第464話 40日目 今日は村の外れで野宿。
「あぁ・・・野宿も良いですね~。」
武雄は村の入り口から少し入った空き地でのんびりと寝転がっていた。
明日は待ち合わせの町に到着するのだが・・・今日はその手前の村に宿泊になっていた。
クリフ達一家は村長の屋敷でご厄介になっている。
アシュトン子爵の親子は簡易宿に。
武雄達は野宿だった。
一応、クリフもアシュトンも武雄達を宿に入れるようにしようかと話に来たが、「子爵のご令嬢を野宿はさせられない」と武雄が断り今の寝場所に確定した。
もちろん武雄達の周りにはクリフ達の護衛兵やアシュトン子爵家の護衛兵が各々まとまって野営をしていた。
「ご主人様、皆の寝床の準備は終わりました。」
ジーナが報告に来る。
「はい、ご苦労様です。
皆さんの様子はどうですか?」
武雄は体を起こして微笑を向ける。
「マッタリとしています。
マイヤー殿とお父さまが他の兵士達に挨拶に行っています。」
「そうですか。
他の隊に挨拶に行くのは大事ですね。」
と、マイヤーとヴィクターが近寄ってくる。
「キタミザト殿、お疲れさまです。」
「はい、マイヤーさんもヴィクターも挨拶周りご苦労様です。
他の隊はどうですか?」
「これと言って・・・戦場へ行くわけではないので和やかな雰囲気です。」
マイヤーが朗らかに言う。
「タケオさん、サリタが夕飯の食材を見てほしいと言ってるわ。」
エリカとカサンドラもやってくる。
「村から野菜が買えたのですね。」
「ええ。それにしてもアズパール王国はやはり土が良いわ。
野菜の種類も量もうちとは大違いね。」
エリカがため息をつく。
「カトランダ帝国はあまり採れないのですか?」
マイヤーがエリカに聞く。
「そうですね。
国が山に囲まれているから農地に適した土地はアズパール王国に比べれば少ないですね。
・・・正直に言えば、現在の生産量だとカツカツね。
ジャガイモとかを大量に作ってもそれだけじゃあダメだし・・・国民に食べるなとも言えないし・・・」
エリカが苦笑する。
マイヤーと武雄は「国民と言うんだね~」とエリカを温かく見ていた。
「ヴィクター達はどんな食生活をしていましたか?」
「はい。肉とジャガイモとトウモロコシと野菜です。」
ヴィクターが答える。
「え?ヴィクターさん、パンは?」
エリカが聞き返す。
「日常的ではありませんね。
客人が来たら出すくらいです・・・まぁ割と嗜好品ですね。」
「そうですか・・・」
エリカは「奴隷は大変なんだ・・・」と思い苦渋の顔をするが、武雄は「獣人は基本的に肉食なんだなぁ」と聞いている。
「いろんな種類のパンがあったら食べてみたいですか?」
武雄はヴィクターとジーナに聞く。
「ご主人様が作るのですか?」
ジーナが聞いてくる。
「ええ、試作は私が監修しますけど。」
「食べます!ご主人様が作るのなら美味しいはずです!」
「いや・・・ジーナさん、私が作るから美味しいわけではないですよ。
実際の所、ヴィクター達はあまりパンを美味しいと思わないのですか?」
武雄は苦笑を返す。
「はい。主、あのボソボソ感が好きになれません・・・口当たりの良いパンがあれば食べたいとは思いますが。」
「口当たりの良いパンですか・・・」
武雄は軽く悩む。
アズパール王国のパンは食感がボソッとした食パンがメインなのだが、ヴィクター達はそれが気に入らないらしい。
武雄的には食パンに揚げパンにピザにアンパン系に肉まん・・・パンは口当たりが良い物という認識なのでどのレベルのパンが良いのかわかりかねる。
「主でもありませんか?」
「いえ、どのパンが良いのか判断できないなぁと。」
「そんなにあるのですか?」
「作れるかは別として、10種類くらいはありますね。」
「「「「10種類!?」」」」
ヴィクター親子にエリカとカサンドラが驚く。
ちなみにマイヤーは「食に関してもキタミザト殿なら驚かない」と悟っていた。
「まぁ、まだアイデアだけなんで・・・出来ればですからね。」
「タケオさんの中では出来ているのでしょう?」
「はい。私が考える料理は基本的に簡単ですから。」
「か・・・簡単?
あの料理を作り出して簡単と言うのですか!?」
「ええ、難解な料理を作ってはいませんよ。
元々手間があまりかからない料理しか作れませんし・・・もっと言えば食材を見つけているだけとも考えられますよね。
それにパンは作った事がないのでこればっかりは料理人に私の考えを伝える努力をしないといけないですよね。」
「出来そうですか?」
マイヤーが聞いてくる。
「まぁ王都か住んで居る街に戻ったら作って貰いますかね。」
「味見は私がします!」
ジーナが目をキラキラさせながら言ってくる。
「はは、まだ何を作るかも決めていませんよ。
でもジーナやマイヤーさんが喜ぶなら何か作ってみますかね・・・」
武雄は思案をする。
「と、サリタ殿がキタミザト殿を呼んでいるのではないのですか?」
マイヤーが思い出したように言う。
「そうだったわ!タケオさん、早く。」
エリカが用事を思い出したのか武雄を急かす。
「はいはい。じゃあ、今日の夕飯を考えますか。」
「「「はい!」」」
皆でサリタが居るであろう場所に向かうのだった。
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