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第440話 ブルック。王都で皆に報告2。

「では、続きを頼む。」

「はい。

 陛下はカトランダ帝国とアズパール王国の関間のビーストマンの主を知っておりますでしょうか。」

「ふむ・・・我は知らぬが・・・ウィリアムはわかるか?」

「はい。クリフ兄上からの報告書に、山が不作だった数年前にラジコチカなる魔物が村に現れたとの報告書がきていましたね。」

「ほぉ。で?その魔物がどうしたのだ?

 タケオが戦闘でもしたのか?」

「いえ、アズパール王国への帰路で部下にされております。」

「「「「え!?」」」」

その場にいる王都守備隊3名以外が驚く。

「正確にはミア殿の部下として、関間の主を採用しています。」

「・・・なぜ?」

アズパール王が聞いてくる。

「縄張り争いに敗れ、行き場を失ったので部下にしてみたそうですが・・・

 何でも、エルヴィス邸がある街の周辺の魔物を統治して貰うとか言っていました。」

「んー・・・アリス、どういうことだ?」

アズパール王がアリスに聞く。

「いや・・・タケオ様は奇抜なので真意はわからないですが・・・

 街の周辺の統治でしょうから、この間の襲撃に対しての警戒網作りかと思います。」

「ふむ・・・だが、魔物を使っての周辺警戒は聞いたことがないな。

 ウィリアム、上手く行くと思うか?」

「どうでしょうか・・・ですが、タケオさんにはミア殿がいますからね。

 交渉で妥協が出来るのであれば・・・ですが、万が一の際にミア殿だけで言い含められるのか・・・少し心配ですね。」

「私達が出立する前に執事2名が躾をしていました。」

「そりゃ、獣人で伯爵家だったのならそこら辺の主格より上だろうな。

 まぁ、大人しくしているのであれば問題なかろう。」

アズパール王はため息をつく。

「さらに」

「まだあるのか・・・」

ブルックの言葉にアズパール王は半ばガックリとする。

「冒険者組合の事務所に寄った際に女性2名と知り合いました。」

ブルックの言葉にアリスがピクッとする。

「冒険者か?」

「はい・・・キタミザト殿はやんわりと同行を認めないと伝えたそうですが・・・着いてき・・・まし・・・た。」

ブルックの説明を聞いている最中にアリスは魔眼を発動していた。

ブルックは魔眼に当てられて軽く震えている。

守備隊総長やフォレットも体を強ばらせる。

だが、流石は王都守備隊員、取り乱したりはしない。

軽くビビっただけで済ませる。

アリスの表情は明かに眉間に皺を寄せて、不快感を出している。

「アリス、やめなさい。

 この者がタケオさんに手を出した訳ではないでしょう?」

レイラがアリスを止める。

「申し訳ありません。」

アリスは魔眼での威圧を止め、頭を下げて謝罪する。

「いえ、アリス殿が心配されるのは当然かと・・・」

ブルックは威圧を止めてもらい ホッとしながら答える。

「・・・アリスは後でレイラから説教を受けろ。」

「わかりました、お義父さま。」

「・・・はい。」

レイラとアリスがアズパール王の裁定に頷く。

「で、その事を言ったのは何でだ?」

アズパール王がブルックに聞く。

「冒険者組合の事務所で、第一近衛分隊長とキタミザト殿と女性冒険者2名で雑談をされました。」

「その雑談をした際には、お前達は居なかったのだな?」

「はい。奴隷を買った直後だったのでキタミザト殿と第一近衛分隊長は先に冒険者組合の事務所に行き、湯浴みや会議室の予約をしていて、我々は奴隷の装備や衣服を買いに行っていました。」

