第449話 さっきの商談についてと皆に料理を作ろうか?
武雄達は無事にウスターソースのレシピを手に入れ、ついでに1樽分のソースをエルヴィス伯爵邸に送って貰えるように依頼して店を後にしていた。
店先で執事長と別れる際に「キタミザト殿、譲歩して頂きありがとうございます。」と執事長に言われて別れていた。
「~♪」
武雄は楽しそうに歩いている。
「キタミザト殿、良い買い物でしたか?」
マイヤーが聞いてくる。
「ええ!私が考えた最大条件が飲まれましたからね!」
「え?・・・かなり妥協していたように思いましたが・・・」
「全然ですよ。
私の中での最低条件はエルヴィス伯爵領にソースを卸して貰う事でした。
なのにレシピを売ってくれ、さらには魔王国に面している貴族領に・・・他領に売りに出しても良いという文言まで勝ち取れました。
ふふ、これで一儲けできますね!」
「え?もしかしてキタミザト殿は王都に卸す気はなかったのですか。」
「ええ、元々王都に卸す気はなかったですね。」
「何故でしょう?キタミザト殿も言っていましたがこの国最大の商圏なのですけど?」
「最大の商圏=がめつい商人が多いという事ですよ。
つまりは真似をされるか、強引に買占めを行う輩がいるという事です。
あの店はクリフ殿下によって保護されますのでそう言った事はないでしょうが、私には王家の後ろ盾はありません。
王都に出すと痛いしっぺ返しを食らう可能性があります。
なら、エルヴィス領を中心にゴドウィン伯爵領とウィリアム殿下領、テンプル伯爵領で売った方が確実です。
むしろ、他の3領で確実に実績を積んでいった方が、定着率という点では良いかもしれません。
何しろ3領の領主達はエルヴィス伯爵と浅からぬ仲ですからね。
無下にはしないでしょう。」
「キタミザト殿は商売人ですね。」
「ふふ。さて?どうでしょうかね。
他の貴族方も何かしら商売はしているでしょうが・・・知られていないだけかもしれませんよ?」
「確かに。」
マイヤー達王都守備隊3名がため息をつく。
「と、そうだ。マイヤーさん達の分の夕飯も私が作りますから一緒に食べますか?」
「良いのですか!?」
アーキンが食いついてくる。
「ええ。折角、美味しいソースが手に入ったのです。
それに前回の魚醤はマイヤーさんがダメでしたからね。
やっとマイヤーさんも食べられるソースが出て来たのです。
私の料理を堪能して貰いましょう♪」
武雄は楽しそうに言う。
「いやいや、キタミザト殿。今まで頂いているのでも十分に美味しいのですけど。」
「ふふふ、このソースはアレより上ですよ!
このソースのおかげで、かなりの数の料理が創作される事でしょう!
もしかしたら一家に一瓶買われるくらいに普及するかもしれないのです!」
「そ・・・そんなにですか!?」
バートが驚きながら聞いてくる。
「ええ!まさに食の革命となりますよ!
今まで味気なかった戦時食も相当向上されるかもしれませんね。」
「ほぁ・・・
早く販売してくれないですか!?」
アーキンが想像して期待を膨らませながら言ってくる。
「それについては、あの店にでも言ってくださいね。
私はエルヴィス領に帰るまでは作れませんからね。」
武雄は苦笑を返す。
「で、キタミザト殿。今日は何を作ってくれるのですか?」
「それはですね。
この後、精肉て」
「あ、武雄さん。」
鈴音が武雄に声をかけてくる。
鈴音以下工房の人達とエリカ達はのんびりと街中を歩いていたらしく。
宿に戻ろうとしていた武雄達と鉢合わせになっていた。
「おや?皆さん揃っていますね。」
「はい、皆で夕飯をとりに行こうとなりまして。
どんな物が食べられるのか見ていました。
武雄さんは?」
「私ですか?
私は今から宿に戻って夕飯作りですよ。
・・・鈴音、料理は出来ますか?」
「え゛・・・」
鈴音は顔を硬直させる。
「・・・そうですか、出来ないですか。
ちなみにご両親は?」
「共働きで・・・朝はパン、昼は学食、夜は買ってきた惣菜で・・・」
「なるほど。
料理をする事がなかったのですね。」
武雄は頷く。
それにしても「共働きだとあまり親が料理している様を見ていないのかぁ」と思う。
武雄は母が専業主婦だったので料理をしている姿は見ているし、武雄自身も母が居ない時は作ったり、一人暮らしをしている際は暇な時間を潰す為に簡単な料理はしていたので、割と身近に料理があった。
たが鈴音は「買えば揃えられる」と時間を得るために料理をしてこなかったのだろう。
「まぁ、各々の家庭でいろいろあるよね。」と簡単に考える事にする。
「鈴音、プリンを作りましたけど食べますか?」
「ぷりん・・・プリン!?本当ですか!?
あの!プリンですか!?」
鈴音は大いに驚き武雄に聞いてくる。
「ええ、はちみつプリンですけどね。
皆の分もありますよ。
それに・・・鈴音、これを舐めてください。」
と武雄はバスケットの中からソースを取り出し、鈴音の手の上に一滴垂らす。
「はぅあ!?
中濃!?これ中濃!?なんでこれが!」
舐めた鈴音が狼狽えながら聞いてくる。
「ふむ・・・鈴音にもわかりますね。
ちなみに鈴音が言っているのは少し粘り気がある物ですよ。
これはウスターソースです。」
「ウスター・・・」
「今日はこれでトンカツ・・・オークカツでも作ろうかと思っているのです。
食べたいですか?」
「ぜひ!」
「ふむ。じゃあ、全員で食材を買いに行って、宿で作りますか。」
「はい!
皆に教えてきます。」
鈴音は全速力で皆を呼びに行くのだった。
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