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第446話 アンの料理デビュー。ウスターソース発見。

武雄が頭になり今日の夕飯を作っているのだが・・・

「タケオさん!腕が痛いです!」

アンは卵をかき混ぜながら泣き言を言う。

「まだ4回目でしょう、まだまだありますよ。

 料理人は皆、その苦労をしているのです!我慢しましょう!」

「ふぇぇぇぇ・・・

 皆!今まで好き嫌いしてごめんなさい!」

アンは涙目になりながらかき回している。

武雄がスパルタ教育を実施していた。

厨房の料理人達はハラハラしながらアンの料理を見ていた。


なんでこうなったかというと、最初は第1皇子一家4名分を作る予定だったが、武雄が「折角なので屋敷の者全員分を作って感謝を示されては?」とアンに提案し「それは良い考えです!」とアンが安易に了承したのが始まりだ。

アンも了承した手前、引き下がれなくなっている。

ちなみにヴィクターは執事長に付いて行き、仕事としての執事を見学中。

マイヤー達は客間に戻りクリフ達のお相手。

ジーナは「味見役が必要です!」と武雄の横で目をキラキラさせながら控えていたりする。

そんなジーナを「そうですね、必要ですね。」武雄は朗らかに見ていた。


「あの・・・キタミザト殿、我々がしても」

料理長が小声で聞いてくる。

「ダメです。

 アン殿下の依頼は、あくまでアン殿下にプリンの作り方を教える事です。

 私が作るでもアナタ達に教える事でもありません。

 もちろん火周りやお鍋等の危ない所は料理人の力が必要でしょうが、それ以外は全部アン殿下がしないと意味がありません。

 それよりも、干しシイタケとクリフ殿下用の干しキノコの戻しは出来たのですか?」

「はい、スープ用に別々に戻しています。

 もう少しでキタミザト殿が言われる出汁が出来ると思います。」

「わかりました。

 今日はタマゴスープの予定です。水溶き片栗粉を使って少しとろみを出します。

 最終的な味の調整は任せます。」

「はい、わかりました。

 それと食材を買いに行った者が新種のソースが販売されていたので買ってきたのですが・・・

 出来れば今日の肉用のソースに使いたいので、意見を頂けますか?」

と料理長がソースが乗った小皿を出す。

「わかりました。

 ・・・黒いですね・・・」

と、武雄が出されたソースを見て呟く。

「はい。オイル系やトマト系ではないようなのです。

 さ、舐めてください。」

と薦められ武雄は舐めてみる。

「・・・料理長や他の方の意見は?」

武雄は眉間に皺を寄せ腕を組ながら料理長に聞く。

「少し酸味は強いですが・・・良いのではないかと。

 ただ・・・賛否は半々といった形ですね。」

「そうですか・・・」

目の前のソースは武雄の感覚では「ウスターソース」だ。

確かに若干、武雄が食べていたウスターソースよりかは酸味が強く、何かが足らないとは思うが・・・十分な味を出している。

武雄は、ソースはトマトにニンジンやニンニク、リンゴ等々いろんな食材を入れて作る物、という大まかな事しか知らない。

頭の片隅でいつも「ソースがあればなぁ」と思ってはいた。

そして、魚醤を見つけ『これで料理が増やせる』と思い、米を見つけた事で数年後に味噌と醤油を作る事を夢見、今目の前にウスターソースがある。

武雄はこの旅で調味料に出会えたことを感謝し、小躍りしたい衝動を必死に抑える。

「・・・料理長、今日のメインは何ですか?」

「え・・・肉のムニエルの予定です。」

「・・・料理長、肉を少し分けてください。

 今から一品作ります。それを食べて判断してください。」

「は・・・はぁ、わかりました。」

と、武雄は目の前の肉を細切れにし、キャベツ、ニンジン、玉ねぎをカットしていく。

・・

厨房の一角に料理長以下主だった料理人が集まり武雄のウスターソースの野菜炒めを試食していた。

「うぅむ・・・」

料理長が唸る。

「料理長、これはシンプルですが・・・とても後味が良いかと。」

「もう一口食べてみたくなる美味しさです。」

「見た目の色に惑わされますが、あっさりしています。

 これは使えるかと。」

料理人達が武雄の料理を褒めていた。

その一方で。

「ご主人様ぁ、おいひぃですぅ♪」

ジーナがもう至福の顔をさせながら感想を言ってくる。

「タケオさん!こ・・・これは何ですか!」

アンも手を休めて武雄の野菜炒めを試食し驚愕の表情をさせながら聞いてくる。

「はは、ここの料理人の方が今日見つけたそうですよ?」

「なんですって!この街にこんな美味しいソースがあったのですか!!」

「ええ、そうみたいですね。

 料理長。」

「はい、キタミザト殿。」

料理長は皆での検討している輪から出てきて武雄に近づいてくる。

「このソースを売った店はわかりますか?