「なるほどな。

 で、タケオとマイヤーは雑談からその冒険者をどう見たのだ?」

「カトランダ帝国の第3皇女ではないかと。」

「・・・どうしてそう結論付けたか聞いたか?」

アズパール王が目を細めながら聞く。

「はい。

 カトランダ帝国は貴族制度を取っていないのに、従者から貴族ではなくなったと明言されている事。

 高位の軍人としては若すぎる年齢の女性を貴族ではなくなったと言われる事への違和感。

 父親に政策には関わらないと宣言をしている事。

 名前をすでに変更している事。

 商屋や工房の人間は意外と簡単に移住は出来るのに、わざわざ国外退去の越境許可書が発行されている事。」

「国外退去の越境許可書?」

レイラが不思議そうな顔をする。

「はい。この女性冒険者が持っている越境許可書は、カトランダ帝国からの出国は認めていますが入国が出来ないとの事です。」

「なるほど、だから国外退去なのか。

 ちなみにそれだけか?」

「はい。以上の事によりキタミザト殿と第一近衛分隊長は、皇族以外はあり得ないのでは?と結論付けております。」

「ふむ・・・ウィリアム、見てみろ。」

アズパール王は懐から先ほどの書簡を取り出しウィリアムに渡す。

「はい。

 ・・・ん?・・・んー・・・これは判断が難しいですね。」

ウィリアムは書簡を見て悩む。

「お義父さま、何て書かれていたのですか?」

アルマが聞く。

「・・・カトランダ帝国第3皇女エリカ・クレト・カトランダが亡くなった。

 そして第4皇子チコ・クレト・カトランダが正式に跡継ぎとなったとの通告だ。

 ・・・その女性冒険者は何という名だった?」

「エ・・・エリカ・キロスと。」

ブルックが驚きながらも言ってくる。

「・・・エリカと言う名とキロス姓か・・・なるほど。

 その女性冒険者はほぼ第3皇女で間違いないだろう。」

アズパール王が頷く。

「キロスという姓が確定的なのですか?

 むしろエリカという名の方が確定的なのではないですか?」

レイラが聞いてくる。

「実はな、キロスというのは先代のカトランダ帝国皇帝の正室の名前だ。

 エリカが第3皇女だったとして祖母に当たる人物だ。」

「父上、良く知っておりましたね。」

「あぁ、皇帝の正室が平民出身だという話は当時は異例だったからな。

 我もまだ小さかったが王城内で話題になったから覚えているだけだな。

 それにしても自分の娘に国外退去の越境許可書を持たせたか・・・血筋は残す気か?

 ・・・カトランダ帝国は相当の覚悟で何かを狙っているな。」

「・・・攻め込んでくるのでしょうか?」

「さてな・・・タケオは何か言っていたか?」

「そうですね・・・

 女性冒険者関連ではありませんが、カトランダ帝国とウィリプ連合国の間で全品目の輸出入が可能になっています。」

「全品目?・・・あぁ、だから奴隷制度を採用していないはずのカトランダ帝国で奴隷を買えたのか。」

「はい。キタミザト殿が奴隷商からその辺の事を聞き出しています。」

「ふむ、タケオはいろいろ情報を取って来てくれるな。」

アズパール王が嬉しそうに頷く。

「それで我々王都守備隊の意見としては、休戦協定と経済連携を経た今、軍事同盟をしてカトランダ帝国とウィリプ連合国からの同時侵攻を画策しているのではと。

 対してキタミザト殿は、カトランダ帝国が我らを当て馬にしてのウィリプ連合国への侵攻を考えているのではないかと。」

「・・・ふむ、どちらもあり得るな。

 で、タケオは何と結論付けていた?」

「陛下がそもそも侵攻する気がないから、負けない国を作る事に尽力するだけと。」

「その意見が的を射ているな。

 相手にどんな思惑があろうとも我々は絶対に負けてはならない。

 それに他国に侵攻しても面倒ばかりだ。これ以上裁可する物が増えたら我の睡眠時間がなくなってしまう。

 なので、絶対にこちらから侵攻作戦はしない。」

アズパール王が面倒臭そうに言い放つ。

「「「はっ!」」」

王都守備隊総長とブルックとフォレットが返事をする。

「これで終わりか?」

「いえ、まだあります。」

アズパール王が聞くとブルックが真顔で答えるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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