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第455話 39日目 第1皇子夫妻の謝罪。

クリフ殿下領の王都側の端の町に到着して皆が宿でマッタリとしている。


「あの・・・どうして私が呼ばれたのでしょうか?」

武雄は一室に呼ばれて第1皇子夫妻と机を囲んでお茶をしていた。

「タケオ、今回も本当に済まなかった。」

クリフが頭を下げる。

「・・・どの件でしょうか?」

「う・・・王都の件から始まりカトランダ帝国から戻って来た際のアシュトン子爵、アリスの招集、アンの騒動、新種のソースの譲歩・・・

 その全てについて。」

ローナとセリーナも頭を下げる。

「・・・えーっと・・・とりあえず頭をお上げください。」

「本当にすまん。」

クリフ達は苦渋の顔をしながら頭を上げる。

「その・・・まずは王都の件は既に落着していますので何も謝られる必要はないかと思います。

 アシュトン子爵についてはクリフ殿下に苦言は言いましたが、基本アシュトン子爵の責任でしょう。

 これで私とアシュトン子爵家とが仲違いしてもそれは各々の事情です。殿下達が気に病むことはございません。

 アリスお嬢様についてはこれと言って・・・まぁ私と言うよりもアリスお嬢様への借りとなると思います。

 アン殿下については・・・さて親思いのお嬢様を手助けしたとは思いますが・・・こちらは執事の方に苦言は言いましたね。

 ソースについてはちゃんと契約をしています。

 殿下達の不利益になるようにはしなかったはずですし、こちらも謝罪されることもないと思います。」

「うぅ・・・その通りなんですけど・・・

 もう迷惑を掛け過ぎていて・・・謝るしかありません。」

ローナが申し訳なさそうに言う。

「タケオ。

 プリンの作り方をニールとウィリアムの所にも伝えると言ったそうだが、本当か?」

「はい。

 クリフ殿下達に教えてニール殿下やウィリアム殿下に教えないのは変ではないでしょうか。

 食べ物の恨みは怖い物です。」

「・・・無料タダで?」

セリーナが聞いてくる。

「え?そんなわけないですね。

 第1皇子一家にはアン殿下が条件を飲まれました。

 聞いていないのでしょうか?」

「タケオさん、実はね。

 あの条件を正式には私達は聞いていないのよ。」

「アン殿下が言っていないのですね。

 では、マイヤーさん辺りからでしょうか?」

「ええ。

 4条件は家族仲を良くする事と王家としての自覚を持つ事となります。

 アンならばなんとかなるでしょう。」

「だが、どれも一生をかけてやるものだ。

 タケオ、アンの件は本来なら私達親が言うべきことを代わりに言って貰ってありがたいと思っている。

 これは謝礼なのだが。」

クリフは机の上に革袋から金貨20枚を取り出し積む。

「・・・クリフ殿下・・・

 これは受け取れません。」

武雄は苦笑しながら金貨を見ている。

「うむ・・・どうしてだ?」

「どんな背景があろうとも私とアン殿下は条件での契約をしています。

 ですので今さら金貨を頂くことは出来ません。」

「そうだな。

 だが、あの契約はアンが不達成の場合はどうなるのだ?

 罰則規定がなかったと思うが。」

「・・・あぁ、そうですね。

 確かに罰則を規定するのを忘れました。」

武雄は苦笑しながら頷く。

「タケオさん、本当に良いの?

