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第461話 エルヴィス伯爵邸がある街の日常。(指揮官たちの考えと仕立て屋の試作。)

エルヴィス伯爵邸がある街の城門前にて

「以上!解散!」

第1小隊長の号令の元、皆が午前の練習を終えて解散していた。

「お疲れ。」

騎士団長のハロルドが来ていた。

「お疲れ様です。」

兵士長のデビットも挨拶をする。

「昼前ですがどうしたのですか?」

「うむ・・・少し相談をしたくてな・・・」

「そうですか。

 詰め所でお茶でも?」

「あぁ、すまん。」

ハロルドとデビットが詰め所の奥の一室である兵士長室に向かう。

・・

「で、どうされました?」

デビットはお茶を飲みながら聞く。

「今年の魔法師専門学院からの採用を聞いたか?」

「ええ、フレデリック様から通達がされていますね。

 魔法師小隊に3名のみと。」

「第4小隊には入らなかったな・・・」

「致し方ないでしょう。ウィリアム殿下の異動が決まったのですから・・・

 王都に多く採用されたのでしょうね。」

「そうなのだが・・・異動に際してうちからも王都に武官の推薦をしないといけないらしい。

 さっき王都の軍務局から通達が来ていた。」

「来ましたか・・・何名と?」

「最低20名との通達だ・・・」

「1小隊分ですか・・・

 王都はまた随分と多くを要求してきますね。」

「まったくだな。」

「総監部と総務局は何と?」

「タケオが爵位授与がされるのもあるから無下には出来ないと言っていたな。

 まぁ何だかんだ言ってもウィリアム殿下の為でもあるからなぁ・・・

 今後の事も考えて要求通りに出すしかないだろうと。

 なので騎士団から15名選抜する。

 配属はたぶん第1か第2騎士団だな。

 あとの5名は兵士をお願いしたい。」

「そうですか・・・兵士全員に募集してみますが、新人小隊からは難しいでしょうね・・・

 それに兵士から騎士団への採用がありますね・・・」

「そうだな。

 あと今年の新人の募集人数は?」

「例年通り30名ですね。

 新人小隊の3年目30名は振り分けの予定なのですけど・・・

 騎士に上げるのは何名になりますか?」

「そうだな・・・15名だろうな。

 抜かれた分を補充する運びになるだろう。」

「実質兵士は20名の穴埋めですか・・・

 今年の採用を40名くらいにした方が良いでしょうね。」

「そうだな。

 それにタケオの件もあるしな。」

「研究所の試験小隊ですね。」

「あぁ。うちから取ると思うか?」

「普通に考えればそうでしょうけど・・・キタミザト様ですからね。

 それに王立研究所ですから、そう易々とうちの兵士を採用出来ないでしょう。」

「確かにな。

 まぁ伯爵様はタケオに待つように言うらしいが・・・」

「なるほど。

 軍務局としてキタミザト様に依頼してみましょうか。」

「ん?何をだ?」

「王立研究所の試験小隊員はあくまで王都で採用をして欲しいと。」

「なるほどな。

 それも一手だな。」

「はい。他領には申し訳ないですが・・・王都から実質的に兵士の供給が受けれると思います。」

「過去になかったが・・・王都の兵士を入れるのはうちの兵士達には良い薬になるな。」

「ええ。王都のエリート達が来て訓練をしますからね。

 効率が良い訓練内容も教えてくれるでしょう。」

「なるほど。では、軍務局として伯爵様に提案してみようか。」

「悪い方にはいかないでしょう。」

「そうだな。」

ハロルドとデビットが頷き提案書の中身を考え始めるのだった。


------------------------

昼前のラルフの仕立て屋の作業場にて。

「んー・・・ラフ画に似て来たな。」

「だな~。」

「あ!店長が居ないスキに何作っているんですか!?」

事務の女性が2名の職人に怒っている。

「やべっ・・・いやいや、これはキタミザト様の要望なんだよ!」

「キタミザト様!?今王都に居るんでしょう?」

「向こうで会った時に試験小隊の制服を簡単に書いていてね。

 試作してみました!」

職人2人が満足そうな顔を女性に向ける。

「何『凄いだろう』的な顔をしているのだか・・・

 で?これがそうなの?・・・地味ね。」


そこにあったのは上下カーキ色の背広型の英国式軍服だった。

上はジャケットで下はスラックスだ。

共にトレンチコート用の生地で作ったようでしっかりとしていた。

ちなみに上着の中は同系色のYシャツである。

そして制服がかけられているのは武雄とまったく同一の体型のマネキンだった。

このマネキンは「人形師」と呼ばれる魔法師が作るのだが・・・概ね仕立て屋に在籍していた。

人形師が作るマネキンは適度な弾力があり、本人を呼んで確認をする前に自分達で服と体型との隙間、動いた際の解れなどを検証できる優れものだった。

そして何より感覚が人形師に伝わるので窮屈さや緩さもわかるという利便付き。


「で?なんで人形があるの?」

「・・・さっき王都に向けてキタミザト様の礼装を送ったから・・・余っていましたよ?」

「それは余ってとは言わないわ!

 魔法人形を出してきて・・・まったく。」

「いや・・・これがないと試着前に完璧に出来ないだろう?」

「そりゃ、これがないと試着は出来ないだろうけど・・・」

「それにしてもキタミザト様のは地味だが高収納だな。」

「だな。」

職人が明らかに話題を逸らす。

「こんな地味なのは制服としてどうなの?」

女性が聞く。

「軍装は普通は派手にするんだが・・・ここまで地味にされると逆に目立つな。」

「あぁ、徹底的に地味にした感があるな・・・確かキタミザト様は『偵察をするのに出来るだけ目立たない服装』と言ってたな。」

「確かにこれなら目立たないだろうけど・・・まぁ良いわ。

 キタミザト様が戻ったら見て貰いましょう。」

「試験小隊に採用されるようにするよ。」

「ええ、お願いね。」

と、女性は作業場から去って行った。

・・

「もう一着は見せられないな・・・」

職人はヒソヒソ話すのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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