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第443話 第1皇子夫妻の困惑。

「いた!?」

「いないわ!・・・どこに行ったのかしら・・・」

ローナとセリーナは屋敷のロビーで焦っていた。

「さっきまで一緒にお茶をしていたわよね・・・

 誰かに連れ去られたようには思えないんだけど・・・」

「ローナ殿下、セリーナ殿下、クリフ殿下がお戻りになりました。」

執事長が声をかける。

「そう、わかったわ・・・アンは居た?」

「いえ・・・再度全部屋や薪小屋等々敷地内を再確認していますが・・・」

「わかったわ。

 引き続き探してちょうだい。クリフはどこに?」

「ここだよ。」

玄関からクリフが入って来る。

「屋敷中が慌ただしいが・・・何があった?」

「アナタ、おかえりなさい。」

「クリフ、おかえりなさい。」

「あぁ、戻った。で?」

「アンが見当たらないのよ・・・」

セリーナが呟く。

「アンが?パットじゃあるまいし。」

「そうなのよ。

 あの子は人を見抜く力がずば抜けているし、パットより聡いから知らない人とかには近づかないはずなんだけど・・・どこに行ったのかしら?」

ローナの言葉に夫妻3名がため息をつく。

「失礼します。

 王都守備隊の第一近衛分隊長と名乗る者とキタミザト子爵の執事を名乗る者が参っております。」

執事長が3人に言ってくる。

「マイヤーとヴィクターだな。今は取り込み中だが・・・」

クリフが悩む。

「いえ、『アン殿下の件で』と言っておりますが。」

「「すぐに会うわ!」」

セリーナとローナが即答する。

「場所はここでよろしいですか?」

「ええ!」

「畏まりました、お通しします。」

と、玄関を開け2人を招き入れる。

「クリフ殿下、至急にて挨拶や礼は後程に。」

「わかった。で?」

「アン殿下はキタミザト殿とご一緒です。

 宿にてお茶を楽しまれております。

 後程、キタミザト殿と一緒にこちらに向かうとの事です。

 キタミザト殿がアン殿下より屋敷の者に内緒で抜け出したと聞き出しましたので、至急ご無事をお伝えしろと厳命されました。」

「「はぁ・・・よかったぁ・・・」」

ローナとセリーナは安堵のため息をつく。

「タケオと居るのだな?怪我はしていないか?」

クリフはホッとしながらも現状の確認をする。

「怪我もなく、マッタリとお茶をされていました。」

「そうか・・・無事で何よりだ。

 タケオが傍に控えてくれるなら一先ず安心だな。

 あ、立ち話もなんだな・・・執事長、すぐに客間にお茶を用意してくれ。

 マイヤー、ヴィクター、詳しい経緯を話してくれ。」

「はい、クリフ殿下。」

マイヤーが頷くのだった。


------------------------

武雄達は、工房組とエリカ組に皇子一家の家へ行く旨を伝え、夕飯は各自自由に取るように伝えていた。

そして第1皇子一家の屋敷を目指していたが、途中にあったいろんな店を見ていた。

今は干物屋に寄っている。

「タケオさん、これは食べられるのですか?」

武雄に抱っこされているアンが、棚の干物を見ながら聞いてくる。

そこには王都でミア達が聞いてきた物と同じ物が吊られていた。

「ふむ、紅魚ですね?」

「これが紅魚ですか。」

アンが感心したように言う。

「アン殿下は食べたことがないのですか?」

「いえ、ありますよ。

 月に3、4回は夕食に出ます!

 ですが、姿を見るのは初めてなんです。

 正直に言えば干物屋に来るのも初めてです!」

アンは若干興奮気味に言ってくる。

「なるほど。楽しいですか?」

「はい!今まで食べていた物の食卓に上がる前の形を初めて見ているので楽しいです!」

「そうですか♪良い事ですね。

 そのワクワク感は大事ですからね。」

武雄は嬉しそうに頷く。

「はい。あ、タケオさん、これはなんですか?」

アンは次々と干物を指さし、どう食べるのか聞くのだった。


------------------------

屋敷の客間にて、第1皇子夫妻はマイヤーとヴィクターの説明を難しい顔をさせながら聞いていた。

「失敗した・・・アンがそんな事を思っていたなんて・・・」

セリーナがマイヤー達の説明を聞いてガックリする。

「はぁ・・・まったくね。アンにも気を使わせてしまったようね。」

ローナがため息交じりに肯定する。

「・・・妃会議で決めはしたが・・すぐに履行しなくても良いのだぞ?」

クリフが心配そうに聞いてくる。

「いえ、ニールの所が決めてしまってうちがまだ、というのは王都内での外聞が悪いわよ・・・

 出来る限り早い段階で決めたいわ。

 それに世継ぎ候補は多い方が良いでしょう。

 それとこれは私達から言い出した事です。ローナも私も覚悟を決めています。

 ・・・そう言えばアナタ、タケオさんにアリスをこっちに呼んで貰うのはお願いした?」

「それはすぐに了承して貰っている・・・今頃、伝令が王都に着いているのではないか?」

「そうかぁ、アリスが来るか。

 出来ればこの屋敷に迎えたいけど・・・王都に行かないといけないしね。

 じゃあ、前に決めた予定通り明日出発で良いのね?」

「あぁ、それで良い。

 それにしても・・・パットの件といい、アンの件といい・・・タケオに迷惑をかけっ放しだな。」

クリフがため息をつく。

「そうね・・・どうやって謝罪しましょうかね?」

ローナがクリフに聞いてくる。

「はぁ・・・マイヤー、ヴィクター、

 タケオは『アンからの金銭は要りません』と言ったのだな?」

「「はい。」」

「・・・アンからは取らない・・・なら私達から?」

セリーナが考えながら言ってくる。

「そうなるだろうな。

 まぁ高額な費用は請求されないだろうが・・・多めに渡すしかないだろう。」

「そうね・・・アンが王国最強の片翼の護衛を受けて、さらには至高のプリンの作り方まで教えて貰うなら、相応な費用を出すしかないわよね・・・」

セリーナが頷く。

「それにしても、タケオさんがアンに出した条件は破格ね。

 あの子ならどれもこなせそうだけど。」

「あぁ、あの4条件で大事な事は、家族と仲良くする事と、国民から愛される事・・・

 どちらも数日で出来るものではない。一生をかけてやることだ。

 タケオはアンに、王家としての相応の覚悟を求めたのだろう。

 だが、タケオとの条件でなくても、最後の2つは王家なら必要な事ではあるがな。」

「そうね。

 だけど、敢えて条件とする事で、幼いアンに自覚を求めたのかもしれないわね。」

ローナが頷く。

「はぁ・・・どちらにしても、タケオは子供にちゃんと指導が出来る人間という事だ。

 人格者で良かったな・・・タケオにまた借りを作ってしまった・・・」

クリフが若干うな垂れながら呟く。

「そうね。パットの件だけでなく、アンでも借りを作っちゃったわよね。

 あ・・・アリスの事もあるから更にか・・・

 私達はタケオさんとアリスにどんどん頭が上がらなくなってない?」

ローナが指折り数えながら言う。

「いや・・・実はな、関での事なんだが・・・」

クリフは渋々ながら関でのアシュトンとのやり取りを妻達に言うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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