 私も宿への帰り道に寄らせてもらいたいのですが、簡単な地図を貰えますか?」

「はい・・・こちらになります。」

と料理長が武雄に屋敷からこの商店までの道筋を書いたメモを渡す。

「ありがとうございます。

 料理長、今すぐこのソースを作った人に会いに行くべきです。

 そして量産化をしてこの街の産業にしましょう!」

「はい!」

料理長が頷く。

「今すぐ執事殿に言って、これを殿下方に試食をして貰ってください。

 そして量産化をするかを決めて貰ってください。

 殿下方がしないなら私がします!」

「はい!すぐに!」

と料理長が部下の料理人を使い、執事を呼びに行かせるのだった。


------------------------

と、客間では第1皇子一家とマイヤー達が歓談していた。

「そうか、王都ではそういった事を気を付けないといけないのだな。」

「はい。今回は超が付く程の特例で陛下やウィリアム殿下はキタミザト殿を優遇しています。

 ですが、これは王都の武官、文官ともにキタミザト殿を認めているからです。」

「まぁ、タケオは武功や研究所の素案で武力も知力も示しているからな。

 皆が認めざるを得ない状況になっているのはわかるな。」

「ええ。ですので、クリフ殿下にはある程度の公平性が求められるとは思いますが・・・

 難しいでしょうね。」

「あぁ、だがそれが出来ないといけないとはわかっている。」

と、執事長がノックして客間に入ってくる。

「失礼します。

 クリフ殿下、厨房より緊急です。」

「!?アンに何かあったか!?」

「いえ、アン殿下はキタミザト子爵殿の指導を受けながら一生懸命プリン作りをされています。」

「そうか・・・上手くいくか・・・心配だ。

 どんなプリンが出てきても、私は美味しく食べる自信があるぞ!」

「クリフ、親馬鹿よ。」

「まったくね。」

クリフの発言にローナとセリーナがため息をつく。

「んんっ!で?厨房からの緊急とはなんだ?」

「はい。キタミザト子爵殿が新作のソースを使って野菜炒めを作ったので試食をして欲しいと。」

と武雄の野菜炒めを机に置き全員分の取り皿を配膳する。

「そうか・・・見た目が黒いが・・・

 タケオが作ったのなら期待が持てるな。」

と全員が取り終わる。

「では、食べてみよう。」

「「「はい。」」」

全員が一口食べると。

「これは!」

「美味しい!」

「新しい味ね!」

「「「!!」」」

全員が目を見開き驚愕の表情をしてその場に固まる。

「このソースはタケオが作ったのか!?」

「いえ・・・実はこの街で作られた物です。」

「なに!?こんなソースが私達の街から・・・凄いな!」

クリフが驚く。

「それでですね・・・キタミザト子爵殿がクリフ殿下に『すぐにこのソースを量産化するべき』との進言が。」

「そうだな・・・ちなみにタケオは他に何か言っていたか?」

「はい。『殿下方がされないなら私が押さえます』と。」

「ふむ。ローナ、セリーナ。」

「ええ、私は賛成よ。」

「私もタケオさんの意見を進めるべきだと思うわ。」

「明日の朝一にこの商店に行って話を聞いてくるよう文官に指示をだせ。

 融資をするなら金額の査定をして、王都の私の所まで報告を上げるように。」

「はい、畏まりました。」

「・・・ちなみに、タケオさんはこのソースを買う気かしらね?」

「わかりかねます・・・ただ、料理長から店の場所までのメモが渡されているようです。」

「・・・宿への帰り道で寄るだろうな。」

「そうね。

 タケオさんの行動力からすれば今日中に決着させるでしょうね。」

セリーナが呟く。

「・・・帰りにタケオに同行して、タケオが買い占めないように見ておいてくれ。」

「畏まりました。」

執事長は礼をする。

マイヤーは話を聞きながら「キタミザト殿がそんな回りくどい事をするかな?」と思うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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