第453話 エルヴィス邸でのマッタリ時間。ゴドウィン伯爵の来訪1。
エルヴィス邸の客間にて。
「主・・・これは・・・」
「明らかに失敗じゃの。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが客間でため息をついていた。
料理長が「新作が出来ました。」と客間に持ってきたのだが・・・
「いや・・・次回作が出来たらすぐに持って来てくれと言ったのは確かじゃがの・・・」
エルヴィス爺さんの目の前の机には「ピザ」に「プリン」をトッピングしてさらに「ソーセージ」も入っている・・・何とも言えない物が鎮座していた。
「・・・甘い香りはいたしますね・・・焦がさないでどうやって作ったのでしょうか?」
フレデリックも味ではなく作り方に興味を移していた。
「わからぬ。聞いたら終わりだと思う。
・・・まさかこれが今日の昼かの?」
「おそらく。」
エルヴィス爺さんとしては「違います」と答えて欲しかったのにまさかの肯定。
うな垂れるしかなかった。
と、エルヴィス家の客間の扉がノックされる。
エルヴィス爺さんが入室の許可を出すと執事が扉を開け入って来る。
「失礼します。ゴドウィン伯爵より先触れが参りました。
もう少ししたら到着するとのことです。」
「ふむ?
緊急と言っておったかの?」
「いえ、特には何も。
先触れの方が『毎度毎度、急ですみません』と謝っておいででしたが・・・」
「ふむ。
まぁいつもの事だから別に良いがの。
フレデリック、これはタケオの事かと思うのじゃが、どうだろうの?」
「私的にはウィリアム殿下の事ではないかと。」
フレデリックが思案しながら言ってくる。
「なるほど。
タケオの爵位とウィリアム殿下の公領移動が各貴族に通知されておるから確かにそれも考えられるの。
だが、それだけで来るのか?」
「さて・・・他には特にないかと。」
「確かに・・・まぁ来ればわかるじゃろう。」
「はい、畏まりました。
お茶の用意をしておきます。」
「うむ、そうしてくれ。
これはフレッドに食べさせるか。」
目の前の珍品を見ながら言う。
「主、一応、お客様ですが・・・」
「・・・アヤツは何でも美味しそうに食べるじゃろ。
わしには何か軽めの物を持って来てくれ。」
「畏まりました。」
フレデリックが礼をして客間を出て行くのだった。
と、他の執事がやって来て「王都の魔法師専門学院とアリス様、そしてテンプル伯爵様よりの手紙です」と置いていくのだった。
・・・
・・
・
「親父殿!これは・・・何という食べ物ですか!?」
ゴドウィン伯爵は驚愕の顔をエルヴィス爺さんに向ける。
「・・・美味かったかの?」
エルヴィス爺さんはトマト系の野菜スープとパンを食べながら聞く。
「これはぜひ私の屋敷の調理人にも教えて欲しい!
まさか・・・これもタケオが?」
「タケオが残していった宿題じゃ。
うちの料理長達が試行錯誤して作った物の一部じゃな。」
「一部・・・相変わらず凄い物を考えるな・・・」
ゴドウィン伯爵は唸る。
「で、フレッド、何しに来たのじゃ?」
「え・・・あぁ、そうでしたな。
王都からの通知は知っておりますね。」
「もちろんじゃ。」
「タケオの爵位授与とウィリアム殿下が公領に異動するとの事のご相談をしに。」
ゴドウィン伯爵は少し姿勢を正して答える。
「別に手紙でも良いだろうに・・・
で?何を聞きにきたのじゃ?」
「全部です。親父殿の意向を聞くために。」
「別に何とも思っておらんよ。
それに」
と、エルヴィス家の客間の扉がノックされる。
エルヴィス爺さんが入室の許可を出すと執事とスミスが扉を開け入って来る。
「失礼します。お茶を替えに参りました。」
「ゴドウィン伯爵様、いらっしゃいませ。」
スミスがゴドウィン伯爵に礼をする。
「うむ。急に来て済まぬな。」
「いえ。
で、今日はどのようなご用件で?」
「うむ、スミスも座って聞いておれ。今後の見通しの話をするからの。」
「はい、お爺さま。」
と、スミスは席に座ると執事がお茶を配膳する。
「ふむ。
まずはタケオの事じゃの。
フレッド、タケオは爵位を授与されるのだが・・・」
「男爵だと聞いていますね。最速だと思うのだが・・・」
「・・・現時点で子爵になっている。」
「「は?」」
ゴドウィン伯爵とスミスが驚きの声を上げフレデリックは何も言わずに聞いている。
「さっきアリスからの手紙に書いてあったのだが・・・
タケオは男爵として最初登録されていたそうだが、王都に到着して6日で子爵に陞爵したそうじゃ。
アリスは昇進について言われた時はタケオも出かけていて驚くだけでどうしようもなかったと書いてあったの。」
「・・・王都で何が?」
「・・・聞きたいかの?」
「え?・・・その言い方はなんとなく面倒そうな・・・聞きます。」
「聞いて後悔するかもしれぬの。」
「え?」
「実はのタケオ達が王都に着いてから」
エルヴィス爺さんは喜々として経緯を説明するのだった。
・・・
・・
・
「・・・聞かなきゃよかった・・・」
ゴドウィン伯爵がガックリとしている。
エルヴィス爺さんとスミス、フレデリックは苦笑している。
「まぁタケオは王都で貸しを大量生産してきたという感じかの。」
「親父殿も渦中だと思いますが?」
「わしは別にそれほどでもないの。
王都に・・・王家に貸しが出来たことは悪い事ではないだろう。
それに別に貸しを使う気もないしの。」
「親父殿がそういうのならば良いですが・・・」
ゴドウィン伯爵が難しい顔をさせながら頷く。
「まぁ、王家からの詮索は少なくなりそうじゃの。
タケオは多くなるだろうが。」
「・・・ですかね。
タケオも飄々としているからな・・・何とかするのか?」
「まぁタケオとアリスが帰って来てから考えれば良い事であろうの。」
エルヴィス爺さんはお茶をすすりながら言うのだった。
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