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第450話 38日目 皆での夕飯と第1皇子一家のマッタリ時間。

「・・・」

皆が一様に食卓でマッタリとお茶をしながら余韻に耽っている。

「もう。皆さん、顔が蕩けていますね。

 美味しそうに食べていただいて嬉しい限りです。」

武雄は朗らかに言う。

「タケオさん!本当にありがとうございます!

 こんな美味しい物が食べられるとは思いもよりませんでした・・・

 あぁ・・・アズパール王国に来て良かった。」

エリカは若干、涙を流しながら言う。

他のカトランダ帝国組も同じ様なのか、嬉しそうに頷く。

「・・・鈴音はどうでした?」

「何年ぶりかのトンカツとプリン・・・

 武雄さん!ありがとうございます!」

鈴音が思いっきり頭を下げてくる。

「マイヤーさん達はどうでしたか?」

「いや、キタミザト殿が作り出す料理はまさに至高ですね!

 王都でいろいろ食べましたが・・・全ての上を行きます。」

マイヤーの言葉にアーキンとバートが嬉しそうに頷く。

「うんうん。

 マイヤーさん達にも喜んで貰えた様ですね。」

武雄も嬉しそうに言うのだった。


今回の武雄が作ったのはタダのトンカツ(オーク肉使用)。

皆と一緒に精肉店に行き、オーク肉の若干脂身がある1口サイズのロースを買う。

薄力粉の代わりに小麦粉・・・と言うより小麦粉しかなかったのだが。

現状では薄力粉、強力粉等の分類が一般的ではないようで・・・「まぁ使えるか」と武雄は深く考えていない。

「そのうち分類されれば良いなぁ」程度であった。

そして卵とパンそれとキャベツ、そして油や器具を買って宿で作っていた。

唯一、料理の出来るサリタを助手に迎えトンカツを作ったのだが・・・

「え?・・・こんな簡単に出来るのですか?」

と、サリタが驚きながら作っていた。

肉に小麦粉を付けて、卵に潜らせ、パンを粗削りしたパン粉をまぶして揚げるだけ。

油の火加減も武雄からすれば結構適当。

温かくなった油に衣を投入し、軽く沈んで上がって来るのを見て「このぐらいかな?」と、きつね色になるぐらいまで揚げただけだ。

武雄からすれば料理は意気込んでする物ではないのだが、その適当さを見ていたエリカ以下女性陣は「天才か!?」と驚いていた。

そしてトンカツ用として、ウスターソースに少々の砂糖と玉ねぎをふにゃふにゃになるまで煮込み、そこにトマトのぶつ切りを足してさらに煮詰めてみた。

すると若干酸味が薄くなり、甘みも足したことによって口当たりが良くなったように武雄は感じていた。

これが皆に好評だったのは言うまでもない。


「さてと、明日の昼はこのトンカツのサンドイッチでも作りますかね。」

武雄は多めに揚げたトンカツの残りを見ながら言う。

「タケオさん、これをサンドイッチにするのですか?

 肉が固くなりませんか?」

カサンドラが聞いてくる。

「ええ、この状態のままだと若干固くなるかもしれませんね。

 なので、一工夫を今からします。」

「ええ!?さらにですか!?」

サリタが驚きながら聞いてくる。

「?ええ、固いと美味しくないでしょう?

 サンドイッチ用に少し手を加えます。」

「柔らかくなるのですか?」

エリカが聞いてくる。

「・・・たぶん。

 ダメなら明日の昼は固い肉です。

 上手く行くように祈っていてください。」

武雄は苦笑しながら言う。

「あの・・・武雄さん・・・もしかして煮込むのですか?」

鈴音がオズオズと聞いてくる。

「お、鈴音は流石に私の考えがわかりますね。

 まぁ半分正解ですね。

 煮込むのではなく、軽く潜らせるのです。

 それだけで衣が柔らかくなりパンの方にもソースが付いて美味しくなります。

 予定としては。」

武雄は鈴音の言葉に嬉しそうに答える。

「明日の昼が楽しみです♪」

エリカの言葉に皆が楽しそうに頷くのだった。


------------------------

第1皇子一家が食堂でマッタリしていた。

「はぁ・・・タケオさんの料理はどれも流石ね。

 アン、プリンの作り方を盗めた?

