第454話 エルヴィス邸でのマッタリ時間。ゴドウィン伯爵の来訪2。
「では、ウィリアム殿下の公領異動はどうするんで?」
「どうもせん。」
エルヴィス爺さんがきっぱり言う。
「え?どうもしないとは?」
「現状では何も対策は出来んのじゃよ。
ウィリアム殿下から何も依頼が来てないからの。」
「それはそうなんですが・・・」
「想定されるのは文官、武官の融通じゃの。」
「・・・3伯爵家の文官、武官ともさして余裕はないはず。」
「うむ。わしの所はかなり厳しいの。
今年の魔法師専門学院からの通達では7名募集で3名のみ採用じゃ。」
「え?・・・かなり定員割れを起こしましたな。」
「うむ。
フレッドの所はどうじゃ?」
「・・・まだ俺は結果を見ていないが・・・大丈夫なのか?」
ゴドウィン伯爵はエルヴィス伯爵家の現状で少し動揺する。
「そんな訳でうちからの武官派遣は難しいかの・・・文官もそうなのじゃが。」
エルヴィス爺さんがため息を漏らす。
「それに親父殿はタケオを抱えますからね・・・
さらに武官が引き抜かれますな。」
「まぁタケオに説明すればタケオも無理は言うまい。
だが・・・ウィリアム殿下からの要請は断れんじゃろう。」
「そうですな・・・難しいかぁ・・・」
ゴドウィン伯爵もため息を漏らす。
「ウィリアム殿下の配下は王都からは来るのでは?」
「王都の騎士団はそこまで抜けれるとは思えないな。
・・・だが、クリフ殿下の配下が入城するなら多少は抜けるのか?」
「兵士は多少は連れて行くだろうが・・・
第3騎士団の創設をするはずじゃの。」
「はぁ・・・騎士団創設・・・ますます王都の武力が向上するな。」
「うむ。騎士団の創設は良し悪しじゃが・・・クリフ殿下が跡継ぎなのじゃ。
第3騎士団の創設はしないといけないじゃろうの。」
「陛下の子飼いは必要なのだろうが・・・難しい問題ですな。
今の陛下の時はどうだったのでしょう?」
「陛下は王都近くの王領の運営をしていた。
王都に居ながら王領の運営をしていてな、どこかの戦端が開くとなると第1騎士団を指揮して戦場に向かっていたのじゃ。
今回はクリフ殿下、ニール殿下を地方領に赴任させ実践経験を積ませておるな。」
「・・・地方の運営がわかっているなら地方貴族に無理は言わないだろうが・・・」
ゴドウィン伯爵が難しい顔をする。
「カトランダ帝国に面している3貴族かの?」
「ええ。我々に無茶な事を言ってきそうではあります。」
「・・・ふむ、確かに取り巻きが王都の文官達を動かす可能性はあるが・・・
王都はこっちからしっかりとした報告と納税をしていれば運営に関しては介入はしない事になっている。
無理を言ってくるなら出兵要請ぐらいじゃ。
わしら3伯爵は軍事上はウィリアム殿下の配下になるはずじゃ。
その辺の要求があるならウィリアム殿下を使うしかないじゃろう?」
「はたして断れるのか・・・」
「ふむ・・・断れんじゃろう。
王都の文官からの出兵要請はない。あるのは陛下が裁可された出兵要請じゃからの。陛下が裁可された物にケチをつける訳にも行かんが・・・規模をある程度限定させて貰うしかないじゃろうの。
それにうちは財政を盾にある程度絞れるが・・・フレッドは断れんじゃろう・・・辺境伯だしの。」
「それはわかるが・・・俺もその辺は何とかしたいと思うのが本心ではあります。」
「それに出兵要請で一番の被害者はタケオじゃの。」
「そうですな。」
「え?タケオ様も出兵要請が出るのですか?
研究所所長に?」
「いや、むしろだからこそじゃろう。
タケオは王立研究所所長で最新鋭の武器の考案をする事が求められ1小隊を抱える貴族じゃからの。
ただ・・・出兵費用をどう捻出するのかの?
タケオ個人で小隊の費用を捻出するのは辛かろう。」
「ですな。
今までは領地持ち貴族にしか出兵要請が出ていなかったのです。
ならその規定のまま出兵要請がされれば費用は貴族持ちです。」
「・・・収入がない研究所に遠征費用は出せないのでは?」
スミスが考えながら言う。
「そうじゃ。
だから被害者なのじゃ。」
「なるほど。
レイラお姉様経由でタケオ様に教えた方が良いのではないでしょうか?」
「うむ、そうじゃの。
フレデ・・・いや、スミスが手紙を書きなさい。」
「僕がですか?」
「うむ。
わしよりもスミスの方が良いじゃろう。
あくまでわしらとの話合いでというよりもスミスがふと思ったという風を装いなさい。」
「は・・・はぁ。
わかりました。じゃあ、今書いてきます。」
「うむ。まぁレイラ相手なら別に言葉を選ぶ必要はないからの。」
「はい。」
スミスは頷き退出していった。
「・・・親父殿、スミスを使うのですか?」
ゴドウィン伯爵は不思議そうな顔をエルヴィス爺さんに向ける。
「フレッド・・・子や孫を政争に使わないのは当たり前じゃが、政争にならないなら使うべきじゃよ。」
「うちには子供がおりませんからね。」
「ふむ・・・まだか・・・こんな所に来ずに励め。」
「うぅ・・・ジェシーが最近妙にやる気で・・・」
「夫婦間の揉め事をこっちにふるな。
そういうのは自分達で解決する物じゃ。」
エルヴィス爺さんがため息交じりに説教を始めるのだった。
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