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第448話 ウスターソースのレシピを買い付けしよう。

武雄達はとある酒屋さんの前に来ていた。

「キタミザト殿、こちらの店になります。」

と執事長が武雄達に伝える。

爵位付きの呼び方はクリフ殿下邸内での呼び方と教えてくれた。

「はい、ありがとうございます。」

と、一行は店内に入る。

「あ、いらっしゃいませ。」

女性が武雄を見つけ声をかけてくる。

「失礼します。

 唐突で申し訳ありませんが、このソースはこちらで作られた物でしょうか?」

と、武雄がクリフの屋敷でわけて貰ったソースの小瓶をバスケットから取り出す。

「えーっと、少し舐めても?」

「はい。」

女性は少し武雄の前を離れスプーンを持って再びやって来るとソースを少し取り、舐める。

「うちのソースですね。」

「そうでしたか。

 このソースはいつから販売を?」

「1週間くらい前ですね。

 まだどこに売り込みをかけるか・・・迷っているんです。

 売れ残りしちゃっています。」

女性は「ははは。」と苦笑する。

「そうでしたか・・・どのような経緯で出来上がったのですか?」

「半年くらい前なのですけど・・・たまたま野菜を保存させようとしたら・・・結果ソースが出来ていまして。

 これは売れそうだと思って試行錯誤して商品化をしました。」

「なるほど。

 店主さんはいらっしゃいますか?

