第451話 39日目 移動中・・・昼が待ち遠しいジーナとファロン元伯爵の統治方法。
今は第1皇子領を出立して移動をしているのだが・・・
「はぁ~・・・」
アンがため息を馬車の中でついていた。
馬車の中を見るとお父さまも母様方も寝ていた。
朝食時に3人を見たアンが「何でそんなに眠そうなのですか?」と聞いたら「昨日は興奮しちゃって」とローナが答えクリフもセリーナも苦笑していた。
「・・・なんで王都に行くだけなのに興奮するんだろう?
あ、タケオさんの料理が凄く美味しかったからかなぁ?」
アンは呟くが・・・誰も返事をしてくれない・・・
なので、物思いに耽るが自分が作ったプリンを親達が美味しそうに食べてくれたことを思い出し「ふふん♪」と思うのだった。
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「ご主人様、お昼はまだですか?」
武雄の横に付けているジーナが聞いてくる。
「ふむ・・・ジーナ、さっきから同じ質問ですね。
ですが、もう少し待ちましょうね。」
「う・・・だって・・・
昨日の夕飯があまりにも美味しかったのです!
アレのサンドイッチとはどれだけ美味しいのか・・・早く食べたいです!」
ジーナの言葉にヴィクターやマイヤーも頷く。
「そんなに期待されても・・・
普通にカツサンドなんですけどね。」
武雄は苦笑をするしかなかった。
「そう言えば、アシュトン子爵は何も言ってきませんね。」
マイヤーが呟く。
「そうですね。
朝と解散時の礼儀上の挨拶程度です。基本的に私に近寄りもしないですよ。
まぁいきなり態度を変えられても困りますけどね。」
「・・・そういう物ですかね?」
「さぁ?私は貴族は頑固な者が多いと思っていますけどね。
むしろマイヤーさんの方がいろんな貴族を見ているのでは?」
「・・・頑固者や下手に出る者、柔軟な思考の者・・・多種多様ですね。」
マイヤーが考えながら言う。
「ふむ・・・まぁ画一的ではないという所ですかね。
・・・確かにクラーク議長は割と柔軟な思考でしたか。」
武雄も考えながら言ってくる。
「ええ。あの方は表面上は好々爺ですが、かなりのしたたかさがありますね。」
「でしょうね。
私への例の謝礼金を自分たちの懐が痛まないように仕向けていましたしね。
まぁあれもワザとわかるようにしていたのかもしれませんが。」
「そうでしょうか?」
「深く考えればワザと最初に言わなかったのは後々私から言わせることで結果的な出費を最小限に抑えたとも取れるでしょう。
マイヤーさん、実際の所、王都の貴族たちはどんな副業をしているのですか?」
「・・・不動産業と運送業と酒場が多かったはずです。」
「なるほどね。
ちなみにヴィクター達魔王国はどんな感じなのですか?」
「んー・・・アズパール王国とは少し違うかと。
そもそも領主に付くのは時の陛下に認められし強者です。」
「戦力的にですか?」
「武力、知力、統率力いろいろです。
そして領主=爵位持ちになります。
それに弱くなれば強い者に入れ替えられます。
まぁ現当主が弱くなれば隠居し、同族内で最強の者を当主にする事で代々同種族がその土地を治めています。」
「ほぉ、なるほど。
アズパール王国みたいに王の周辺に爵位持ちは居ますか?」
「いませんね。
あくまで爵位とは地方の自治と治安と戦争を担当している者です。
王の周辺には王軍が控えていますが・・・
その者達が国の施政を担っています。
なので貴族は王軍の下に位置しています。」
「なるほど。
中央主権と地方分権の双方をしている感じなんですね。
ちなみに領主から王都に向けての税金とかはあるのですか?」
「収穫物のおよそ3割でした。
他の国々よりも低いらしいとは聞いたことがあります。
魔王国は広大ですので、各自で自分たちの食べ物を確保していますね。
まぁ商売が好きな者もいますから自由に何でもしています。」
「微妙におかしい国家・・・いや、ヴィクター達からすればアズパール王国も十分変ですかね?」