 アンへの条件としては甘すぎるわよ。」

「子供相手に本気の契約などしませんし、したくもありません。

 それに今回の件で私はアン殿下からかけがえのない物を頂いていますからね。」

「ん?それはなんだ?」

「信用。」

「それは・・・私達も持っているわよ。」

「ローナ殿下、ありがとうございます。

 ですが、アン殿下から信用されているという事は今後の事を考えると大きな財産です。

 申し訳ありませんが、クリフ殿下やローナ殿下、セリーナ殿下からの信用とは格が違いますね。」

「それほどまでにアンを評価するの?」

「ええ。

 殿下方は大人として対等に接してくれています。

 ですが、アン殿下はまだまだこれからです。

 今『この大人は信用できる』と思っておいて貰えれば・・・将来、何かあった場合にこちらの意見を聞いてくれそうですからね。」

「何かあった時?」

「パット殿下の暴走・・・とか?」

「流石にそれは私達が止めるわ。」

「ええ、いらっしゃればですね。」

「・・・そうだな。

 私達が不在になった時にパットが誰を頼るか・・・カトランダ帝国に面している貴族達が本命だろう。」

「はい。

 その辺を残された王都の家族・・・アン殿下は見ているでしょう。

 その際に私達に危害が及ばないようにしてくれるかもしれません。

 もしくは私達の言い分を取りなしてくれるかもしれません。

 なので、先々の一手を打っておくのは当然でしょう。」

「タケオさん、そこまで考えていたの?」

セリーナが真面目な顔をして言ってくるが・・・

「いえ、今考えました。」

武雄はあっけらかんとして答える。

「「「え!?」」」

クリフ達は固まる。

「というよりです。

 やっと休めると思って宿の部屋に入るとそこには王家の長女が居て、唐突に全財産を出して『母親達を笑顔にさせたいんです』と懇願されるんですよ?

 何て答えれば良いんですか?

 貴族に成りたての者に対するイジメですか?

 それに教えるからといって子供に金銭を要求した者を周りはどう思うのです?

 たかがプリンごときで。」

「たかが・・・」

「ええ、たかがです。

 それに王家の子供は『誰かを笑顔にさせたい』と言って金銭を払って何か買わせているのですか?

 それだとアン殿下の評判が落ちます。

 なら何かしら条件を飲んでもらうしかないでしょう。

 あの時に思ったのはそれぐらいです。

 そしたらアン殿下に懐かれました。

 結果的に金銭よりも価値のある物を私は手に入れたと思いますけど。」

「それは・・・そうね。

 あまりにも大人の倫理感で動いていたけど・・・実際はいきなりの交渉だものね。

 そう裏まで考えられないか。」

「はい。

 逆に言うとあの場で金銭を私が受け取っていたらクリフ殿下・・・私の事どう思います?」

「そうだなぁ・・・」

クリフが悩む。

「私がクリフ殿下の位置で見るなら守銭奴・・・金で動く者と見ます。

 なら次回以降何か事が起きたなら金銭で解決させようとするでしょう。

 ですが、今回私はそうしなかった。

 だからクリフ殿下達は困っているのでしょう?」

「全くもってその通りよ。

 タケオさんへの謝罪方法が全く思い浮かばなかったの。

 何か代わりのレシピを教えるとかもあるんでしょうが・・・私達にはタケオさんに教えられるレシピはないわ。」

セリーナがため息交じりに言う。

「ええ、まぁ小さいですがまた貸しですね。」

「あぁ・・・私達タケオさんに借りが一杯あるわ。」

ローナが武雄の言葉にため息をつく。

「ふふ。まぁ貸しは使う事を前提にしては意味がないので・・・まぁいつか使わせて貰います。」

「借りが膨れ上がらない事を願うな。

 タケオ、早々に使ってくれるとありがたい。」

「それは私が苦境になる時なので、ご遠慮させて貰いましょう。」

武雄は苦笑しながら答える。

「・・・で、ニールの所とウィリアムの所はどういう条件にするの?」

ローナが聞いてくる。

「・・・条件を考えるのが面倒なので・・・

 金銭にでもしますかね。」

「「え?」」

ローナとセリーナが固まる。

「タケオ、うちからは金銭を取らないで他からは取るのか?」

「はい。クリフ殿下達には金銭よりも貸しの方が価値が高いですからね。

 それにニール殿下の所はエイミー殿下をスミス坊ちゃんの所に嫁に入れたがっていますし、ウィリアム殿下の所はレイラさんがいますからね。

 どちらも良い金額で買ってくれそうです。」

武雄は楽しそうに言う。

「あぁ・・・私達も金銭で解決すれば良かったかしら?

 タケオさんへの借りは高くつきそうだもの。」

ローナが答える。

「そう言えば・・・お昼ぐらいにですが、アン殿下が遊びに来ていました。」

「うむ、ソースのサンドイッチは美味しかったぞ。

 昨日のソースの使い方がわかる物だったな。」

クリフが頷く。

「ええ、実はその時にですね。

 アン殿下が言っていたのですけど・・・私の受け答えが間違えでなかったか回答をください。」

武雄は楽しそうに昼間のアンの言葉を言うのだった。

クリフ達は「他家には絶対に言わないでください」と武雄への借りを増やすのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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