 少し商談をしたいのですが。」

「え!?このソースを買ってくれるのですか?」

女性が驚く。

「ふふ、とりあえず話をしましょう。」

「はい!父と旦那を呼んできます!」

と女性が奥に走っていく。


「キタミザト殿。」

執事長がこっそりと武雄に話しかける。

「はい。執事殿、何でしょう。」

「買占めはしないで頂きたいのですが・・・」

「わかりました、買占めはしません。」

「よろしくお願いします。」

執事は恭しく礼をするが、マイヤーはその横で「買い占めなきゃ良いのでしょう?とかキタミザト殿は考えているだろうなぁ」と考えるのだった。


女性に連れられた男性2名が小走りにやってくる。

「い・・・いらっしゃいませ!お客様、このソースを買いたいと伺いました!ありがとうございます!」

男性が挨拶をするなり頭を下げてくる。

「えーっと・・・とりあえず私は逃げませんので落ち着いてください。」

と武雄はにこやかに言う。

「はい。申し訳ありません。息を整えます。

 ・・・はい、もう平気です。」

「わかりました。

 私はエルヴィス伯爵配下で今度新たに貴族となるキタミザトと言います。」

「「「貴族様!?」」」

3人が驚く。

「ん?・・・言ってはいけなかったですかね?」

武雄が執事長に顔を向ける。

「いえ、キタミザト子爵様は既に手続き上はなっていると伝えられております。

 差し支えはないかと。」

「「「子爵様!?」」」

「らしいですよ。

 さて、本題ですが、このソースですが・・・」

武雄は自分で持ち込んだソースを眺める。

「売らせて頂きます!」

「ありがとうございます。

 ですが、買うだけなら店主さんを呼びませんよ。」

武雄はクスクス笑う。

「はぁ。」

店主が不思議そうに返事をする。

「私からの依頼はエルヴィス伯爵邸がある街に店を出し、製造・販売をして欲しいというものです。」

「え!?その・・・こう言ってはなんですが・・・

 まだ売れていないこのソースが売れると思っておいでですか?」

「はい。このソースは売り方さえ間違えなければ確実に売れます。

 ですので、他領に出店する気があるなら費用は私が持ちますからエルヴィス伯爵領に来ていただきたいですね。

 それにこのソース以外にもこのソースからの派生する別ソースも作って欲しいですし。」

「例えばどんな物をでしょうか?」

「例えば?・・・そうですね・・・

 肉、魚、野菜・・・その用途に合わせたソースを作ってみるとか。

 まぁそれなりに面白い事は考えていますよ。」

武雄は穏やかな口調で言ってみる。

「なるほど・・・

 キタミザト子爵様、折角お声をお掛けいただいたのですが、現状では他領への出店は考えておりません。」

店の主人は申し訳なさそうに頭を下げる。

「そうですか、仕方ありませんね。

 ・・・実は私は貴族を拝命しましたが、もう1つほど重大な通知がされています。

 まだ、公にはなっていないでしょうが・・・クリフ殿下の弟君であるウィリアム殿下が公領に異動が決定しています。」

「あ・・・はぁ・・・」

「ウィリアム殿下が王都を去ったならその後に王都に入城されるのは・・・クリフ殿下です。」

「え!?」

「ん?何を驚いているのでしょうか・・・クリフ殿下は第1皇子です。

 いつまでも地方に居る訳ではない・・・これは決められていたこと、そして住民は知っていた事です。

 違いますか?」

「・・・確かに。」

「明日か・・・この後か、クリフ殿下の使者がここに来るでしょう。

 そして私と同じ・・・いや、もっといい条件を提示して来るかもしれませんね。

 ですが、根本は同じです。このソースを増産して欲しいと言ってくると思います。

 これは当然です。」

「何故でしょうか。」

「私が教えたからです。

 このソース作りは街の産業になるのは確かな事です。

 アナタ達としてもクリフ殿下の後押しで事業が出来るのは嬉しい事だと思います。」

「はい。」

「ですが、クリフ殿下はいずれこの街から王都に異動が待っています。

 もちろんクリフ殿下はアナタ達を王都まで連れて行きたいと言うでしょう。

 ですが・・・果たしてそれはアナタ達にとって良い事なのか。

 本当ならソースを1樽分買って、お暇しようとは思っていたのですが・・・ここに来るまでの道すがら少し考えました。」

「は・・・はい。」

「先程、クリフ殿下の後押しがあると言いましたが、アナタ達はどこまで出荷する予定ですか?」

「どこまでとは?」

「簡単に言うとこの街はアズパール王国の西、エルヴィス伯爵領は東・・・そんなに遠くまで出荷してくれるのでしょうか?」

「それは・・・依頼があれば可能です。」

「本当に?

 最初に言いましたが、このソースは売り方さえ間違えなければ相当数売れる見込みがあります。

 ・・・まさか、出荷先がクリフ殿下の街とエルヴィス伯爵邸がある街だけだと思っていませんよね?

 必要な量はワイン用の樽で換算しても数百個の製造が必要と考えています。

 それに必要な材料はクリフ殿下が居なくなっても確保出来ますか?

 またはクリフ殿下と一緒に王都に異動したら買い付けが出来るのですか?

 そう言った問題点を上げた際に製造拠点を2つもしくは3つくらい消費者としては欲しいですね。」

「それは・・・そうですが・・・」

店主は悩みながら答える。

「・・・じゃ、代わりにこういうのはどうですか?

 このソースのレシピを私に売ってくれませんか?」

武雄は難しい顔をさせながら言う。

「え?」

「そうですね・・・あまり手持ちがないですが・・・金貨30枚でどうでしょう。

 さらに一番売れる見込みがある王都や王領、そしてこのカトランダ帝国に面している貴族領で私は販売をしない事を約束します。

 私がこのソースを販売するなら魔王国に面している3貴族とウィリアム殿下領で販売させてもらいましょうか。

 ニール殿下達やウィリプ連合国に面している貴族達は・・・出荷依頼があればという感じで。」

「確かにそれでしたら・・・私どもも問題なく商売ができそうですが・・・

 本当に王都に卸さないのですか?

 キタミザト子爵様の言いようでは一番売れるのでしょうが・・・」

「はい。王都は最大の商圏ですが、クリフ殿下にアナタ達が同行する場合、同じ商品が2つあっても双方の利益が半減するだけでしょう?

 私は別にアナタ達の商売自体を邪魔したいわけではありません。

 いち早くこのソースをエルヴィス伯爵領で普及させたいのです。

 そうすれば領民の食生活が向上出来る見込みがありますからね。

 それにこのソースがあればいろんな料理が出来そうではないですか?」

武雄は楽しそうに言う。

「そうでしょうか・・・スープの隠し味にと思って作ったのですが・・・」

「ふふ、さて・・・それだけではないですよ。

 まぁそれは各々考えましょう。

 さて、ご店主殿。どうされますか?」

「・・・わかりました。

 金貨30枚でこのレシピをお売りいたします。」

「はい、わかりました。

 では、私からは王都と王領、そしてカトランダ帝国に面している貴族領での販売をしない事を誓いましょう。

 ちょうど、こちらにクリフ殿下の執事殿がいらっしゃいますから私達の契約書の文面を書いて貰いましょう。

 第3者に書いて貰った方が良いでしょう。」

「はい、畏まりました。」

執事長が頷く。

「では、私はこれから冒険者組合の事務所に行ってお金を下ろしてきます。

 その間に文面を作成しておいてください。

 店主さんもそれで良いですね?」

「はい!」

「はい。では、一旦失礼しますね。

 ヴィクターとジーナは私と同行しなさい。

 マイヤーさん達はこちらで待っていてください。」

「わかりました。」

武雄達は一旦、店を後にするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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