ。」
「・・・人間種は怖がるね。」
「それに何が呼べるかは決められない。」
「使い勝手悪っ!」
「そう、自分達よりも上位を出してしまうと国家滅亡だからな。
結構前に破棄されているはずだな。」
「なんでうちの奴らは知っているの。」
「まぁ・・・そういう組織だし?」
甲はおどけてみせる。
「まぁそういうものかなぁ
・・・うちらも国の宝物やらを収集したりするけどさ・・・」
「あぁ、盗賊だもんな。」
「価値がある物は価値がわかる人にしか意味がないんだよ。
だから価値がわかる俺らが集めるのさ。」
「爺共の享楽だな。」
「否めないね。でも間違いではないさ。」
「そうだな。
と、さっきから魔法陣を見て何をしている?」
「・・・消費・・・抑える・・・」
「まぁ折角、何年もかけた溜まりを全部使わせるのは癪だが・・・
出来るのか?」
「強力なの1体・・・雑魚をいっぱい・・・どっちか。
6割なら・・・残せる・・・かも。」
「全部なくなるよりかは全然マシだが・・・
はぁ・・・益々アズパール王国への仕掛ける時期が遠退くな。」
「・・・あとはお前らの出来高かい?」
「転移を万能みたいに思われたくないな。
集めているのはうちらだが・・・転移はそこまで楽じゃない。
なので少し工程の修正が必要だろうな。
潜在達はどうなんだ?」
「割と順調かな。
このままいけばウィリプ連合国とカトランダ帝国が始めそうだよ。
それでも最低5、6年はかかるかなぁ。」
「気の長い事だな。
まぁこっちも1、2年は溜まりを作っていくしかないな。」
「まぁ、うちらは戦略担当だからね~。
こっちの状勢に合わせる形になるらしいよ。」
「うちらはアズパール王国担当だが各々の国の収集が何かしているんだろうな。
まぁその内指示が来るだろう・・・
で?出来たか?」
「ん、終了・・・確認もした・・・よくやったと。」
「減給はなしだな。」
「さ、ウィリプ連合国に戻ろう。
ここには用はないさ。」
「ああ。
あとはここら辺の兵士にでも頑張ってもらうしかないだろうな。」
「帰って・・・寝たい。」
「あぁ、そうだな。」
甲乙丙はそろって移動を開始するのだった。
・・・
・・
・
魔法陣の周りには何もなくなっていた・・・そう木以外何もない
と魔法陣が点滅を始め何やら物が薄っすらと形を表すのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