「はい、不思議には思います。
もっと自由にしても良いとは思いますが・・・国家が形成されているのならこれがこの地域でやりやすい事なのだと認識しています。」
「ふむ。
皆が自由にして良いと言っていましたが、実際の所、ヴィクターはどういった組織を作っていたのですか?」
「私達の場合は、人間から狼に変身する獣人が統率者として同族が10000名程度居ます。
皆で1つの街を作っています。
私達伯爵家を中心とする統治組と狼に変化した際に力を発揮する騎士組、そして家事や商売や農業などが得意な事務組が居ます。
そして騎士団の下にオーガ500体、事務組の下にゴブリン1300・・・1000体とオーク50000体を管理させ街を構成しています。」
「はぁ!?」
マイヤーが驚く。
「どうしました?マイヤー殿。」
ヴィクターが聞いてくる。
「ちょ・・・ちょっと待ってください・・・
何ですその数は・・・一気にアズパール王国が蹂躙出来てしまうくらいの数なのですけど。」
「はい。
ですが、実際の戦場に出せる数はそんなには多くないのです。
オーガは戦闘用として飼育していますが街の防衛に当てていますし、ゴブリンは畑仕事を、オークは畑仕事と家畜ですし。」
「何と言うか・・・仕事もさせて食べられもする・・・まさに家畜ですね。」
「そ・・・その者達は戦場には?」
マイヤーが驚きを押さえられずに聞いてくる。
「出しません。
まぁオーガは出しても良いでしょうが、慣例の戦争ですし・・・
それにゴブリンやオークなどの足手まといはいりません。」
「足手まとい・・・」
マイヤーの驚きは継続中。
「なるほど。
兵士の均一化による統制の確保を目指しているのですね。」
武雄が頷く。
「え?キタミザト殿、当たり前なのでは?
うちも新人達をしごいてまずは同じ動きが出来るようにしますが。」
「・・・マイヤーさん。
ヴィクター達は人間とは違うのですよ。」
「それはわかりますが。」
「アズパール王国の兵士は行進の訓練はしますか?」
「はい、基礎中の基礎です。
最初に習う全体行動ですね。」
「ヴィクター達獣人は走りながら隊列を組ませる訓練を最初にするのではないですか?」
「主、わかりますか?」
「基本性能の違いでしょう。
人間は走るのもバラバラ、動きも獣人に比べれば遅い・・・なので強制的に歩くことから学ばないといけないのです。
対して獣人は基本性能が違うので長時間走る事が当たり前に出来ます。
どうせ狩りと称して日頃から野山でも駆けているのであれば足腰は元々強いはずですし。
なので、人間みたいに歩幅から合わせる必要がないのでしょう。
横一列に並び同速度で皆が走れれば良いとか思っていそうですね。
そう言えば、ヴィクター達は何で人型で生活しているのですか?」
「主、ほぼ正解ですが、一応私達も行進訓練はします。
さらに日頃から野山を駆け巡るのは騎士団組だけです。
私なんかは日がな一日事務仕事ばかりでした。
それに日常生活は人間の姿の方が食料が少なくて済む事と手が器用に使えるので、何かする際の効率が良いのです。
逆に狼の方は運動能力を攻撃に向けられるので戦闘の効率が良いのです。」
「なるほどね。
・・・確かヴィクターの後を継いでいるかもしれない甥が人嫌いでしたか?」
「はい。」
「仕掛けてくると思いますか?」
「そう遠くないうちに。
ですが、1、2年は今のままかと。
本格侵攻をするなら国王陛下の裁可と隣の貴族の了承、王軍に対しての計画書の提出と裁可が必要です。」
「そうですか。
手続きがあるのですね?」
「はい。」
「マイヤーさん。
試験小隊の戦術考察は当面、魔王国からのエルヴィス伯爵領への本格侵攻を想定します。」
「はっ!」
「地理、過去の戦闘報告、周辺貴族の情報等々資料を集めてください。」
「わかりました。
王都に戻り次第着手します。」
マイヤーは頷く。
武雄達は昼の休憩まで戦略等々を話し合うのだった。
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