 タケオさんが作ったのでしょう?」

セリーナがアンに聞いてくる。

「ローナお母様・・・盗むとは言い方が・・・

 でも大丈夫です!わかりました!」

アンが元気に返事をする。

「そっかぁ、アンの手柄ね。

 それにしてもプリンも相変わらず美味しかったわね。」

ローナが嬉しそうに呟く。

「これであのソースも手に入るとは。

 食生活が相当良くなりそうだな。」

クリフが「ふふん♪」と嬉しそうに呟く。

と、執事長がノックして食堂に入ってくる。

「失礼します。

 クリフ殿下、ただいま戻りました。」

「ご苦労だったな。

 で、タケオは無事にソースの販売店に着いたか?」

「はい。キタミザト子爵殿は無事に着かれまして、すぐに商談をされました。」

「あぁ・・・タケオさんは商売人だわ・・・

 エルヴィス伯爵領の人達は凄いわね。

 こんなすぐに商談をする者が上に居ると大変でしょうに・・・」

ローナが苦笑する。

「だな。

 だが、だからこそ商機を見出しているともとれる。」

クリフが難しい顔をさせて言う。

「で?タケオさんはどんな商談をしたの?」

ローナが執事長に聞く。

「ええ、それがですね。

 クリフ殿下、私達は樽の買い占めを行うと予想しました。」

「そうだな・・・タケオはどういう行動を取ったのだ?」

「エルヴィス伯爵邸がある街への出店要請です。」

「「「え!?」」」

第1皇子夫妻が驚く。

アンは「へぇ~」と話を聞いている。

「ちょ・・・ちょっと待て、いきなり出店要請をかけたのか?」

「はい。

 ですが、さすがに販売店の店主も驚かれまして・・・出店の依頼は断られました。」

「そ・・・そうだろうな、いきなり出店を依頼されても困るな。

 で、タケオはどうでた?」

「レシピを売って欲しいと。

 対価として金貨30枚を払い、尚且つ最大の商圏である王都や王領、そしてカトランダ帝国に面している貴族領での販売をしない事を約束されています。」

「タケオはそこまでしてレシピが欲しいと?」

「はい。キタミザト子爵殿はクリフ殿下がこの販売店の主人達も王都に一緒に連れて行くかもしれないので、王都での販売はこちらがするべきだと。

 わざわざ2つの同じ商品を出して利益を半減させる必要はないと言われ、さらには自身は魔王国に面している3貴族とウィリアム殿下領をメインに販売をすると言われておいででした。

 キタミザト子爵殿は、このソースをいち早くエルヴィス伯爵領内に普及させ、領民の食生活を向上させたいとも言われております。」

「なるほどな。

 ローナ、セリーナ、どう思う?」

「タケオさんの配慮に感謝しかないわ。」

「そうね。」

セリーナとローナがため息を漏らす。

「え?お母様方、タケオさんが配慮をしているのですか?

 出店を断られたんですよね?それで仕方なくレシピを買ったという話だったような?」

アンが頭を捻りながら言う。

「ん?アン、わからないかい?」

「はい、わかりません。」

「タケオさんはね、そもそも私達にソースの存在を教えないままその販売店に行くことも出来たのよ。

 だけど、うちの街での商品だから、うちに利益があるように進言をしてくれたわ。」

「でも、クリフは明日対応させることを決めた。

 タケオさん的には『遅いよ?』という事で自身で動き出した。」

「で、私の街の住人なので移転を勧めるのではなく、あくまでも出店を依頼するが断られる。

 だが、タケオ的には何としてもエルヴィス領でこの商品を作って欲しい。

 タケオは最大の商圏である王都や王領など国中心部の商売が出来なくても良いから・・・その分の利益を販売店に譲る形でレシピを売って欲しいと妥協案を出し、採用されレシピを買った。

 タケオならそんな契約をせずとも自力でこのソースが作れるかもしれないのに、わざわざ利益をエルヴィス領周辺の貴族のみと、半減以下にまで譲歩しているからな。

 一地方の販売店からすればかなりの利益を譲られたと取るだろうな。

 そうなれば了承するしかないだろう・・・

 上手くタケオの掌の上で交渉が行われたようにも見えるが・・・」

「そうね。

 販売店としては断っても良かっただろうけど。

 でもソースを見出して直接商談に来てくれるような貴族を無下には出来ないだろうし・・・利益も譲ってくれるのならレシピを売るわよね。

 まぁ断らなくて良かったわね。

 タケオさんが自力で開発してうちの販売店と真っ向勝負するなら・・・」

「うちの販売店はあっという間に負けるわよ。

 少なくとも、タケオさんが作ったソースなら王城の料理人達がこぞって買い、その息のかかる商店も買うからね。

 うちの販売店が王都で売り上げが伸ばせるとは思わないわ。

 それも見越しての譲歩だからなぁ・・・タケオさん、相当私達に気を使っているわよね。」

「そうなるな・・・はぁ・・・タケオが私の部下だったら・・・」

「クリフ、止した方が良いわよ。

 あの商才と武功はうちの文官では扱いきれないわよ。」

「だよね。

 文官内のイザコザを助長する羽目になるわ。

 なら私達の取る道は・・・」

「ふむ、タケオ達と対立しないことだな。

 対立しなければ私達にもウィリアム経由で知識が入って来るだろう。

 というより・・・既に相当借りが出来ているんだがな・・・」

クリフがため息を漏らす。

「どうやって返そう・・・」

セリーナもため息をつくのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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